09話.[私が彼女なんだ]

「翔太くん、知生、私と舞優だったらどっちが好き?」


 気になっていることを聞いてみた。

 そもそも知生は好きになって告白している身だ。

 答えはもう分かってしまっているものではあるから聞くだけ馬鹿かもしれないけど気になってしまったのだから仕方がないと片付けた。


「晴菜さんには悪いですけど、やっぱりお姉ちゃんの方が好きですね」


 うっ、と、知生は?

 物凄くいい笑みを浮かべながら「まゆちゃん!」と答えてくれたという……。


「あ、あれですよっ、単純にぼくはお姉ちゃんといっしょにいる時間がちがいますからねっ」

「翔太くん、慌ててフォローしてくれるあたりが余計に傷つくよ……」


 ちなみにいまこの家に舞優はいない。

 翔太くんが知生とカードゲームをするために来ていたから聞かせてもらったという形だ。


「おれはまだあきらめてないから」

「え、私が彼女なんだよ?」

「それでも」


 えぇ、こんなところに手強いライバルがいるよっ?

 姉弟で同じ子を好きになるとか……、いや、舞優が罪作りな子ということでもあるのか。

 つまり……そう! 私たちが全て悪いわけではないと。


「独り占めとかずるいし」

「いやぁ、恋愛ってそういうものだから」

「そうだよ知生くん」


 おお、翔太くんナイスっ。


「それにお姉ちゃんを取られたくないし」


 ん? あれ? なんかおかしくないかと困惑。

 実は翔太くんも舞優のことを好きだったり?

 ……よく言い争いになるって舞優も言っていたしな。


「あ、ぼくは付き合いたいとかそういうことではなくて、単純にお姉ちゃんが他の人を優先して相手をしてくれなくなるのがいやなだけですから」


 な、なんか……うさんくさいぃいっ。

 あくまで冷静だから本来なら「そうなんだっ」となるところなんだけど、今件に関しては信じられなかった。

 ……あのときの舞優の気持ちが分かるなあ。


「翔太はずるいよな、いつだってまゆちゃんと会えるかんきょうにいるんだからさ」

「いいでしょー?」

「くそぉっ」


 くそぉはこっちだよぉっ。

 ライバルがふたりに増えたそんな日となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る