村でたった一人、誰にも似ていない純白の髪と灰色の瞳を持つ少年。「無色」と呼ばれ、誰からも存在を認められない彼は、伝承に聞く、人を焼き尽くすという「渡火」を求めて夕暮れの森にでかけ、そこで不思議な生き物に出会います。
見つけたその生き物に名をつけるあたりでは、この作者さんらしいなあと思わず笑ってしまったりしていたのですが、あにはからんや、その先に待っていた結末はあまりにも美しく、そして——。
この物語の舞台であるエシェン、その同じ世界で勇者と愉快で優しい仲間たちが繰り広げる名作『シダル 信念の勇者と親愛なる偏奇な仲間達』とはまた違う、短い中に淡々と穏やかな筆致で、背筋が凍るほど恐ろしくも美しい情景が鮮やかに浮かび上がる物語でした。