第4話


「剣術、スキル…?」


俺は急いで半透明のウィンドウから、自分のステータスを確認する。


名前:西野壮平

種族:ヒューマン

職業:なし


レベル:1


攻撃:30

体力:45

防御:70

敏捷:15


スキル:<鑑定><剣術>


スキルの欄に新しく<剣術>が追加されていた。


普通に考えれば、俺が『剣を振る』という動作をしたから獲得した、ということになる。


まるでゲームのような仕組みだ。


「これで剣の腕が上達してたら本当にゲームだぞ」


俺はそんなことを呟きながら、試しにミスリルの剣を振ってみる。


ヒュババババ!!!


「は…?」


自分でも驚くほどの太刀筋だった。


先ほどまで重く感じていたミスリルの剣の重量が、今ではむしろ軽く感じられ、またいつの間にか剣をどう扱ったらいいのか、体感的にわかるようになっていた。


「嘘だろ…?」


本当にゲームみたいなことが起こってしまった。


俺は今、一瞬にして達人並みの剣の技を取得してしまったのだ。



「もしかして、俺、まじで異世界に来ちゃった?」


モンスター。


ステータス画面。


武器。


そしてスキル。


ここへきて俺は、本当に自分が剣と魔法のファンタジーな異世界へ迷い込んでしまったのではと思い始めていた。


「これなら…あいつを倒せるかもしれない…」


俺はいまだに小屋の外を彷徨いているブラック・ウルフに視線を移す。


ブラック・ウルフは、何かしらの結界の効果なのか、一定距離を保ったまま決して小屋に近づこうとはしない。


しかし、中に俺がいることは理解しているようで、あきらめるような様子もない。


こうなってくると、俺はここから逃げて元の洞窟へと帰るにはあのブラック・ウルフを倒さざるを得なくなってくる。


一応ブラック・ウルフが去るまで待つという手もあるが、いつになるかわからない。


それに時間をかけると、他のモンスターが小屋に近づいてくる可能性もあった。


そして何より、これは男としての性だろうか、俺の中には今獲得した<剣術>スキルで、ブラック・ウルフと戦ってみたいという欲求もあった。


「よし、やるか…」


しばし逡巡した後、俺はブラック・ウルフと戦う決心をする。


ミスリルの剣を手に、ブラック・ウルフへと向かっていく。


ブラック・ウルフ

種族:モンスター


レベル;30


攻撃:700

体力:650

防御:400

敏捷:1200



『ガルルルル…』


ブラック・ウルフは、俺が正面から向かってくるのを認めると、牙を剥き出しにして唸り声をあげる。


俺は剣を握る手にグッと力を込める。


ステータスは向こうが圧倒的に上だ。


しかし、今の俺には<剣術>スキルと星5レアリティのミスリルの剣がある。


ゲーム脳と言われるかもしれないが、この武器とスキルがあれば、俺は格上に対しても勝てるのではないかと踏んでいた。


「行くぞ…俺なら出来る…絶対にやれる…」


そんな風に自分を鼓舞した俺は、一気にブラック・ウルフに向かって剣で斬りかかった。


斬ッ!


『キャイン!?』


「よし、当たった!!」


横にないだミスリルの剣の先が、ブラック・ウルフの前足を捕らえた。


ブラック・ウルフは悲鳴をあげて後退する。


『ガルルルル…ガルルルルルルル…』


唸り声をあげて威嚇してくるが、しかし前足を負傷したことで、明らかに動きが鈍っていた。


俺は勝機と見て一気に畳みかける。



「うおおおおお!!!」


ブラック・ウルフに肉薄して、全力の剣戟を叩きつける。


『ギャイン!?』


前足を負傷しているために回避行動のままならなかったブラック・ウルフは、俺の攻撃をまともに食らうハメになり、全身を切り刻まれて、血に倒れ伏した。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


俺は一気に荒くなった息を、深呼吸をして整える。


倒れたブラック・ウルフはしばらくビクビクと痙攣していたが、やがて動かなくなった。


「死んだ…のか?」


俺は生死を確認するために、恐る恐るブラック・ウルフに近づいていく。


「うおっ!?」


そして、思わず飛びのいた。


唐突に、動かなくなったブラック・ウルフの体が、光の粒子となって霧散したからだ。


地面には、紫色の石が残されている。


ドロップアイテム


・ブラック・ウルフの魔石×1


純度:30%


「ドロップアイテム…まじでゲームみたいだな」


俺は紫色の石を拾いあげて、繁々と眺める。



パンパカパーン!!


レベルが上がりました!!


新たに【換金】システムが解放されました!!


スキル<亜空間>が解放されました!!


称号【狩人】を獲得しました!!



「いや、情報量多すぎだろ!!!」



怒涛のように頭の中に流れてきた情報に、俺は思わずそう突っ込んでいた。




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