第2話 みーつけた

〝書いてあるバスターミナルで11時に待っててね″

というメモのとおりに10分前に史は着いた。

待ち合わせのターミナルは今年一新されほとんどのバス、タクシーはここでお客を乗せて行くようになった。

またターミナルの中にもお店が複数作られ、 それを目当てに訪れるお客も少なくない。



賑やかな中インフォメーション付近の椅子にちょんと座る。

あいつ(自称弟)はいったい何処から来るんだ?

史は腕を組み考える。


確かにバスターミナルで待ち合わせだが、肝心のどのバスで来るのかがわからなかった。

そして、考えてるうちに1つの考えにたどりつく

「(でも、待ち合わせが11時って事はその前後のバス時刻表を見ればいいのか!そうか、そうだよその手があったじゃないか!そうと決まれば)」

勢いよく立ち上がると史はインフォメーションで場所を聞き移動する。



時刻は11時2分前。

時刻表の前につき確認すると思わず「へ?」と間抜けな声が出てしまった。

11時代のバスが多かった。

「まじか・・・」

ため息とともに髪をかきあげる。


朝の迷惑な着払いの荷物といい、バスターミナルの事といい、嫌がらせにしか思えなかった

「(本当にこいつは)」

鞄に入れた封筒から写真を取り出す。

「兄と会いたがっているのか?」

「え、当り前じゃない?」

「そうなのかねー・・・・・って、んのぁ!?」


彼はこの時思った。我ながらもっとましな驚き方があるだろと

いつの間にか目の前に白髪の少年が立っていた。

・ ・ ・ ・

「もー手紙読んだ?ちゃんとお兄ちゃんへって書いてあったでしょ!」

と史を睨みつける。


整った顔が史の真ん前に迫る

近い近い顔がと史は思い、ははは・・そうですよねぇ。と言いながら少し距離をとる。


ムスッと膨れた少年は腕を組みこちらをみつめかえしている。顔が整っているせいで今この時も2度見していく通行人があとを立たない

「ええっと、君が手紙を書いた”期深きみ”・・くん?」


ずっと睨まれているのも嫌なので恐る恐る聞くと、そうだよ!と言ってニコッと笑う。

...なんだこの屈託のない笑顔は!?


「・・そかそか!てかよく俺だってわかったね」

「あーそれは簡単なことだよ!」

そう言うと彼は人差し指を鼻に当てて

でわかるじゃん?」と笑った。

「・・・・?」

聞き返すと、うんそうだよと彼は頷く


「ここ人がたくさんいるから色んな匂いが混ざってて、最初はお兄ちゃんの匂い途中までわかってたんだけどさ、人混みの多いところ行っちゃうからこれはもう無理かなって思ったんだけどを出してくれたおかげですぐに見つけられたよ!」

それとは一体・・・・、あ

「もしかして、この写真?」

史は手に持っていた写真を見せる。


「そうそう、それ!」

「これなんかに匂いなんてある?」

写真を近づけて匂いをかいでみるが特に匂いはしない。

「ぷっ・・・あはははははは何やってんの」

なぜ自分が笑われているのか全く分からなかったがバカにはされているなと史は思った。

「ほんとお兄ちゃん・・・鈍感だねぇ。」

「・・ッ」

期深はにやりと笑ったそのとき、ゾクりと背筋に寒気が走った。

それは本当に何もわかってないねと言わんばかりの嘲た嗤いだった。

怖い、と単純にそう思った。

「あ、そうだ。ねねお兄ちゃん」

期深は顔がニコッと笑顔を作る。さっきまでのが嘘みたいに口が弧を描く


「お兄ちゃんって呼ぶの何かだからさ兄さんて呼ぶね」

「え、あぁ好きに呼べば...ってそうじゃなかろうが!?(危ない、普通に流されそうになってしまった。)」

「そのさ期深君が言ってるお兄さんて俺じゃないんだと思うんだけど...?」

恐る恐る言うと

「は何言ってんの?」 期深の顔から笑顔が消えた。


「えっとー、住所とかはさたまたま郵便の人が間違えて俺の所に届けちゃったかもしれないし、期深君の言ってた匂いはあくまでも写真のだろ?それに俺の匂いっていうのも、もしかしたら来る途中でお兄さんの匂いが移っちゃいましたー。的な?」  何とか有り得そうな事柄をとりあえず史は言ってみた。


先程まで笑顔が消えていた期深は史の話を聞き終わると呆れたようにため息をついた。

「はぁ・・・。何その理由。そんな幾つも偶然が重なるわけないでしょ・・・っていうか最後なんてかなり無理やりな気がするし」

あ、やっぱりね~と思っていると期深はポケットからスマホを取り出して言った。


「そんなに信じられないんだったら、ほら僕のスマホ貸すからさ父さんにでも掛けて確かめてみなよ」

可愛いイルカのストラップがついたスマホを史に差し出す。

「はい、どーぞ」

史がスマホを受けとると、んじゃ僕はちょっとトイレに行ってくるねと

期深はそそくさと行ってしまった。


「(電話してみろって、自信ある奴が言うことだよな)」

は、まさかトイレに行く振りをして俺が電話してるのを盗聴してるとか!?

それかこのスマホに何か細工が・・・?

「いや、それは流石にないか」

「え、何が?」

「何がって、盗t・・・んのあ!?(期深君トイレ早っ! えなにこの子)」

「あ、まだトイレには行ってないよ?」

「行ってないのかよ! (でも何故かほっとした)」


「いやいやちょっと忘れてたことがあって、というかしなきゃいけないこと思いだしてさ戻ってきた」

そういうと期深は史の鞄を指差して「さっきの写真まだ持ってるよね?」

と確認してきた。

ああ、持ってるよと史が答えると期深はその写真貸してくれない?と言った。


「うんちょっと待って・・・・・・、はいどーぞ」

「うん、ありがと」

史から写真を受けとるとそれを両手で挟みぐっと力を入れた。

「・・・・・・よし!完了。」

そう言い手を開くと写真が跡形もなく消えていた。

「え!?あれ写真は?」

「ん?消したよ?」

「(いやいや、何当たり前に言ってるの!?サラっとしすぎではないか!?)消したって・・・、良かったのか?大切な写真だろ?」

「あれコピーだから別に良いの」

「(あ、なるほどねー納得・・・。ん?)」

納得していた史にふと疑問が湧いた。

「それならさ何でわざわざ今消す必要があるの?」

別に今消すことはない気がする。家に帰って一段落着いたら捨てるなりすれば良いから急ぐ必要性はないと思うが

一瞬期深はキョトンとした顔をしていたが、納得したような顔をした。

「それはね兄さん、単純なことだよ・・・あの写真には匂いがあるからだよ。僕は見つかるわけにはまだ行かないんだ…」

ニコッと笑うと、んじゃ改めてトイレに行ってくるねと行ってしまった。


(行ってしまった・・・、よっぽどトイレ我慢してたのか?それは悪いことしたなー、ゴメン期深君!!)

「それにしても、あの写真匂い無かったと思うけどなー何かまずいことでもあるのか・・・。

っとそれを考えるのは後だ。今優先的にやることは電話をかけることだ。」


史は期深から貸してもらったスマホをみつめる。

「電話するのいつぶりだ?あーなんか緊張してきた。」


一度大きく深呼吸した後、「よしっ」と覚悟を決めスマホの電源をオンにしたのだった。

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カラーコンプレックス 雨雲 @ama_gumo

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