第19話 世界が変わっちゃうの?
ストロベリーショップも無事にオープンして、この新たなショッピングセンターでも最も人気のある店として連日行列が出来るほどの人気店舗になっている。
このショッピングセンターの本部からも、「全国の店舗への出店をご検討いただけませんか?」と打診を貰ってるけど、その辺りは面倒だから、返事は引き延ばしてる。
勿論それだけではなく、太田警部から全国の霊障案件に関して紹介されていて、時々は捜査協力もしている。
悪霊が人に憑りつく案件の時は、私達以外が手を出すと危険極まりないからね……
なんだか最近、太田警部の身なりが随分良くなってきているのは、気のせいかな?
しかし、私たちの活動が軌道に乗り、一部政財界では公でないにしても霊障に関しては「アストラーゼグループ」に対処して貰える。
という認識が出来上がって来ると、それに対して面白くないと思う勢力は存在する訳で、本物かどうか私も確認もしていないけど、古くからこの国で除霊師を名乗り活動している勢力が、周りをうろついていると、原田先生から連絡があった。
表向きのアストラーゼグループの窓口は原田先生の事務所で、美鈴さんが担当しているから、静岡にはまだそういった連中が来たわけでは無いけどね。
まぁ来たとしても、こっちには綾瀬さんも居るしそう心配もないだろう。
私は日々イチゴの品種改良と、綾瀬さんから提案を受ける魔導具や魔法薬の開発を行っている。
勿論アストラーゼ様へのお祈りは忘れないよ?
そんなある日の事だった。
『さやかちゃん。ちょっと綾瀬さんと一緒に東京に来てくれないかな?』
その一本の電話で、綾瀬さんと共に原田先生の事務所を訪れた。
事務所に到着すると、既に杉下先生と太田警部が、ソファーに座ってコーヒーを飲んでいた。
「何があったんですか?」
「品川にある、昔から心霊スポットとして有名な刑場の跡地があるんだがね」
そう話し始めたのは太田警部だった。
「そこは、私も聞いた事がありますけどお寺の敷地内ですよね? 私は他の宗教と揉めたいとか思いませんし、その案件はちょっと……」
「うむ、そう言うとは思ってたのだが、現在の仏教系の宗教組織では、除霊を本気で行おうとする所は稀で、他の誰かが除霊を出来るならご自由に? 的な考え方の所も少なくないんだ」
「そうなんですか? そこで何か起こったんですか?」
「その場所は、まぁそれは、視える者が行けば、真剣にヤバいとすぐわかる様な場所で、0課の課員の採用の時もそこに連れて行って、どの程度感じられるかで採用を決める場所なんだがな。最近の君たちの活動でヤバいと思っている京都に本拠を置く除霊を生業とした一族が居るんだ。そこがその土地を一族の威信をかけて除霊をすると言い出して、その後見人と言うか確認係として0課が出張らないといけないんだよ」
「その一族って本当に除霊は出来るんですか?」
「まぁ全くできないわけでは無い。低級の悪霊程度までなら実際に消滅させてると0課でも確認が取れている。だが今は、実際に害を与えるような悪霊は君たちの所に話を持っていくだろう? 政財界でもそれが当然の認識になっているからな」
「そうなると、その一族は存続の危機がある訳だ。それで知る人ぞ知る品川の霊障地を除霊して、政財界にアピールしようと考えてる様だ」
「出来るなら、別にそれでいいんじゃないですか?」
「あの場所に巣くうのは、何10万と言う、刑に処された者たちだ。本物の極悪人も居れば、無実の罪で処刑された者も沢山いて、それこそ上級の悪霊も普通に存在する。もし除霊に失敗すれば、品川辺りにその悪霊が大挙して出回る事になるかも知れない」
「止めれないのですか?」
「法律的には悪霊なんて存在しないし、ただの供養を行う行為を禁止する権限も無いからな。警察には」
「私達に何を求めてるんですか? 太田さんは」
「まさかの時のバックアップを頼みたい。少なくとも0課の職員に被害が出ない様に守って欲しくてな」
「それって…… 予算とか出るんですか?」
「いや……」
「ですよね」
「終わったら築地で美味しい寿司を、腹いっぱい私の驕りでご馳走しよう」
「まぁ見てるだけならいいですけど、何十万と言う数を全部対処するとか普通に無理ですし、その後の対処は別途で、それぞれ有償ですよ? もしその除霊一族が失敗した時の、処罰とかあるんですか?」
「表向きの刑罰は問えないが、政財界から相手にはされなくなる程度だろうな」
「そうなんですね…… いつなんですか? その除霊は」
「明日の夜二時の丑三つ時に始まる」
「そんなの…… お肌に悪いじゃないですか?」
「まぁ我慢してくれ」
◇◆◇◆
「そろそろですね」
現在時刻は午前1時55分。
問題の場所には、大きな祭壇が用意されていた。
「太田警部。あのスーツ姿の人達は誰なんですか?」
「あれは、不動産会社と建設大手の連中だな。この場所は墓地にしておくには惜しい場所だから、もし除霊が成功すれば、お寺が移転してこの場所は再開発で大きな複合ビルが建つ予定になっている」
「それじゃぁあの人たちが除霊師一族を焚きつけたんですか?」
「それもあるだろう。君の所が他の宗教絡みの案件は不介入だと断ってるから」
「そうだったんですね……」
「時間だ」
除霊の儀式が始められ、私が見ても効果があるんだかどうか良く解らない、
辺りの気配が変わったのは、儀式が始まって15分程が経った頃だった。
私達の前で大量の悪霊が渦巻く様に合流している姿を目撃した。
「危ないです。すぐに0課の職員を避難させて下さい」
「何だと。退避! 総員退避だぁあ」
太田警部の叫び声が響く中、事態を予想し逃げやすいポジションに居た0課の職員は、なんとかその場所を離れて行った。
「一体どういう状況だ」
核になる悪霊が、その周辺に溢れかえる怨体をどんどん吸収していき、身長20mを超えるほどの巨大な悪霊の集合体が姿を現し、その場に居た除霊師や、不動産屋達を薙ぎ払った。
霊魂の塊なので、飛ばされたりしたわけでは無いが、触れられた者は一瞬で絶命をしたことが解る。
その直後、その場所に…… 巨大な門が出現した。
その巨大な門を悪霊が開けようとして、力一杯に引いていた。
「門が…… 開きます」
門が開いた瞬間に、悪霊の集合体を門の内側から飛び出して来た巨大な光の槍が貫いて消滅させた。
「あれは…… 神槍ゲイボルグ」
「あの悪霊を一撃だと……」
「あの槍は私の居た世界で勇者と呼ばれた者が使用していた、槍です」
「勇者と言う事は人類の味方なのか?」
「勇者アダムス…… またの名を【魔王】。私を殺したエンシェントドラゴンの飼い主です」
「なんだって……」
赤錆びて見える門からは、何者かが出てくる様子が見受けられる。
「かなりヤバい状況ですね。今の現状ではこの門をどうこうすると言うのは、私では難しいです。撤退をするしかありません」
「どうすればいいんだ……」
「原田先生車を回してください。大至急この場から離脱します。太田警部は至急で自衛隊や、警察を集めてこの門から出てくるものを、食い止めさせてください。私達は一度静岡へ戻り対応策を考えます」
「待ってくれ遠藤君。銃弾などは通用するのか?」
「魔王や高位のモンスターでなければ、通用すると思います。ただ、モンスターは人を食べます。魂を取り込むかのように…… 近隣住民の避難も急がせて下さい」
「解った。至急手配を掛けよう」
こうして、この世界は異世界との扉を開き、新たな世界が始まった。
【序章】完
聖女な私が現代社会で頑張ってみた TB @blackcattb
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。聖女な私が現代社会で頑張ってみたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます