終章 ご愁傷様

タカ子はぼんやりとした意識の中、目覚めた。


しかし、自分が今、どういう状態にいるのか判別がつかなかった。

ただ、コポコポと気泡がタカ子の周りから浮いていた。

手を挙げようと思って、それがかなわないことを知る。

挙げるべき腕がないのだ。もっといえば足もない。

ドロッとした気分なのだ。


「気分だけじゃないわよ?タカ子ちゃん」


ぼたんの声が響き渡る。

「お疲れ様。無事に惑星にテレポート出来たわ。

 この惑星では人間は溶解されて、チョコレートになるのよ」


え?そんなの聞いてない……。


「ごめんな、タカ子。俺ら異星人のせいで」


プリンス・パティシエといったか。一段屋タカシの声がいくらか、申し訳なさそうに聞こえるのは気のせいだろうか。


「気づいてなかった?私がチョコレートを作る前から、クラスメイトが徐々に減っていたのに」


流行りの風邪のせいじゃなかったの?

そう言っていたのはぼたんのはず。


「そんなこと信じていたなんて。本当にタカ子ちゃんは私しか友達いなかったんだね」


熱い。ドロドロに溶かされいく。身体も意識も。


「友達になってくれてありがとうね。ぼた餅って最初に馬鹿にしてくれたのもタカ子ちゃんだもんね」


ボコッと体の奥から空気がわくような感覚がした。


「せいぜい、この星の国民の養分になってね」


熱い。熱い。こんなはずでは。かき混ぜられて、意識が混濁していく。


「美味しく頂くわね、ありがとうタカ子ちゃん」


ぼたんの声が頭中に響いてタカ子は叫び声を上げた。

しかし、自分の叫び声はもはや気泡にしかなり得なかった。


チョコレートの液体状になったタカ子は異星のほまれ高き復活の象徴のお菓子として生まれ変わった。

そして無事、彼女はその星のプリンセスとプリンスの結婚式で美味しく平らげられたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とろっとろチョコレートうぉーず kirinboshi @kirinboshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る