第2話 幼馴染みがライバル

 カレンとレオナルドは幼馴染みである。


 幼い頃から優秀だった二人は、何事においても競い合い、切磋琢磨しながら、しのぎを削って来た。故に二人の間にあるのは、恋愛感情というよりライバル心である。


 そんな二人を周囲が放っておく訳はなく、身分の上からも相応しいこの二人が婚約関係になるのにさほど時間は掛からなかった。恋愛感情は無くとも、添い遂げるとするなら、お互いしかいないと理解していた。故に婚約に関しては、二人共特に異論はなかった。



◇◇◇



「お疲れ様でした。また今日も大量に狩ってきたみたいですね?」


 二人は冒険者ギルドに来ていた。仕留めた魔獣を換金してもらう為である。


「まあまあだな。報酬はいつも通り孤児院の口座に振り込んでくれ」


「了解です。しかしお二人とも欲が無いですよね~ これだけ稼いでるのに全部孤児院に寄付しちゃうだなんて」


「戦う理由は人それぞれってことさ」


 カッコつけて言ってるが、要は金の管理が面倒なだけである。



◇◇◇



「ここからここまで全部包んで下さい」


「お買い上げ、ありがとうございます!」


 二人は今、王都で一番人気のスイーツの店に来ていた。これから訪れる孤児院に差し入れを持って行く為である。店の人気商品を軒並み買い漁った二人は、それらをアイテム袋に入れて店を後にした。



「ようこそいらっしゃいました、レオナルド殿下、カレン様」


「院長先生、これ差し入れです」 


 院長室の空気が大量のスイーツの匂いで甘ったるくなる。


「いつもすいません。誰か、子供達に持って行ってあげて」


 職員達がスイーツを運び出した後、本題に入る。


「院長、連絡は受けている。答えはノーだ」


 院長は疲れ切った顔で項垂れる。


「な、なんでですか~! 元々私はしがない孤児院の一員だったんですよ!? それがこんな...もうここは孤児院なんてレベルじゃないでしょう? 学園レベルじゃないですか~!」


 そうなのだ。カレンとレオナルドが冒険者活動を開始する前、ここはどこにでもあるようなありふれた孤児院だった。だが、この二人が毎週のように多額の寄付をするお陰で、今や鉄筋三階建ての立派な建物に生まれ変わっている。昔の面影はどこにもない。


 ちなみに今叫んでいるのは、先代の院長がお歳の為引退した時に、院長の側で職員として働いていた20代の女の人である。


「今日の稼ぎでやっと舞踏会場が作れそうだな」


「楽しみね~♪」


「いやいや、だからですね!? 学園経営に長けた人を雇って下さいよ! 私にはこれ以上無理ですって! 体が持ちましぇん!」


「それは出来ない。なぜなら...」


 そこで言葉を切ったレオナルドが院長をじっと見詰めてから、


「あなたは子供達に好かれていて、ここに必要な人だからだ」 


「殿下...」


 麗しい王子様に見詰められてポーっとなりかけた院長だったが、


「はっ! いやいや、絆されませんよ!」


「ではカレン、帰ろうか」


「ほ~い」


「殿下~!」


 院長の悲痛な叫びが響く中、新しいオモチャを見付けたみたいに楽し気なレオナルドを見ながら、カレンは心の中で院長に御愁傷様と呟いた。




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