第20話 カレー屋

インターネットで地元の飲食店を検索した時、近所の住宅街にカレー屋が表示されているのを見つけた。


せっかくだし開拓してみようか。同居人の秋沢圭佑とそう話し合い現地へ行ってみたが、なんとそこに店は無かった。あるのは看板も何も無い一軒家。しかも茶色く染められたトタン板が特徴的な市営の平屋だ。


このタイプの家って商売に使って良かったっけ?


圭佑と顔を見合わせ、それから平屋の玄関前へと歩み寄る。扉は開いており中が覗える。


「ごめんくださーい…」


圭佑が恐る恐る呼びかけると、中からコトコトと鍋で何かを煮る音が聞こえてきた。今の今まで何も聞こえていなかったのに。


何か嫌なものを感じた私達は無言でその場を離れ、帰り道にある牛丼屋で腹を満たした。




あれから平屋には近づいていないが、インターネットのマップにはいまだカレー屋が表示される。

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