小ネタ 律令制下の官人の名前の呼び方

◇律令制下の名前の呼び方


 律令制において、官人の名前の呼び方には以下の様なルールがありました。


・大臣級の高級貴族→役職名(例:左大臣・右大臣)

・三位以上→うじまえつきみ(例:石川卿・大伴卿)

・四位→氏+名+かばね(例:大伴家持宿禰)

・五位→氏+姓+名(例:山上臣憶良)

・六位→氏+名(例:高橋虫麻呂)


*参考『図解雑学 楽しくわかる万葉集』 中西進=監修 ナツメ社 209ページ


 『万葉集』では若干例外があるものの原則的には上記のルールで人名を表記しています。律令制前の『日本書紀』の表記では同じ人物でも氏+名+姓と氏+姓+名の表記が混同しています。


 例えば『日本書紀』巻十三允恭天皇十一年では「大伴室屋連」で雄略天皇即位前紀の記事では「大伴連室屋」と書かれています。


 室屋の場合、雄略天皇即位前紀では大連に昇格するので氏+姓+名の表記はおかしいですね。


 律令制以前は呼び方のルールが適当だった可能性もありますし、稲荷山古墳の鉄剣銘文「乎獲居臣をわけのおみ」や履中天皇二年十月の「圓大使主つぶらのおほみ」表記などから推察されるように五世紀頃はまだ氏を表記する習慣、あるいは氏そのものが無かったらしい事から、氏族表記以前の人名を後世の意識で書かれたとしたら「大伴連室屋」表記は益々奇妙に感じますね。


 編纂者によって意図的に貶める意識があったという説もあるようですが、例えば廃仏派だった物部尾輿の「物部大連尾輿もののべおほむらじおこし」表記はとにかく、救国の英雄ともいえる功績抜群の物部麁鹿火もののべのあらかひまで「物部大連麁鹿火もののべのおほむらじあらかひ」表記であることは違和感しかありません。

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