幼馴染にスマホを隠された俺だが、どう考えても隠し場所がやつのパンツの中な件。さっそくバイブ機能を使って遊んでみる。
真木ハヌイ
スマホのバイブ機能の間違った使い方
男なら誰だってスマホでエッチなサイトを見たことがあるだろう。健康な男子高校生である俺だってもちろんそうだ。スマホというのは、むしろそのためにあるといっても半分くらいは過言ではない。
でも、俺の幼馴染の女、カナエはそれをまったく理解していないようで……、
「ユキトってば、またスマホでこんなサイト見て! ダメじゃない!」
と、叫ぶや否や、俺の手からスマホを取り上げるのだった。
俺たちは今、俺の自宅の自室でこたつを囲んで一緒に座っていた。こたつの上には教科書や参考書が広げられている。そう、俺たちは今、一緒に勉強しているところだった。
ただ、優等生のカナエと違って勉強嫌いの俺は、こんな状況で集中力が続くわけがなかった。カナエに見つからないようにこたつの陰でスマホを操作し、エロサイトを閲覧していたわけだった。
まあ、実際はこうして見つかってしまったわけだが。
「いいじゃねえか、ちょっとぐらい。息抜きだよ」
「ダメ! テストが近いのよ! 今はちゃんと勉強しなきゃダメ! ダメなの!」
カナエはほっぺを膨らませて、むっとした顔で俺をにらみつける。
カナエは、黒いサラサラの長い髪をした、お嬢様タイプの美少女だ。性格も、生真面目で意地っ張りで融通が利かないところがある。今みたいに。
「いい、勉強が終わるまで、スマホはここに置いておくからね。いじっちゃダメよ」
カナエはこたつの上の目立つところにスマホを置いた。くそう、これじゃ俺は真面目に勉強する以外、やることがないじゃないか……。
と、そのとき、
「ユキト、耳かきどこあるか知らない?」
と言いながら兄貴が俺たちの部屋にやってきた。
「ああ、耳かきならキッチンの食器棚の引き出しだよ」
俺は兄貴に振り返り、答えた。
「え、なんでそんなところに」
「知るかよ! かあちゃんがなぜかいっつもそこに入れてんだよ!」
「ああ、なんか謎習慣になってるのね。なーるー」
兄貴はすぐに部屋を出て行った。それはほんの数十秒のやり取りだった。
だが、その直後、俺たちのいるこたつの上から俺のスマホが消えていた!
「あ、あれ? 俺のスマホは?」
ただちにそのへんを探すが、スマホはどこにもない。こたつの布団をめくったり、机やベッドのところも探してみるが見つからない。
「カナエ、お前、俺のスマホ知らない?」
「さあ? 私は何も知らないわよ?」
とは答えるものの、その声音は実にわざとらしかった。
しかも、
「きっと神様が真面目に勉強しないユキトのためを思って、あえてスマホを隠してあげたんじゃないかしら?」
などと言う始末。どうやら、こいつが隠したらしい。
「自分のこと、神様とか言ってんじゃねえよ。早く返せよ、俺のスマホ」
「さあ? 私は何も知らないけど? でもきっと、テストが終わったら見つかると思うの、スマホ」
「テスト期間中は返さないつもりか」
「そんなことより、今は勉強しましょ」
と、いかにも白々しく言うカナエだった。
くそう、俺のスマホを隠しておきながらこの余裕の態度。許せねえ! なんとしても見つけてやる!
「どうせスカートのポケットにでも入れてるんだろ」
「私のポケット? ざーんねん、何もないわよ?」
カナエは立ち上がり、これ見よがしにスカートの両方のポケットを裏返しにして俺に見せた。確かに何も入っていないようだった。上に着ているのはセーターで、ポケットはついていない。セーターの下に隠している感じでもなさそうだ。
じゃあ、残るはあそこか……。俺はそこでふと、思いついた。
「わかった。俺も真面目に勉強するよ。ただ、ちょっとのど乾いたから飲みもの取ってくるわ」
そう言うと兄貴の部屋にダッシュし、耳かきしていた兄貴からスマホを借りて、またダッシュで俺の部屋に戻った。
「カナエ、これがなんだかわかるか?」
「……あ」
俺が持ってきた兄貴のスマホを見たとたん、カナエはしまったという顔をした。さすが優等生、俺の思惑を一瞬で読み取ったようだ。
まあ、すでに時遅しなんだがな、フフ……。
「このスマホから俺のスマホに電話すれば、俺のスマホの場所すぐわかるよな?」
「い、今は勉強に集中しましょ」
「いやー、神様が俺のために預かってくれるっていうなら、お礼ぐらい言っておかないと」
ぽちっとな。そのまま兄貴のスマホから俺の番号に電話した。
そして、当然すぐ近くから、マナーモードにしていた俺のスマホの、ヴィィィンという振動音が聞こえてきた。
「きゃっ」
と、カナエが悲鳴を上げ、体をびくんと震わせると同時に。
そう、振動音はカナエのスカートの下から聞こえてきたのだ! やはりそこに……パンツの中にあったか、俺のスマホ!
「あ、なーんか、神様ってすぐ近くにいるっぽい? どこかなー」
「そ、そんなことより、今は勉強――」
「うーん、一回だけのコールじゃ、よくわからないなあ。もういっかい、電話してみよ」
「ちょ、ダメ……ああっ」
と、ヴィィィンという音とともに、悶え始めるカナエだった。ふふ、よりによってそんなところにスマホを隠すからだ。バカめ。
「お前さ、人のスマホよりによってパンツの中に隠すとか、人としてどうなの? 衛生的にアウトでしょ?」
「か、隠してないもん! 私、ユキトのスマホなんか知らないもん!」
ぷるぷる。顔を真っ赤にしながらも、なおも否定するカナエだった。
「いや、明らかにお前、そこに隠してるじゃねえか。そっから音するし。ほれ」
と、またスマホを振動させる俺。
「ち、ちが……、これはユキトのスマホの音じゃないもん……あ、やめ……ああっ!」
何度も股間のスマホを振動させているというのに、カナエのやつ、自分の負けを認めやがらねえ。なんという意地っ張りだろうか。
「俺のスマホじゃないっていうなら、お前のその股間から音出してるやつはなんなんだよ?」
「こ、これはその……あ、あくまで健康器具みたいなものだから!」
「健康器具? 電マかよ?」
「あ、そうそう! 電子マネーよ! 最近はやってるもんね!」
いや、違うそうじゃない。そっちの電マじゃない。こいつ、完全にパニックになって、言ってることおかしくなってきてるな。こりゃ、いじりがいがありそうだ、ウフフ。
「じゃあ、その電子マネー?を股間で振動させることで、なんで健康になるんだよ? 無学な俺に教えてくれよ。ほれほれ」
ヴィィィィン! またスマホを振動させながらカナエに尋ねる。
「そ、それは……振動させることで、熱が発生するから……や、だめぇ……」
カナエは身もだえしながら、必死に俺に答える。
「熱が発生したらどうなるんだよ?」
スマホ振動おかわりしながらさらに尋ねる。
「か、下半身を温めるのは、健康にいいから……よもぎ蒸しってあるでしょ……ああんっ!」
ビクンビクンッ! カナエのリアクションが激しくなってきた。
「よもぎ蒸しって、そんなのあるのか?」
ふと気になって兄貴のスマホで調べたら、実際にあるようだ。テルテル坊主みたいな恰好をした女の画像がでてきた。こんなケッタイな美容法を知っているとは、さすがカナエ様、物知りだなあ。感心したので、さらにスマホを振動させた。
「ああ、そういや、俺のスマホって完全防水じゃなかったような。カナエ、その状態であんまり分泌するなよな?」
「ぶ、分泌って、意味が分からな……や、それ以上は……ああっ!」
「そうか、濡れにくいほうならいいんだ」
リアルの女はエロ漫画みたいにドバドバ出ないらしいからな、あの汁。
「まあ、神様がどこにいるのかまだよくわからんし、このまま何度もコールしながら勉強を続けてみようか」
「え、このまま?」
「俺、数学のここの問題わかんねえんだよ」
「そこは、まずタンジェントの値を……ああんっ!」
と、すかさず俺が振動させたスマホに声を上げるカナエ。
「タンジェントの値をああんっ!するってどういうことだよ、カナエ? 俺にちゃんと説明してくれよ? まさか、タンジェントのやつ、サインという決められた相手がいながら、コサインと浮気してるのかよ、アアン?」
ヴィィィィン! もうなんか、ヤケクソのようにスマホ振動させまくる俺。
「や、だめ……ユキト……そ、そんなにしないでぇ……」
ぷるぷると体を震わせながら、カナエは完全に涙目だ。フフ、俺の完全勝利だ。
「これ以上責められたくなかったら、素直に俺のスマホを返すんだな」
「…………わ、わかったわよ」
カナエはしぶしぶという感じでうなずき、スカートの中に手を入れた。
そして、そこから取り出されたのはもちろん俺のスマホ……だったが、さっきと違って、透明なポリ袋でぐるぐる巻きにされていた。
「お前、あの短時間でいつの間に――」
「わ、私だって、ちゃんと人のスマホを汚さないように考えてたんだからね!」
カナエはそう言うと、すぐにポリ袋からスマホを出し、俺に返した。そして、ものすごい速さでポリ袋を近くのゴミ箱に捨てた。
「……なあ、あの袋のにおい、かいでもいい?」
「ダメ! 絶対にダメ! ダメなの!」
カナエは声を張り上げ、ゴミ箱のほうへ行こうとする俺を止めた。
幼馴染にスマホを隠された俺だが、どう考えても隠し場所がやつのパンツの中な件。さっそくバイブ機能を使って遊んでみる。 真木ハヌイ @magihanui2020
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