第5話 メリルの事情
私の名はメリル。私には前世の記憶がある。
前世の私の実家は、祖父の代から合気道の道場を営んでいた。当然私も幼い頃から修行していた。一人娘である私は、行く行くは道場を継ぐことになるだろうからと、厳しくしごかれた。両親にも期待されていた。
それが嫌だった。
自分の将来を親に勝手に決められることに我慢ならなかった。だから毎日の修行も適当に手を抜いてた。そして修行のストレスから逃れるように、次第にゲームとかマンガとかアニメにハマるようになっていった。所謂オタクというヤツだ。
その中でも特にハマったのが乙女ゲームだ。修行に明け暮れる毎日では、恋愛なんてしてる時間もなく、クラスメイト達が楽しそうに彼氏の話をしているのを、指を咥えて見ているしかない自分が悲しかった。
高校生にもなって、彼氏どころか男友達の一人もいないのなんて私くらいだった。だからせめてゲームの中だけでも疑似恋愛を楽しみたかったのだ。
様々な乙女ゲームを渡り歩いていた時、オタク友達から「これお薦めだよ」と渡されたのが『パーフェクトプリンス』だった。そう、この世界のことである。
早速プレイしてみようとOPムービーから見始めた。長い...スキップするんだったと後悔した時には既に遅く、睡魔が襲って来ていた。せめて最初のヒロインと王子の出会いシーンだけでも...
ハッと気付いた時には朝だった。どうやら寝落ちしたらしい。慌てて時計を確認すると、遅刻ギリギリの時間だった。朝食も取らずに急いで学校に向かって...
そこで車に撥ねられた。
そしてこの世界に転生した。前世の記憶が蘇ったのは10歳の時だった。そして愕然とした。なんでよりによってこのゲームの世界に転生したのかと。前世でやりこんだゲームは他にも沢山あったはずた。それなのになぜまだほとんど未プレイのゲームの世界に?
私は頭を抱えた。新鮮な気持ちでゲームをプレイするために、オタク友達から事前情報を敢えて何も聞かなかった。それが裏目に出た。要するに...
私はゲームの情報をほとんど知らない乙女ゲームの世界に転生したのだ。
転生特典がほとんど無いなんて酷いじゃないかと、転生させた神様を小一時間問い詰めたい。そうは言ってもどうにもならないので、私はこの世界のことを探り探り生きていくことにした。
その結果分かったのは、やはりこの世界は『パーフェクトプリンス』の世界であること、私には魔法の才能があること、15歳になったら学園に入学するということ、入学式の日に、攻略対象である王子とぶつかるという出会いイベントがあり、そこから恋に発展するということ。
つまり私はヒロインに転生したということだった。
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