第47話 その後のお話

 その後のお話



 若葉7戦隊のメンバー捜索はそのまま終了した。柳原君の事は、『今は事情があって会えないがいつか必ず会う』という事で皆に納得してもらった。

 捜索は終了したけれど佳代さん達『静岡組』とは定期的に小田原で会っている。佳代さん達が私達の街まで来てくれた事も有った。

 今後もこの関係は続いて行くだろう。


 私は吉安さんと松葉君とものすごく仲良しになった。放課後3人で寄り道してナックに行くこともある。席の近い人あるあるである。しかも吉安さんと松葉君が密かにお付き合いしだしたと聞いて仰天した。いつの間にそんな関係に? 吉安さん、沢村君はもういいの?

 私は何度か吉安さんと買い物に行った。ダサい私にお洒落を教える為である。吉安さんのお蔭で私も少しづつではあるけれどお洒落になっている気がする。彼女には頭が上がらない。


 4時限目終了時の『水原の移動』も着々と進行している。今現在の私の位置はちょうど渡辺君の真ん前で、二人直列に並んで礼をしている状態である。目標を掲げてから30センチ伸びた事になる。最終目標まであと2メートル程であろうか。


 廊下に飛び出すとやはり相変わらず中西君と売店までの競争をしている。彼の廊下に飛び出すタイミングも私と同じく成長しているようだ。中西君とは勉強の事で時々お世話になる。どうしても解らない事がある時、彼に相談すると丁寧に教えてくれる。辛辣な私を罵る言葉にもすっかり慣れてしまった。


 そして遂にサルビアが開花した。しかもいつも私がしゃがんで観察している目の前のサルビアが一番に咲いたのだ。やはり私の存在が何かしら影響していると思う。


 昼食後は相変わらず慎太郎君のギターを聞きに行く。少しづつギターを教えてもらい、今は3つのコードを弾けるよようになった。


 放課後、吉安さん達と寄り道をしない日は宇佐美さんの絵を見に行っている。どうも彼女は寮の夕食をかなり遅い時間に食べている事が判明した。そんな時間まで私のお腹の虫が持たないので彼女と夕食を一緒に食べたのは数回である。


 吉安さんに連れられて崔さんに家に2回子猫を見せてもらいに行った。子猫は随分と成長していて幸せそうで何よりである。崔さんには懐いているのだけれど、私達が崔さんの家を訪れるとサッと隠れてしまう。薄情な奴だ。


 寮での姫乃さんとの関係も相変わらずだ。特に話す事も無いのにいつも隣に彼女はいる。食堂でもテレビのソファーでも私が姫乃さんを見つければ彼女の隣に行くし、彼女が私を見つければ私の隣に来てくれる。会話は無いけれど彼女は寮でのかけがえの無い存在になっている。


 祥太君は、若葉7戦隊のメンバー捜索が終了した後も私に爽やかに話しかけてくれる。幼馴染の彼の存在は私にとって大切な存在だ。


 はっきり言ってどうでも良いのだけれど、蝿先輩とは学校で会うと雑談位はするような間柄になった。初めこそ『俺は栟田だ』と再三つっ込まれたけれど私が蝿先輩と呼び続けている内に彼も指摘しないようになった。粘り勝ちである。



 そして、沢村君である。結論から言ってしまえば私と彼との距離は一進一退だ。私は皆と中華街に行った帰り道に彼に私の想いを伝えた。彼はそれについて何も言及しないのだけれど私を拒む事もしない。いわゆる生殺し状態だ。悶々としている毎日に決着を着けて欲しいと思うのだけれど彼は敢えて今の関係を維持しようといている様だ。

 でも、私はそれでもいいと現状を甘んじて受け入れている。最愛の母の裏切り。最愛の父の裏切り。それらの辛い過去。彼が他人に心を開く迄には長い時間が必要だと思う。私は彼が心を開いてくれるまで、いつまでも待ち続ける覚悟が出来ている。

 あの日私が言った、『私は絶対裏切らない』と言う言葉を信じてくれるまでいつまでも待つ。いつか私を信じてくれるまでいつまでも待ち続ける覚悟が出来ていた。


 今、私には信じられないぐらい沢山の友達が出来た。悪評名高いこの旭第一高校でかけがえの無い友達を得たのだ。地元の進学校に進んでいたら絶対に出会えない種類の人達だ。私はこの高校に進学した事を絶対に後悔しないだろう。

 

 それだけは確実に思えるのだ。



 おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君の笑顔も縹渺で 折葉こずえ @orihakze

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ