第21話 大きな窓のある家
同居人の秋沢圭佑と市外の城下町を訪れた時、一軒の邸宅が目に入った。
藪に囲まれた高台の上に聳え立つその邸宅はかなり昔に造られたであろう木造の2階建てで、私達のいる方角は回り廊下と面しているらしくとても大きな窓が見えた。
回り廊下のある家ってかっこいいなぁ。恐らく今後住むことも無いであろう一軒家に思い馳せながら私は邸宅を見上げていたが、一方で窓の向こうに見える障子が酷く破れているのが気にかかった。人が住んでいないのか、はたまた気にしていないだけか。
ふと、破れて垂れた障子紙が揺らめいているのが目に入った。中に風でも吹き込んでいるのかと思ったが、窓はピッチリと閉じられており揺れ方もどこか不自然である。まるで部屋の中から、誰かが垂れた障子紙を指で弾いて遊んでいるような。
子どもでもいるのだろうか。そう思い目を凝らしかけたところで、唐突に圭佑から「ちょっと!」と声をかけられた。
「人んちをジロジロ覗かないの!」
まるでお母さんのような叱り方をする圭佑にへーへーと返事をしつつ、私は彼に「障子変じゃない?」と訊いてみた。すると圭佑は「障子?」と眉をしかめた。
「家の人がいっぱい窓の向こうに並んでて見えなかったくない?」
ちょっとした話 むーこ @KuromutaHatsuro
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