不終春

@tamanikizu

第1話

 授業中に僕は消しゴムを噛み締めている。ギシギシと音をたてて歯を押し返そうとする彼らを奥歯の方に送り込んで、本格的にプレスする。すると少し酸味のある体液をにじませながら、硬いゴムの繊維はほぐれていく。思っていたよりかはマシな味だなと思いながらふと先生に目を向けると、ハゲゾンビでおなじみの中川先生が一重のつぶらな瞳で僕を見ている。案の定10秒後には僕の机の前に到着して、手を口の前に出してきた。望み通り口の中の白い物体を開放してやると、ハゲゾンビは面食らったかのような顔でじっと見つめる。当たり前だろう、僕がガムを噛んでいると思って来てみたら、僕が出したのはハイチュウもどきの消しゴムくんたちで、彼の手の中でシュワシュワ音をたてているのだ。僕だって食べたくて食べてたわけではない。そもそもなんでこんなになったかというと、今僕の隣でケタケタ笑ってる創と涼子のせいだ。パピコゲームなんてくだらないゲームをどっからか仕入れてきた創が僕と涼子をまきこんだ。パピコとはおそらくみんなも知っているだろうあの氷菓子のことで、それのCMに出てくる宣伝用のゲームらしく、ルールは簡単で一番最初に山手線ゲームと同じ要領で「パピコゲーム?いぇーーい」とコールし「パピコ」と誰かを指差しながらパンパンと手を叩く。続いて当てられた人が「ピピコ」と返しポピコまで行くと次は「パンパピコ」「ピンピピコ」、、、「パンパンパピコ」と続いてくのである。そして噛んだり詰まったりした人が負けというゲームで僕は見事「ぺんぺんぺんぺんペピコ」で噛んでしまい、消しゴムを噛まされてたわけである。

 口をあわあわさせながらハゲゾンビは反省文を五枚書かせてきた。まあ罰ゲームはここまでセットなんだと腹をくくり、その日の放課後かかされた。




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