応援コメント

邪馬台国畿内説による大和王権初期の王統譜について考古学的知見」への応援コメント

  • 興味深く読ませていただきました。
    邪馬台国が北九州か奈良かという論争ですが、僕なりにはこの視点にこだわり過ぎると本質を見失ってしまうような気がします。記紀に示される天皇の系譜がすべて正しいとは思いませんが、大きな時代の流れを考えるととても重要な文献だと考えています。

    鉄の扱いや稲作の技術は、当然ながら九州から機内へと伝播しました。ただ、鉄と稲作の伝播のルートは違います。鉄の交易は主に日本海側で行われました。輸送には船を使います。船は構造的に空では走れません。鉄を載せることで安定します。日本に渡ってきた鉄は北九州や出雲で取引されますが、船が朝鮮に帰る時は、代わりの荷物がないと走れません。対価として、翡翠を始めとする玉が使われたようです。翡翠は能登半島から北側に流れている糸魚川で産出されます。つまり、鉄と翡翠を経済的なバックボーンにした出雲という国が形成されたと考えます。

    対して米の伝播は、水田稲作とセットが考える必要があります。麗玲様に読んでいただきましたが、僕は神武東征は水田稲作に最適な奈良盆地を見つける旅だったと解釈しています。さらには、この水田稲作と前方後円墳を関連付けて考え始めています。

    第39話 前方後円墳ー再考
    https://kakuyomu.jp/works/16817330652866198637/episodes/16818023212179529637

    この大きな二大勢力である出雲と大和が連合した。記紀の大きな概要はこれに尽きると思います。ただ、記紀には明確に示されていないもう一つの一大勢力があります。それが、崇神天皇の弟にあたる彦坐王(ひこいますのみこ)です。

    琵琶湖を中心とする淡海から奈良盆地の北部にまで勢力を持っていたのではないかと考えています。奈良盆地と琵琶湖周辺の共通点は、稲作に最適な土地ということです。広大な土地と流れる川、それらの条件が合わさり巨大な経済圏を形成しました。

    大和王権は日本全国に屯倉を設置していきますが、淡海に設置されるのは正確な年代は今は思い出すことが出来ませんが、かなり後です。彦坐王にはじまった淡海は、大和王権と独立した形で国を形成していたと考えます。継体天皇は、この淡海方面から誕生しました。

    この大きな流れの中で、邪馬台国は何処かということですが、遺跡の発掘や時代考証から類推すると箸墓古墳が誕生した奈良の桜井市周辺が、僕は妥当だと考えています。記紀と照らし合わせると、卑弥呼はヤマトトトヒモモソヒメが順当ではないでしょうか。ヤマトトトヒモモソヒメは巫女であるし、日本の神道の起源にもなったと考えています。

    第31話 崇神天皇の宗教改革
    https://kakuyomu.jp/works/16817330652866198637/episodes/16817330667548158499

    神道という宗教の特徴は、祟り神をまつるという儀式です。祟り神が誕生した切っ掛けは疫病でした。この疫病とどのように対峙するかで、ヤマトトトヒモモソヒメと崇神天皇は苦労します。このことから、儀式的な産物として前方後円墳が誕生したのではないかと考えています。

    この疫病との戦いは、後の欽明天皇や敏達天皇をも悩ませ、仏教公伝を切っ掛けとして物部と蘇我の争いにまで発展します。僕なりには、崇神天皇から続く祟り神を祀ってきた旧大和王権と、大陸からやって来た仏教をバックボーンにした新大和王権である蘇我一族の衝突を描きたい。まだまだ勉強中ですが、ざっくりとそのように俯瞰しています。

    写真は整理したのち、アップしたいと考えています。
    とても参考にしています。ありがとうございます。

    作者からの返信

     コメントありがとうございます。

     時間の関係で、ご提示頂いたURLには後程お伺いいたしますが、先ず基本的な話として、記紀共通の資料として、『旧辞』『帝紀』というものがあったと言われており、『旧辞』は宮廷に伝わった物語や歌謡。『帝紀』は天皇家の系譜・陵(簡単な事績も含めるという説もあり)などと言われており、『日本書紀』では旧辞的な伝承が武烈天皇紀で終わっていることから、旧辞はこの頃から然程下らない継体・欽明朝の頃に作られ、帝紀もこの頃から作られたというのが津田左右吉氏以来の説です。その後、稲荷山古墳鉄剣の発見により、その銘文から地方豪族でも家系譜が伝わっているのだから大王家にも系譜が伝わっていなかった訳が無いという考えから、5世紀頃には帝紀の原型があったとも言われています。

     つまり、記紀の特に伝承(旧辞)部分の原型は6世紀頃に作られたものであり、それ以前の記事はアテにならないというのが主流の考え方です。これは津田史観の極論だとしても、応神天皇の時代に和邇吉師が字を伝えたというのが伝承だとしても、考古学的にも5世紀以前の文献資料が極端に少ないことから、系譜程度であるのならばとにかく、旧辞的内容までは記紀が何処まで事実を伝えられているのか怪しいのは言うまでもありません。

     崇神天皇紀の祟り神に関する記述も、記紀ではオオタネコの子孫について「三輪君」と書かれて「大三輪」以前の古い表記である事は指摘されていますが、これはこの伝承が天武朝以前に存在していたということを示し、旧辞迄遡る事は想定されるものの、三輪山周辺の祭祀遺跡群から出土する遺物は四世紀後半のものが数点含まれるものの、五世紀後半から増加し始め、六世紀がピークであることから、(『日本古代氏族叢書④大神氏の研究』鈴木正信)史実性が認められるのは早くても雄略天皇紀以降の様に思います。

     又、邪馬台国畿内説の批判論に関しては、本稿以外にも「卑弥呼は記紀に登場する人物か?」でも取り上げており、自分の結論としては記紀に卑弥呼にあたる人物は描かれていないと判断しました。そして、『日本書紀』の景行天皇紀が古事記の内容と大きく異なることから、景行の九州遠征が史実性のアテにならない旧辞以外の文献(恐らく履中天皇紀にある「四方志」)を基にしていると判断し、景行天皇紀や神功皇后紀には邪馬台国や狗奴国の末日が描かれているのかと思います。

    ・卑弥呼は記紀に登場する人物か?
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219091770654/episodes/16817330660819887192
    ・景行天皇紀と神功皇后摂政前紀は邪馬台国末期の状況の反映か?
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219091770654/episodes/16817330661616902616

    編集済
  • 動かしようのない巨大墳墓を基準に仮説を立てていく手法は、とても理に叶っているなぁと改めて思いました。
    問題は、宮内庁管轄とかで未だに「墳墓であることは確かだけど、誰のものかを確定させる調査の許可がなかなか降りない(だから推測しかできない)。なぜなら天皇陵(仮)とされているから墓暴きは不敬に当たる」的な考え方が現在も根強いことかなぁと。

    仁徳天皇陵だって未だにカッコ仮状態ですからね……あげく、大山古墳に名前変わるて何やねん……と畿内の一市民としてツッコミを入れざるを得ないという(苦笑い)

    邪馬台国論争に決着つける必要はないと思っていますが(両大学派閥のラップバトル(違)面白いので)、
    中国と交易するなら九州の方が地の利が良いし、力をつけて下関渡って、山陰や中国地方を経て畿内にやって来たら、エエ感じの集落規模を展開してるエエ感じの土地があったから小競り合いの末、腰を落ち着けたって流れの方が自然に感じるのです。

    作者からの返信

     コメントありがとうございます!

     そうですよねぇ……森浩一先生も生前に天皇陵(?)の発掘の許可を宮内庁に強く求めておられ、一時期は上手く話が纏まりそうにもなったことがあるらしいですが、未だに発掘が許可されないのが浮かばれないといいますか、個人的にも残念に思います。不敬に当たるというのであれば、神道的な儀式で鎮め賜う(伊勢神宮の新造の宮に神宝をお遷しする時に唱える祝詞などありますし)か、かつて石上神宮がフツノミタマと思しき古代剣(というか鎌みたいな刃ですが)を発掘した時に再び埋め戻したように、調査を終えた遺物を元に戻すといったことを行えば良いかとは思いますが、こんな考え方では素人的過ぎますかね……。

     邪馬台国についてはどうでしょうか……白黒はっきりさせて欲しいという気持ちもありますし、ハッキリしないからこそあれこれ想像する楽しみもあるという気持ちもありますしね(笑)なお、この稿を書いた時点では冷めていましたが、吉野ケ里で石棺発見のニュースをみて以来、時流に乗って邪馬台国ネタを何回もぶち込んでいます(変わり身の早さよw)

     後の稿(「神武天皇東征の史実性と英雄時代論」)でも触れますが、仰るように、北九州から日本の中心が畿内に移っていったのは考古学的にも認められるようで(『古墳とはなにか 認知考古学からみる古代』松木武彦 角川選書)、神武天皇の東征がこれを示すんじゃないかという説もありますよね。古いものではかつて考古学者にも多大な影響を与えた和辻哲郎氏も同様の主張をなさっておられましたね。
    ・『新稿日本古代文化』和辻哲郎 岩波書店
    https://dl.ndl.go.jp/pid/2983658/1/46