『古事記』の次は『日本書紀』を読みましょう

 前回紹介させて頂きました『古事記』の現代語訳を読んだ後は『日本書紀』を読みましょう。


 日本で現存する最古の歴史書は『古事記』である事は言うまでもありませんが、七世紀以前の古代史を学習する際にもっとも重要な歴史書は『日本書紀』の方です。『古事記』だけ読んで古代史を理解しようとしても飛車落ちになります。


 理由は『古事記』よりも圧倒的に記載内容が豊富な事です。


 前回述べましたように『古事記』では神代から第33代天皇推古までしか記述が無く、せいぜい七世紀前半までしか記事がない上に、説話的部分が第24代仁賢天皇の時代までで終わっており、以降は所謂「帝紀」(別稿で詳細について記述予定)的な記事のみなので、七世紀の歴史を研究するには『日本書紀』は避けて通れません。


 また、記紀で共通する記事でも時代や場所、名前が違うなど矛盾が生じている部分が多数あるので両者を比較して検討する必要もあります。


 以下に初学者にお勧めの書籍を挙げてみます。



◇『日本書記 (上・下)』 全現代語訳 宇治谷孟 講談社学術文庫


 正直、『古事記』に比べ初学者向けにお勧めできる『日本書紀』は少ないです。この書籍は現代語訳が収録されていますが、脚注が少ない為、専門用語を理解するには別に解説書や事典などを合わせて読む必要があります。



◇『日本書紀 Ⅰ~Ⅲ』 監訳者・井上光貞 訳者・川副武胤 佐伯有清 笹山晴生 中公クラシックス


 こちらは日本古代史研究では代表的な歴史学者・井上光貞氏が監訳をされており、脚注の内容など宇治谷氏の書籍よりは詳しいので、勉強すると言う意味ではこちらの方をお勧めします。



 記紀の内容をダイジェスト的に読むのならば『先代旧事本紀』を読むと言う裏技もありますが、記紀に無い伝承やアレンジが多数含まれるので、初学者がごちゃ混ぜにならない様に最初は記紀からしっかり読んだ方が良いです。


 上記書籍を読んだ後のステップとしては岩波文庫版の『日本書紀』を読んでも良いのですが専門用語の嵐なので初学者は間違いなく挫折します(苦笑)


 岩波文庫版の『日本書紀』は内容が古いとはいえ間違いなく一番内容が充実した研究書なので、何れは読んで欲しいのですが、その前に記紀と比較的近い時代に作成された国内外の文献を読み知識をつけましょう。


 次稿では記紀の理解を深める為、周辺の文献をご紹介致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る