モテる男は辛いよ

徳丸。

第1話 日常

 俺は太郎。

 高身長、イケメンで金持ち。どこにでも居る普通の神に選ばれし子だ。

 え?言い過ぎじゃ無いかって?

 そんな事ないだろ笑。だって、こんなにも人生成功してるのは神様に選ばれているからとしか思えなくね?


 ・・・そんな怖い顔すんなよ笑。


 でもさ、そんな俺でも最近悩んでることがあんだ。

 ・・・ちょっと話に付き合ってくんね?・・・・ありがとう。

 じゃあ、少しだけ。一方的に話させて貰うぜ。



 え?何?苗字を知りたい??


 そんな長い付き合いにはならないだろうから下の名前だけで十分だと思うぜ?



 ーーーーー

 ーーー

 ー


 快晴。今日は素晴らしい日だ。雲一つない。

 こんな日はどこかドライブでも行きてえなあ〜。


 俺はそんな事を思いながら、いつも通り玄関を出る。


 ドライブをしたいのは山々だが、今日はちょっと遠くまで出張しないといけないため、ドライブはお預けだ。


 行きたくもない出張の為に、朝6時という早い時間に家を出るのは、正直体がきつい。今も目がシパシパしてる。

 でも、朝早くのこの空気を肺いっぱいに吸うと、爽快感があって、こんなのもたまには良いかなって。



 さあ、気持ちの良い出発だあ!!と、家を出てしばらくすると、この清々しい気分を台無しにするような気配を感じた。


 ・・・ストーカー野郎だ。


 いくら俺がハイスペックだからってストーカーはいかんだろストーカーは!!とは思うものの、直接対面するのは怖いから、左に曲がった。


 左に曲がって歩きながら、目的の駅までの道のりを頭の中に浮かべる。

 さらに、道順を考えながら、あのストーカーについても思いを馳せた。


 きっとあの道にいたストーカーは、この間俺が良い車に乗ってた時に、煽り運転してきだやつだ。

 煽られて引くような奴あ男じゃねーだろ?

 華麗に避けて、窓が開いてたから、ピンクと白のウサギのキャラクターの人形をプレゼントしてやったんだ。


 それに大層お怒りでなあ。とっちめてやる!!って言ってからさ。いつか来ると思ってたんだよね。


 どうも人目を引く俺は、すぐに周囲に何をしたか、何を買ったか、どこに行ったかなどなどがバレてしまっていて。

 SNSとかあるじゃん?それとかね。


 何か行動する度に、新しいストーカーが増えてるんだぜ?笑っちゃうだろ?

 羨ましいっていえよ!実際やられたらちょーうぜーから。




 左に曲がってしばらくしたのち。

 俺の歩く道の右側に立つアパートから視線を感じた。


 ・・・ストーカーだ。


 しかも今度はただのストーカーじゃない。二段構えのストーカーだろう。

 アパートの中から俺を観察する人、この先の曲がり角に待機する人。用心深い、用意周到なストーカーによる計画だ。そんな気がした。


 2人組かあ・・・。きっとあれだな。

 俺がある時期に狙って、やっと落とした時、偶然見られちゃったんだよな。嬉しくて嬉しくて。浮かれちゃってふわふわしてたところを。


 その時の2人だろうなあ。


 知ってるやつらだったのに、仕事着じゃなかったからわかんなかったんだぜ。

 失敗失敗。


 その復讐ってところか。

 きっと容赦ないだろうなあ。



 俺はMじゃねえし、そう言うのは趣味じゃねえ。だから、待ち伏せしてる輩が待機する角の一本手前にある脇道を左に曲がった。


 左に曲がり、脇道にそれたが、このまま真っ直ぐ行っても駅につけない。

 どこかで右に曲がらなければ。


 しかし、どこの曲がり角にもストーカーが待ち伏せしているような気がした。

 これは俺の持ち前の直感って奴。


 老若男女。誰からもモテるってのはこれだからキツいぜ!!

 俺はやれやれと首を振る。


 このまま、駅に行こうとしたら、必ずどこかで捕まる。

 でも、右に曲がらなければ駅に着くことはない。

 さらに時間も迫っていると来た。


 こんな状況から導き出した、俺が取るべき最善の方法は・・・


 ダッシュで次の駅に向かう事。

 しかも、ストーカーがあんまり知らないような道を通って。


 決めたら早い。

 奴らに感づかれる前に行動だ。


 俺はしれっと公園に入ると、猛ダッシュした。

 塀を駆け、少し住宅のお庭に失礼し、道路を突っ切る。

 荒い呼吸を繰り返しながらも、俺は、目的の駅が見えるところまでやってきた。


 どうやら上手くストーカーを撒けたらしい。気配を感じない。


 安心した俺はようやく足を止めた。



 ほぼ毎日続くこの戦いは、毎回俺の勝利で終わって来た。雨の日も風の日も晴れの日も。

 しかし、このハードでスリル満点の戦いもそろそろ終わり。


 羽田に向かう、上りの電車に乗り込む。


 俺はこの出張で、しばらく海外に滞在するからな。


 無念は拭っても拭いきれぬほどあるであろう彼らには申し訳ないが、俺も悪気があってやったわけじゃねえ。



 許して欲しいとはもちろん言わないが、次会う時にはその怒りが収まっている事を願うよ。



 1時間後。僕は無事、空にいた。



 ーーーーーー

 容疑者 桜木 直人 32歳

 身長180程度

 容姿 中肉中背 顔は不明

 現在、逃走中


 2***年11月04日

 〇〇県〇〇市に在住の20歳の女性を殺害し、女性の乗っていた車で逃走。

 女性は〇〇の社長で、よくオーダーメイドで作らせた人形をSNSに投稿していた。


 2***年11月06日

 〇〇県〇〇市にあるお店2軒が連続で狙われた。どちらも自宅兼店舗となっていた。

 毎日繁盛していたお店で、自宅内にいた人は全員首を落とされていた。

 深夜による犯行だったが、朝方、直感的に異常を感じた、警官2人が話しかけることに成功した。

 その後犯行が明らかになる。


 その他に、容疑者による犯行は多岐に及ぶが、共通点がある。

 被害者の共通点はーーーー



 ーーーーーー



「ほら。何をやっても許されるんだぜ?やっぱり俺の人生成功してるだろ?」



 共通点は社会において成功者であること。

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モテる男は辛いよ 徳丸。 @tokumaru1234

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