第11話 疑問 Ⅺ
今の時代インシデント又はアクシデントはきちんと報告すると共に報告書へ記載した後、その部署内でカンファレンスを行い、出来る事なら二度と繰り返さない為にも対策を講じなければいけない。
また部署内だけでなく病院全体として医療安全委員会で上がってきた報告書は会議に掛けられている。
普通に誰しも失敗やミスを公にする事は怖い。
叶う事ならばミスを隠蔽しなかった事にしたいのは、私を含めきっと多くの者が心の奥底で常に思っているだろう。
でもだからと言って隠せばそれでいい訳ではない。
特に私達は医療従事者なのである。
仕事の対象は生身の人間。
隠したところでいい事はきっと何一つもないだろう。
昔の私ならば隠す事も致し方がないと思ってもいた。
だが医療安全を謳われるようになってから、そしてもう何年もの昔に働いていた病院で、今は一体何処で働いているのだろうか。
本当に看護師として尊敬出来た看護部長だった女性の教えにより、私はそれまで抱いていた考えの一切を改める事が出来たのは彼女のお蔭である。
そうミスは隠さず起きてしまった事は真摯に謝ると共に同じ失敗を二度と起こさない為にも対策をしっかりと講じれば、それをミスを犯した個人だけでなくスタッフ全体で実践していく。
そうしてどの病院も多少の捉え方の違いはあったけれどもである。
根本的な考えは皆同じで、インシデントやアクシデントを隠蔽する行為はほぼほぼなかったというのにだ。
透析終了時に注入する貧血の薬を注入し忘れ。
然も報告を受けたリーダー自身がそれをDrへ報告もせず己が権限で以っての隠蔽。
その当日は忙しさもあり追求と言うか、調べる事も出来なかったがしかし数日経てば何となく……いやいや何日経とうともアクシデントの報告書を交えてのカンファレンスもなければだ。
インシデント及びアクシデント報告書入れと書いてある引き出しにはそれらしき報告書は全くない。
まさか本当に握り潰したの⁉
いやいや流石にそれはないだろう。
幾ら准看護師が正看護師を下に見ていると言う不可思議で非日常な病院であってもである。
これは本当にヤバいと言うか、一体ここはどの時代で医療を提供している病院なんだと、もしかすれば実はこっそりとDrへの報告も済んで、師長代行をしている看護部長にも報告が済んでいる――――とか?
まんじりともしないそれでいて多忙な毎日を過ごす間に一週間、二週間と過ぎ、気が付けばひと月が経過したある日の事だった。
そう今の私はラスボスへ対峙する勇者……いやいやそこまでの大物なんかじゃあない。
勇者ではなく勇者見習の従者?
うーんそれともラスボスの小間使い……か?
兎に角目の前にいるのはセンターのドンでありラスボス。
どれだけ背中をびっしょりと冷や汗を掻きつつも、声を掛けてしまった以上後にはもう引き返せなかったのである。
頑張れ私!!
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