第3話「win-winな関係」

「この人が、トウヤが私の彼氏です」

腕をつかみながら言われても困るんですが…ってか女の子ってこんなに柔らかいの?しかもなんかめっちゃいい匂い。

「トウヤと付き合っているのでお断りさせてください」

「あぁ…そうかよ」

イケメン先輩しっかり睨みつけて帰っていくんですね。かなり怖いです。

「ってかどうゆうことか説明してくれよ?彼氏って?」

「虫よけみたいなものよ。帰りながら説明するわ」


帰りも二人並んで帰る。周囲の目線は朝よりも柔らかくなった感じがした。

「それで?彼氏って?虫よけって?」

「わたしは入学してからずっと告白されっぱなしっていったでしょ?正直うんざりだったのよ」

「お…おう」

「そんなときに親の再婚話。そして相手がクラスメイトのあなた。この人だったら下手なことはできないと思って彼氏に仕立て上げたの」

「確かに、下手なことをすればその日から家に帰れないわな」

なかなか真剣に考えてたみたいだな。かなり計画的な犯行…

「それにあなた。彼女が欲しいって言ってたわよね?よかったじゃない」

「俺が欲しいのは偽物じゃなくて本物の彼女なの!」

「ならわたしで練習してみれば?」

「は?」

「わたしは今まで数えきれない告白をうけてきたわ。そんなわたしをドキッとさせれたらどんな女の子もドキッとさせれるんじゃない?」

「確かに…でもいいのか?」

「お互いwin-winな関係じゃない。トウヤは恋愛の練習、わたしは虫よけ。最高じゃない?」

「ちなみに、期間は?」

「できれば卒業までお願いしたいわ。」

「卒業?!高校生活すべて捧げるのか?」

「そこまで束縛しないわ。もしあなたに彼女ができそうになったらそこまでで大丈夫よ」

「頑張ってみるよ。そこまでゆるゆるなんだったら」

「一応卒業までよろしくね。トウヤ」

夕日を背にニコッと笑った彼女にドキッとしたのは言うまでもない。


家に帰り家族で夕食を食べ、俺は部屋に戻っていた。

「この2日でいろんなことがあったな…」

新しい家族ができて、学校1の美少女が彼女(仮)になった。もしかして今が人生で1番幸せなのでは?

コンコンとドアをたたく音がした。

「お風呂空いたから次はいって?」

「ありがとう。そういやさ、家と学校とじゃキャラが違う気がするんだけど?」

俺はちょっと気になってたことを聞いてみた。

「あーそのこと?学校ではクールな感じで過ごしているの。冷たい女だって思ったら告白もしたくなくなるかなって」

やっぱりモテる女は辛いんだな。それよりも風呂上りってかなり色っぽいな…

「そうかな?クールなアカネもほっとけないぐらいかわいいけどな」

「ありがとう。でもそんな言葉じゃドキッとしないわよ?」

こどもがいたずらをした時のような笑顔で自分の部屋に戻っていった。

やっぱり…このアカネは破壊力半端ないわ…


次の日の朝。昨日と同じような目線が少し気になった。

「昨日の今日で噂が広まることってある?」

「さぁね?」

クールスイッチが入ったアカネさんはちょっと怖い。そう思いながら教室に入るとクラス全員の目線がこっちを向いた。

「トウヤ!お前昨日ウソついてたな!」

「な…なんのこと?」

「とぼけんな!秋山さんと付き合ってんだろ?」

やっぱりさっきの目線は間違いじゃなかったんだ。そういやアカネさんは…

目線をアカネに向けると、『お願い!』と言わんばかりにアイコンタクトをおくってきていた。

「そうなんだよ~。俺にも春が来たって感じ?」

もう後戻りはできない。卒業か本物の春が来るまで…


「トー君に彼女?ふーん…私以外の女の子が…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の隣にいるのは彼女(仮) @Hiro1Ken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ