第19話 横断幕
※Twitterハッシュタグ『呟怖』にて投稿した作品の派生
同居人の秋沢圭佑から聞いた話。
最近、地元駅前のロータリーに蛍光ベストを纏い横断幕を掲げた中高年の集団が立っているらしい。
彼等は圭佑が通る度に明るい声で挨拶をしてくるそうだが、その反面で横断幕にはこのような文言が書かれているという。
『私の腕、返してください』
この話を聞いた当初、創作のネタに詰まった私の為に圭佑がホラー小話を考えてくれたのかと思い感謝すると圭佑から「違うわ!」と肩をどつかれた。
「さっきも見たんだから!」
「んんん〜?何かの事故で腕無くした人が訴訟起こしてるとかじゃなく?その人達、腕あった?」
「…腕は見てないけど、そんな雰囲気でも無かったよ。まだいると思うから見に行く?てか行こう?ついでに散歩しよう?」
そう圭佑に促され、私は「俺を散歩に誘う為の嘘かもしれん…」と嬉しくなりつつ外へ出た。
そして圭佑に連れられるがまま街灯の少ない路地を駅に向け進むと、前方から横断幕を掲げた集団が迫ってきた。横断幕には明朝体で印字された『私の腕、返して下さい』という文言。
思わずそばの塀にへばりつき会釈をしつつ集団が過ぎていくのを待ったが、こんばんはーとにこやかに挨拶をしてくる彼等には両腕があり、本当にどういう意図で横断幕を掲げているのかわからなかった。
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