第4話 残り1日

「ねぇねぇ! 今日遊ぼ!」


 帰宅中、理々がテンションマックスで言ってくる。いつもテンションマックスの理々だから普段と同じだ。


 理々が真ん中、私が左、明日香が右の順番で帰っている。明日香は余り口を開かないが絶対居ないといけない存在。


「今日ちょっと無理……かな」


 私は逆にテンションゼロで言う。その日は多分何か用事があった気がした。多分だから本当かは分からないけど。


「えー。用事あるの?」


「うん」


 遊べない、と言っただけとは思えないぐらい理々はしんみりとした。明日香はいつもと変わらない。


「そっか。明日香は?」


 理々は少し悲しそうな表情を見せる。喜怒哀楽が激しい。


「私は遊べるよ」


「じゃあ二人で遊ぶけど良い?」


 理々は私の方を向いて訊いてくる。


「私が遊べないだけだから大丈夫」


「じゃあまた今度遊べる!?」


 別人のように表情がパッ、と明るくなった。


「うん。いつになるかな」


「えっと来週とかは!?」


 理々の口の広角が上がりっぱなし。尊敬するほどニコニコとしている。明日香もずっと優しく笑っている。その顔はなんとも可愛い。


「あ、良いね!」


「明日香は遊べる?」


「遊べるよ」


 明日香はボソッと口を開いた。


「じゃあ来週の月曜日。ここで集合ね!」


 地面を指差しながら言う。そしてみんなに分かったー?と訊いている。私はすかさず頷いた。


「分かった! じゃあねー」


 と言って手を振る。私が言うとみんな手を振り返す。


「バイバイ!」


「じゃあね」


 ーーーーー


 1日後、もう誰とも遊べないことを知った。


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