第5話 明日世界が終わるなら
その時は、突然やって来た。
いつ頃だっただろうか。私が下校して家で勉強をやっていた頃だったと思う。理々と明日香は遊んでいた頃だろう。
いきなり外でピカーンと黄色の何かが光った。何かと思いドアの外に出る。そこに出てすぐは何も起こらなかったが、少したつと一瞬でここが家の破片だらけになっていた。
本当に何が起こったか分からない。一瞬で、たった一瞬で家がなくなり建物が全て無くなった。
泣き叫ぶ子供。子供の安否を確認している親。家族が亡くなったのか泣き崩れる人。
いろんな人がいた。私は何が起こったのか分からず立ちすくんでいた。
母は家に居たがどうなっているか分からない。見に行きたいけど見に行きたくない。安否を確認したいしまた顔も見たい。でも足が進まない。
生きていたらそれで良いけど、逆でああなってたら……。恐怖で動けない。いつの間にか目からは涙がこぼれていた。
兄はどうしてるだろうか。父はどうしてるだろうか。兄は学校、父は会社に居るはずた。
安全で、生きていればいいんだが。でも私には願うことしか出来ない。
「たっ……助け……て」
母の声だ! 家の中から聞こえる。家はぐちゃぐちゃになっていて母が見当たらない。
しかし、母の声のおかげで少し安心することが出来た。自分を傷つけてでも助ける。
少しずつ捜索を始める。破片を退かして退かして……を繰り返す。
「伊月……っ」
「あっ……いた」
母を見れたので私は安堵した。母は血だらけで殺人現場のようだ。
「会えて良かった」
「ほんとだよぉ」
母と私は余りの嬉しさに抱きあった。その手は離そうとはしない。しばらくしてから離れる。
「あれ……光」
またさっき見たような光が降り注ぐ。さっきのようになったら全人類居なくなっちゃうよ。お願いだから、止めて。
そう願ったが期待を裏切られた。
また、何かが起こり家の破片が飛び散る。
あっ、私死ぬ。みんなそう思っただろう。せっかく生き残ったのに。こんな結果か。
それと同時に後悔したことがたくさん脳裏に蘇る。
告白。カニ。本。遊ぶ約束。
全て叶えられず終わるのだ。
やってない後悔よりやる後悔。この言葉をよく聞いた。こんなん後悔は同じだろう、そう思っていたが今分かった。本当にそうだな、と。死にそうになってからしか分からない自分に嫌気がさす。
嫌いなものでも一口食べなさい。この言葉をよく聞いた。子供なら一回は聞いたことがある言葉。好きなものが少ないより、いろんなものが好きな方が良いもん。そうだよね、何で分からなかったのだろう。
好きなものは好きなときによみたかった。好きなことをして死んでいきたい。しかし、私は出来なかった。母の酷い姿を見ながら死んでいくのだ。なんて嫌な人生なのだろう。
遊ぶ約束も断らなければ良かった。楽しいことをして終わりたかったな。みんなと一緒が良かったな。
後々、後悔がたくさん出てくる。後悔があっても時間は戻らないし、死ぬことは変わらない。私は後悔せずに生きていけただろうか。
その時、家の破片が頭に直撃する。そして息が途絶えた。
ーーーーー
時間は有限。それは元々分かっている。
でも最期が今日だったら、今だったら。貴方は今日が最後の日で良いですか?
明日世界が終わるなら 時雨 @-RAINBOW-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます