10話.[確かにそうかも]
「ライバルがふたり増えたことをご報告します」
また唐突だった。
彼女はこっちの腕を抱きつつ、「浮気しないでぇ」なんて言って不安がっている。
なにがどうなってそういう判断になったのかという過程が分からないからこちらとしては困るばかりだった。
「え、小学生ふたりがライバル?」
またなんでそんなことで不安になっているのか。
私が受け入れたのは晴菜の要求のみだ。
そもそも片方は弟で片方は振った子だよ? 普通に可愛い存在でしょうよとツッコミたくなるレベルの話で。
「寧ろ晴菜のライバルは先生じゃない?」
「ええ!?」
本当にあの人はいい人だからね、ありえない話じゃない。
既婚者じゃなかったら本当に狙っていた、それで卒業したら確実に私の彼氏になってもらっていたと思う。
だってあの人は無理やり私をこの世に残したんだよ? 多少の責任は取ってもらわなければならない。
ま、まあ、実際は勇気がなくて逝けなかったというだけだけど、先生が止めてきたようなものだからしょうがないね。
「ちゅーしよ、取られたくないから」
「私はそういう意味じゃなくて純粋にしたいからってしてほしいけどね」
「したいっ」
「いいよ、ほ――」
……ら、まで言わせてほしいけど。
あと、やり方をよく知っているなって感心する。
何度も何度も繰り返されていくとなんだか不思議な気持ちが湧き出てくるんだ。
「っはぁ、はぁ……はぁ……」
指が完全に離れたときみたいにきゅっとした気持ち、かな?
もしかしてもっとしてほしいと思ってしまっているんだろうか? 実は淫乱だったとか?
ないないなんて言えないレベルで経験がないからどうにもできないけど。
「ちゅーした後の舞優の顔ってさ、なんかえっちなんだよね」
「そうなの?」
よく分からない。
でも、晴菜が嬉しそうだからこれからもそれでいいやと思えた。
やっぱり恋人に気に入ってもらうことが重要だからね。
それぐらいならいくらでも晒してやろうと決めた。
「はぁ、これは回数を絞らないと駄目だね」
「あ、確かにそうかも」
「もうテストだしね、一緒に頑張ろうね」
「うん、頑張ろう」
誰かとテスト勉強をするなんて初めてだ。
私はこれからも色々な初めてを体験するんだろう。
そしてその際に、彼女が横にいてくれればいいなとにこにこと笑っている彼女を見つつそう思ったのだった。
45作品目 Nora @rianora_
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