第8話 盗賊退治

 カレンとレオナルドが何故こんなにタイミング良くエマを助けることが出来たのか? 


 その秘密を知るには少し時を遡る必要がある。


 ~ 先週末 ~


「レオ~! 見て見てこれ! 盗賊の退治依頼だって!」


 いつものようにストレス解消のため魔獣狩りに勤しんだ後、冒険者ギルドでカレンの弾んだ声が響いた。


「どれどれ... ほうほう、これは由々しき事態だな」


 依頼ボードを見ながらレオナルドも頷く。


「でしょう? 王都のこんな近くで堂々と悪事を働くなんて見過ごせないよね?」


「あぁ、早速依頼を受け...」


「ダメです!」


 そこへ護衛に付いてる影が待ったを掛ける。


「なんでよ!」


 カレンが食い付く。


「お二方の本分は学生でしょう! 学業を優先して下さい!」


 影も引かない。


「困ってる人が居るのを見過ごせないでしょうが!」


 カレンも食い下がる。


「...本音は?」


「面白そうだから♪ テヘペロ♪」


「やっぱりか~い!」


「おい、いつまで漫才やってんだ? 依頼は受注したから行くぞ?」


 そこへレオナルドがしれっとやって来た。


「は~い♪」


「あぁ、図られたぁ~!」


 影が嘆くがもう遅い。



◇◇◇



「レオ! 見付けた! 既に馬車が襲われてる!」


 学園をサボって盗賊の被害が多い街道を見張っていたカレンの緊張した声が響く。


「良し! カレン! 先行してくれ! 馬車の中の人達が心配だ!」


「了解!」


 カレンが馬に鞭を入れて襲われている馬車に肉薄する。


「な、なんだお前は! ぐええっ!」


 馬車に入り込んでいた盗賊の一人を外に放り出した。カレンは知らなかったが、それは盗賊の首領だった。


「くそっ! 舐めやがって! お前ら、やっちまえ!」


「誰に言ってんだ? お前で最後だぞ?」


「へっ?」


 首領が間の抜けた声を上げる。見渡すと部下の盗賊達は全員地面に這っていた。



 盗賊達を全員捕縛した後、エマが尋問を受けていた。


「それでエマはどうして家出なんかしようと思ったんだ?」


「ここのところ休んでたよね? 何があったの? 悩みがあるなら相談に乗るよ?」


「...やなんです...」


「えっ?」


「もうイヤなんですよ! お二人に振り回されるのが! 面白い? そりゃ面白いでしょうよ! 自分では手を汚さず、私にやらせようとするんだから! こっちはやってられませんよ! やりたきゃ自分達でやればいいでしょうがぁ! もう放っておいてよぉ! はぁはぁ...」


 エマは思いの丈を全部ぶちまけた。


「エマ...」「エマちゃん...」


 これにはさすがに二人にも堪えたようだ。


「エマちゃん、ゴメンね...そんなにイヤだったなんて...」


「あぁ、済まない。お前の気持ちを考えてやれなくて...」


「分かってくれたんですね!」


「あぁ、もちろんだとも」


「だから学園に戻りましょう?」


「はい!」


 喜色満面のエマは二人が怪しく微笑んでいることに気付いていない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

完璧令嬢と完璧王子は常に退屈している 真理亜 @maria-mina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ