小ネタ ミス・ユニバースの「左前」実は日本古来の着姿?

 最近(2021年当時)のニュースですが、ミス・ユニバース日本代表の渡邉珠理さんが着用した奇抜な衣装が物議をかまし、賛否両論らしいですね。(寡聞にして賛成意見を聞いた事ありませんが)


 ミス・ユニバースなるものがどんなに権威があるコンテストなのか知りませんが、他の国を見ても仮装大会みたいな奇抜な衣装が多いので、わざわざメディアで取り上げて目くじらを立てる事無くないか? と思いつつ、やはりあの姿は左前云々以前に余りにも品が無いし、日本人のアニメーターにでもデザインを頼んだ方がずっとマシなデザインになったのではないかと思いますが……しかし、アレを見たら日ユ道祖論のトンデモ支持者の方達はまだ自分等の主張を信じられますかね?


 特に、着物をイメージしたドレスで「左前」が可笑しいと指摘されていますが、製作者はあくまでもドレスという事で着物では無いと主張は平行線を辿っています。


 着物に思い入れがある方からすれば伝統ある日本の着物を模しておきながら左前はねーだろという事でしょうが、実は飛鳥時代以前の日本では左前の服装だった可能性が高いようです。


 例えば、藤原京期に造営されたとされている高松塚古墳の壁画である西壁女子群像に登場する女性の衣装は左前になっており、古墳時代の埴輪も左前の着姿で作成されています。


 また、『続日本紀』八巻によれば養老三年二月壬戌。(西暦719年2月3日)「初令天下百姓右襟。(初て天下あめのした百姓おほみたからに襟を右にしせしむ。)」⑴と書かれており、この時代に至ってから百姓の着装を右襟、つまり右前に定めているので、それ以前は左前が一般的な着姿であったと推定できます。


 その為、当エッセイで主に取り上げている記紀の時代では左前が普通だった可能性があります。つまり、ミス・ユニバースの左前は飛鳥時代頃まで遡れば批判には当たらないという強引な理論も成り立ちますので、あのドレスを作成なさったデザイナーの方も古代日本の事を勉強していて反論すれば見直されていた……訳無いですか(笑)


 そう言えば以前私がファンサイトを作成していたアカイイトと言う伝奇作品ではノゾミという幽霊のキャラクター(多分藤原不比等の娘と言う設定だったかと思われます)が死者なので左前と主人公には解釈されていましたが、彼女が死亡したのが西暦七百年直前の話だったので左前だからと言って死者を指すわけではないようです。


 古代史を舞台にした作品を描かれる方はくれぐれも服装設定にはご注意を……。


◇参考文献

⑴『国史大系. 第2巻 続日本紀』経済雑誌社 編

https://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991092/63

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