第2話:詞を書くことについて語る

「おー、ツイート完了!」

「おー!とかって、こんなことで」

「ね、こんなんで」

「ん、てゆか俺、サワ・・・君フォローしてたかな」

「え・・・してくれてない?・・・ってゆか、フォローしてたらTL来ません?」

「・・・来ないや」

「してないよ」

「・・・してなかったわ」

「ちょ、・・・交流してくださいよー」

「すまん。いや、した気になって、・・・いや、なんも考えてなかった。ごめん」

「いやいや別にいいっすけど、ってゆかこれを期にフォローしてください」

「おっけ、おっけ、すぐする」

「ちょ、それツイートしますわ」

「わー、まずいよ、サワーファンにくびられる」

「・・・く、クビラレルて?」

「あ、なに、くびり殺される?」

「は?そんなファンいねー!えー、イケさん結構怖い人?」

「怖い人ではないよ。あー、でも怖いのは好きね」

「あー、でもそっか、確かこないだの曲、<サクリファイス>とかもそーゆー系でしたよね。あーいう詞はどっから出てくるんすか?それも聞きたかった」

「え、あれ聴いてくれた?うーん、元々そういうの、好きだからねえ。あ、でも、ホラー映画はだめよ」

「はあ?」

「ホラーは無理。あのー、何だっけ、ど忘れした、あの、<シックス・センス>の監督のね、<バケーション>だったかな、いっこすごい観たいけど絶対一人で観れなくて、観れてないのあんの。あの監督好きなんだけど、えっと、カロヤンじゃなくて・・・」

「・・・えー、<シックス・センス>でしょ?・・・てゆかそれ、どっかの指揮者じゃない?」

「あ、よく知ってるね」

「ってかカロヤンじゃなくてカラヤンじゃない?カロヤンて、ケロヨンじゃあるまいし」

「あれ?何だっけ、ゼナとかユンケルとか」

「えー?」

「何か育毛剤!・・・あれカロヤンか」

「役所広司の」

「ローヤルカロヤン」

「そうだっけ?・・・えー、何の話!」(註:M・ナイト・シャマラン監督映画「ヴィジット」の話です)

「やー、えー、・・・だからホラー系好きかって話!沢ちんは?」

「サワチン。うーん、さわっちんはね、・・・いやいや、怖いの無理無理。パッケージとか見れないもん」

「あ、違う違う、歌詞!だからね、サワチン、沢君は、えー、ほら、そう俺も聞きたかったの。何ていうか、クセがない」

「やー!それ!それなの!ほんっとね、俺ね、歌詞書けないの」

「いやそりゃあ嘘でしょ。すっごい俺、クセがなくてこう、んー、草原みたいな、麦畑みたいな感じがして」

「へ?」

「どういう思いで書くとそうなるの?」

「あ、あのね、あのねだからね、ちょ、聞いて?」

「聞いてる聞いてる、落ち着いて」

「お、お、落ち着こう。もう三十路だから、落ち着かなきゃ」

「そうそう、サワー飲んで」

「う、うん。・・・あ、ねえや」

「こっちあげるから」

「あ、うん」

「・・・飲んだ。飲みかけ、ごめんノリで」

「あーううん、俺こういうの気にしない」

「あっそう。じゃいいけど」

「はー。・・・だからえっとですね。述べさして頂くとですね」

「ほうほう」

「俺、こう、・・・言葉に結びつかないっていうか、こう・・・な、なんつーの、・・・そ、そこに、言葉が、ないんですよ!」

「・・・うん。そちらの方向に手を伸ばすけれども、そこに言葉は浮いてもいないし落ちてもいない」

「まさにっ!まーさーにっ!だからこう、なんか、雰囲気だけの?雰囲気ワード?てきとおおおに当てはめて?・・・何とか、なんないか!って、思ってるところなの!!」

「ぎゃ、逆ギレ」

「逆ギレよ。もう。だからね、何で、どっから、歌詞って書けんの??」

「おー、何か、音楽やってる人って感じ」

「ザ・ボカロPね。我らボカロP」

「って、いうか、まずね。まず、沢君の、ボカロPになりたいきっかけよね。いっちゃん最初」

「そこ聞く?そこ聞いちゃいます?」

「述べて」

「くはっ」

「さあお述べ」

「はい、述べさしていただきやす。えー、あっしが若い頃ですね。十数年か二十年か前。んまー、ギターにはまりまして、例の、すぃんがーそんぐらいたーですか。あれに憧れたんですね。しかしですね。沢君、決定的に、徹底的に?あのね、歌が下手だった」

「ほおーー。今日日きょうび歌って踊れるボカロPも多いと言うに」

「お、おどれ?踊れはしないかもだけど、歌えますね、ええ、歌ってる人多いね。ぼくは歌えません」

「はあー、それで初音ミク様においでいただいたと」

「ですね。とにかく、俺が歌わなくてもいいやり方?でもそれでいて、どっかの誰か?知りもしないボーカルでもない誰か?んで、あ、そーいうの出来るんだって、気づいてね」

「なーるーほーど。・・・じゃ、でも、始めに歌ありきってこと?」

「・・・う、ん。歌ありき」

「単なるギタリストではなく、作詞作曲をして、歌を作ろうと」

「・・・うん」

「じゃあさ、それならさ、歌詞じゃん。歌って歌詞とその世界観じゃん。それは最初にあるのに、・・・なに、語彙力?」

「語彙力?やっぱ?語彙力の貧困?」

「そうとしか思えない」

「わー、うわー」

「いやいや、でもホント、俺はさっきも言ったけどすごいいい歌詞と思ってるし、それが魅力じゃない。別に、全然、何か変にこねくりまわさなくたって」

「いや、いやね、・・・だから、イケさんはどうやって?歌詞どうやって?」

「え、俺?・・・んー、ってゆか、俺はさ、詞先しせんだし(註:まず先に歌詞を書いて、それに合わせて曲を作る作り方のこと。もちろん曲先の人もいる)、ってゆかまず言葉?言葉の、響き?オノマトペ?わかんないけど。とにかく、言葉の・・・形ってか、鋭さ、柔らかさ、そういう・・・粘土こねるみたいなさ、粘土こねて人形作って言葉の服を着せるというかね」

「・・・うーわー」

「ん、それでいうと言葉ありきじゃなくて人形ありきだね。でもその人形のとっかかりみたいのは、言葉、単語の響き、その意味の、色?そういうもんだよね。音楽はその飾り?」

「・・・」

「・・・いーよドン引きすればさ!」

「しっ、・・・してな、いけど、もー、えー?何か作ってるものちがくない?やってることちがくない?おんなじ、三分か四分の曲アップしてる仲間ですよね?」

「だあってそりゃさー、もう、完全に、千差万別でしょ。絵だってそうじゃん?塗り方だって何だって、全員違うでしょ」

「えー、絵とか描かない、描けないもん・・・」

「俺だってバイオリン弾けないもん。ギターも弾けないもん」

「あ、全部打ち込み?」(註:楽器を自分で弾くのではなく、音符のプログラミングで音を出している曲のこと)

「うん」

「そうなんだー。あー、やっぱスタンス全然違うんだー」

「勉強になるね」

「すっごいなる。あー・・・」

「・・・」

「いや、・・・いや実は、・・・実はね、今日ちょっと誘わしてもらったのは、その、ね・・・、246Pさんちらっと、俺とコラボってか、合作みたいなこと?・・・してみたりしないかなー・・・とか、・・・思ってたのね」

「・・・そ、そうなの」

「はい」

「左様でしたか」

「ご迷惑でしたか」

「いえ。いえいえそんなこと。・・・光栄です」

「え、じゃあ、・・・前向きに検討して頂ける?」

「・・・、・・・ふふっ、何か、面白いことになったね」

「でしょ?でしょとか言って・・・でもちょっと、いーんじゃないかって!」

「よくも俺を誘ってくれたね」

「な、なによくもって」

「いやーありがたいなーって」

「ほんと?」

「いや、え、何か、すごいわくわく、ってかほんと、真摯に、嬉しくなってきた。ありがとう」

「や、そんな・・・照れるな」

「え、でもなんつーか・・・ええっと、どういう、なんていうか、あれ的な?」

「ああ、うん。それね。そういう、ことよ。それそれ」

「でしょ?」

「そこよそこ。・・・つまりね」

「うん?」

「こう・・・お、・・・俺のね、・・・語彙力?246さんを語彙力に迎える的な?」

「・・・お、俺、語彙力?」

「でしょー」

「んまー・・・」

「あはは」

「えー、いやー、俺サワーPのそのまんまが好きよ?俺が、入ると、何かくっどいっていうか、泥水?せっかくの湧き水が?」

「やーー!ちゃうちゃう。そこ、ちゃうよ!や、言ってることはまあわかる。や、わかるっちゃ失礼だけど、でも、でもそうじゃなくてね?なんてーのかな、・・・成長?」

「・・・第二次性徴期」

「や、それとっくに終わってる、それとっく越えてるけどね。んまー第三次よね。それを、越えた・・・思春期とか反抗期とかそういうもん越えて、自分の限界ってか能力みたいのも見えてきて、そんでそっから、こう、どうやって成長するか」

「興味深い」

「でっしょー?・・・んで、考えたときに、いやふと、246さんの曲聴いて、なーんか、こう、・・・マッチしたっていうか、いい意味で、俺と似たような匂い、でも正反対の匂い?みたいな?」

「ああ、まあ、わかるかも。うん」

「うん、それでね、ちょっと、いっちょかけあってみようか、みたいな。ダメ元でね、当たって砕けろ的な。でも案外そーいうのうまくいったりってあるじゃない」

「あるね」

「うんうん」

「んー、俺の、・・・語彙力、ねえ」

「どーにかなりませんかね」

「いや・・・、別に、なんていうか、何かしようみたいのは全然、楽しみだし、やらして頂きたいと思う。でも、何か、・・・ちょっと」

「ん?なに、なになに」

「・・・んー、・・・ちょおおどね、俺ね、・・・はは、・・・歌詞やめようと思ってたとこで」

「・・・あんん?」

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