「詩集 君と僕」作品解説 〜あとがきにかえて〜

「詩集 君と僕」の各作品解説になります。


 今回の詩集は「あのね」「Answer」に続く3作目になります。毎回テーマを決めているのですが、今回の詩集は胸がキュンしてドキドキ((ΘωΘ)土器土器└|∵|┐)がコンセプトです。


 前作の「Answer」はテーマが難解で進めるのに苦労しましたが、今回は“羞恥心”が最も障害になりました。途中で作品を読み返してふと我に返り、えっ? 誰こんなの書いたの? と恥ずかしくなることもしばしば、一方で、読まれる方にキュンとしてもらえるような、心を打つ(撃つ)ようなものをお届けしたい! という想いも強くあって、なかなかそれが書けなくてじりじりしたこともありました。


 そんなときに救いになったのが、投稿するたびに皆さんから頂いた感想や温かいコメントになります。以前は投稿するだけの一方通行だったのですが、最近詩を投稿するたびに皆さんとやりとりさせて頂くようになり、その楽しいこと、嬉しいこと。日常が輝き出し、自分にとっては至上の喜びになっています。ということで、本詩集はそうやって皆さんと一緒に作り上げた詩集になります。


「君と僕」

 この詩では月は遠くで見るから綺麗なんだという一節があります。実はこれ「こちら葛飾区亀有公園前派出所(通称こち亀)」という漫画が元ネタなんですね。29巻「ハローグッバイ!の巻」で白バイ警官の本田くんが高嶺の花である女性に恋をして悩んでいたときに両さんがかけた言葉です。読んだときに、確かに月は遠くで見ると綺麗だけど実際に行ってみたら空気も水もなくて岩と砂だらけの世界だもんなぁと妙に納得し、いつか作品の中で使ってみたいと思っていました。ただ、この後に両さんは自分は何度もアポロになったと続けていまして、やっぱり分かっていても月に行って石を拾ってしまうのですね。


「空」

 作者はこの詩で初めて詩的表現というものを覚えたように思います。具体的には最後の日没のシーンを夕陽が水平線にくちづけすると例えたところです。「言葉にできないブルー」や「あかね色の空が隠してくれる」のところも良いのですが、やっぱりラストのここが好きです。この詩では彼女を太陽・夕陽に、主人公を空に例えています。眩しくてまともに見れなかった彼女が照れて紅くなった顔をずっと眺めていたい。でも口づけをすると顔が見えなくなる、といった情景や心理を自分でも上手く表現できたと思います。


「シリウスの涙」

 「空」で何かに例える表現に目覚めてしまい、この詩では先ず頬に流れる涙を流れ星に例えました。次に彼が星を掴み取ったフリをして渡す指輪の宝石をシリウスに例えています。一方でシリウスはエジプト神話ではオリオン(オシリス)の妻イシスであるため、ラストの手の中にあるシリウスは彼女の手の中にある指輪と彼の手の中に抱きしめられた彼女の両方にかかっています。

 しかし綺麗な星空はどうして眺めていると誰かに会いたくなったり、急に電話して声が聞きたくなったりするのでしょうね。


「昼下がりのルピナス」

 この詩は当初は昼寝をしている無防備な彼女のふくらはぎを春の日差しに横取りされてやきもちを焼いている、少しフェチなところを狙っていたのですが、寄せ植えのルピナスとの会話を楽しんだり、花言葉の要素を織り込んだりとしているうちに、随分と可愛らしいほのぼのとした詩になってしまいました。評価やPV数などからこの詩集の中では人気の高い詩となっているようです。


「雨上がりの朝に」

 最初に「心のプリズムが君の光を虹色にする」というフレーズが思い浮かび、「空」のあとになかなかそれを超えるような詩が書けず悩んでいたため、もう一度「空」をなぞるような形でモチーフを「雨」にして書いてみた詩になります。そのため、自分の内面から入り、情景描写に続き、最後は隠喩的表現で締めるといった詩の構成が似ていると思います。出来上がってから、これはこれでTiLA節の一つの型としていいのかなと思いました。


「年下の幼馴染み」

 「雨上がりの朝に」で自分の軸足を確かめたあと、しばらく他の作者さんの作品を参考にしたりして、新しい表現方法を試みていました。そんな中でラノベのテンプレ的なシチュで、短い節を細かく刻んでテンポをつけた本作が出来上がりました。個人的には結構気に入っておりまして、特に彼女が大泣きしてお化粧が崩れてしまうところを花火のスターマインに例えたところが気に入っています。


「初夏」

 「ルピナス」で表現できなかったふくらはぎを河原で素足を水につける女学生をモチーフに書いた詩になります。なんとなく古風な言い回しにしたのは、そういう時代の恥じらいに対する価値観や、ふくらはぎという単語が出てくる詩にはそういった文章がフィットすると思ったからでしょうか。あるいはそういう照れ隠しの蓑がないと書けなかったのかもしれません。詩集も後半になってきて、これまで恥ずかしい詩を書いてきた作者の心情が投影された詩かもしれないですね。


「恋をした」

 今回の詩集で一番苦労した詩になります。この詩は本当にこっぱずかしかったです。他の詩で可愛い可愛いとの評価を多く頂いていて、それはそれで嬉しかったのですが、キュンとするだけではなくドキドキ((└|∵|┐))=((┌|∵|┘))もさせたい気持ちもあり、頑張ってどうにかこうにか言葉を絞り出して書いた詩になります。当初は良い言葉がなかなか出てこず200文字を超えるのにも苦労しました。初稿の後も改稿に改稿を重ね、何とか今の形におさまった、そんな詩になります。

 ポイントとしては行間と改行を駆使して詩のリズムに抑揚をつけているところが特徴です。

 また、最後の涙の理由をよく訊かれるのですが、これは「なぜだか」と書いているように特に答えはありません。作者としては夢の中でも想い人と結ばれた喜びの涙か、あるいは男性のとある生理現象の隠喩か、そんな感じで思っていますが、ここは読み手側で自由に解釈なさってください。(えっ? 字数稼ぎ? さぁて、何のことやら……)


「0.2秒の奇跡」

 本詩集の詩は殆どが創作の物語だったのに対して、最後の詩は1作目の「あのね」の多くの詩と同じように、作者自身の思いや考えを詩にしたエッセイ的な内容になっています。人と人との出会いは本当に奇跡的なことだと常々思っておりました。生きている間にその心と心が言葉を交わせることに。

 今回詩にするにあたり色々な計算方法を調べ、考え方は色々あったのですが、なるべく分かりやすいものをその中から選んで書いています。

 これまでは定性的にしか感じていなかったのですが、自分でもエクセルで検算してみたりして、改めて定量的にその可能性の低さに驚くとともに、こうして皆さんと出会えたことが本当に愛おしい気持ちになりました。だから「ねぇ 聞いてよ」以降はそのときの作者の気持ちをそのままストレートに書いています。

 作者はこれまで心から「愛している」と言えるような人がいなかったので(正解には失恋して言えなかった)、この詩で初めて皆さんのことを思い浮かべて心からその「愛している」という言葉を叫んだときに、思わず感極まってしまいました。少しいやらしい表現になりますがプラトニックなエクスタシーを感じてしまいました。


 以上が作者による各作品の解説になります。本来であれば詩の解釈は読んだ人が思い思いに自由に解釈してもらうべきなので、余計な解説であったかもしれませんが、作者の想いもまたお伝えしたく今回もあとがきにかえて執筆いたしました。


 冒頭にも書きましたが、今回のタイトルの君と僕は、君と僕とで作り上げた、君と僕との詩集という意味が込められています。ありがとうございました。次作でまた皆さんとお会い出来ることを楽しみにしています。

 最後までお読み頂き有難うございました。


2021年3月 TiLA

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詩集 君と僕 TiLA @TiLA_k

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