中級者向けの書籍?

中級者以上向け、市販のお勧めの書籍

 過去に初心者向けにお勧めの書籍をご紹介致しましたが、それでは物足りず、2冊目以降に欲しい翻訳・注釈書等をご紹介させて頂きます。


①『古事記注釈』(全八巻)ちくま学芸文庫 西郷信綱

 「小ネタ マヨワとツブラの非実在説」でもご紹介させて頂きました様に、古事記で最も詳しい注釈書のひとつであり学ぶ事も多くお勧めの書ですが、戦後導入したと言う方法論的な立場による研究があまりにも偏りが見られ、今となっては時代遅れである感が否めない事と、何よりも考古学的な知見が殆ど欠落しており、現在の常識からするととても受け入れられない見解も顕在しています。ですが、多くの研究者が参考文献に上げており、古事記研究のスタンダードな書であるかと思うので、本格的な研究を行うには下手な本を読むよりはこの書を読んだ方が良いかと思います。



②『日本書紀』(上下全二巻)監訳者・井上光貞 訳者・川副武胤 佐伯有清 笹山晴生 中公文庫

 「『古事記』の次は『日本書紀』を読みましょう」でご紹介させて頂いた、中公クラシックス版『日本書紀』を文庫サイズに二冊に纏めたものです。

 二〇二〇年に出版されたので、中公クラシック版よりも入手し易く、値段も手ごろで、何より文庫サイズで読みやすいのでおススメです。



③『続日本紀』(全四巻)直木孝次郎 他訳注 平凡社

 日本古代史研究では代表的な学者である直木孝次郎氏らによる『続日本紀』の現代語訳です。過去に度々取り上げました様に直木氏の歴史観は当方とは相容れないものですが、記紀に比べて圧倒的に少ない『続日本紀』関連の書籍の中では最も脚注が充実した内容かと思います。



④『古語拾遺』 斎部広成撰 西宮一民 校注

 訓読文・原文の他、175項目の訓読文補注の他、18項目の原文補注、解説文の内容が充実しています。

 記紀や風土記、それに万葉集などと比べて知名度が低い文献ですが、主に祭祀に関する独自の伝承の他、三種の神器が元々は剣と鏡だけだったのではないかと疑わせる記事などは『日本書紀』の継体天皇紀にもある等、記紀研究を補足するには欠かせないかと思います。


 神話研究に興味をお持ちの方で、記紀では物足りない方はこちらも参考になるかと思います。


⑤『日本書紀』(全五巻) 井上光貞・大野晋・坂本太郎・家永三郎 校注 岩波文庫


 本文、訓読文、頭注、補注、校異等からなり、内容は少々古いですが、井上光貞氏を始め、日本古代史、日本思想史、神話・民俗学、建築遺跡など様々な学問領域から二十四人に上る研究者が製作に関わり、『日本書紀』の入手しやすい研究書としては最も内容が充実しています。但し、専門家向けの内容なので理解するには相当の知識が必要となります。



 他にまだ未読ですが興味があるものとしては今年(2022年)、花鳥社で『先代旧事本紀注釈』が発売されました。『先代旧事本紀論 史書・神道書の成立と受容』で旧事本紀研究の実績がある工藤浩氏等による校訂本文、訓読、口語訳を付し、おまけに索引付きという関連書籍では最も充実した内容かも知れませんが、幾ら何でも17600円って高すぎじゃないですかね。。。

*追記 翌年購入しました。大分後の稿になりますが「記紀周辺の書の注釈・研究書」に極々簡単な解題を載せました。

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