第3話
奇妙な夢をみた。
私は広い庭のある縁側で、そばにいる年上の女性と庭を
夢から覚めて私はぼうっとしていた。
これだけでも十分奇妙だったのだけれど、まだ続きがあった。
私はそれからその夢のことはすっかり忘れて、仏教関連の、自分の興味のあることを、いろいろ調べていたのだ。その本のなかには、仏教に関連がある物事や、言葉の説明が載っていて、それにはヴェーダとかウパニシャッドとか、昔、霜ちゃんから聴いた覚えのある単語が出てきて、興味を惹かれた私はそれについても目を通していた。古代インドのバラモン教とか哲学思想だとか一元論だとかいろいろ出てきて、ちんぷんかんぷんだったが、ふ~ん、と思いながら眺めていたそのとき、シュルティという言葉が出てきて、あれ、これもどっかできいたことがある、と目を留めた。それから、ああ、夢だ! と思い出して、ドレッドヘアのファンキーな導師を思い出し、思わず吹き出して笑いそうになった。でも、知らなかった言葉が、ちゃんとこうして意味のある言葉だったと知ると、不思議な気もした。奇妙な気分でついでにそのシュルティという言葉の意味を調べると、それは天啓によって書かれた文字の書のことを意味していた。私は言葉の意味を見て、目を丸くした。奇妙な夢と、偶然の一致が重なったのか、でも、ちゃんと意味を持った言葉だった。そして、私にとっても意味を持った言葉だった。
文字にして天国への手紙を書くこと、やっぱりそれには、何か私には大切な意味のあることなのだ、と改めて思った。ある日突然、死にかけていた私の心に、天から降ってきたくもの糸のように細くきらめく
奇妙な不思議な気持ちで、私はこの興奮をどうしても人に伝えたかったので、思わず
佑はファンキーなヨーガ行者の導師がものすごく気に入ったらしく、後々まで、おまえのグルは元気か? yo! とからかってきた。奇妙なあの夢はあれ一回きりで、インパクトのあるドレッドヘアのグルはもう現われてくれなかったけれど、私はなんだか嬉しかった。これでいいんだ、正しい道をあなたは進んでいる、なんとなく彼は不思議な言葉と夢をとおして、そういうようなことを私に言ってくれたような、そんな気がしたからだった。
でも、夢とはいえ、我ながら自分の想像力はすごい。なんで、よりによってあのグルだったのだろう? まったく自分でもわからない。支離滅裂な夢はよく見るけれど、本当になぞだった。
夏がすぎ秋が来て、私はフルタイムで働いていた。一年毎更新する契約社員で働くことにしたのだ。生活のリズムにも慣れてきた頃、私はある占い師の元へ取材にいく
郊外の住宅地にある一軒の家の前で沢渡さんは車を停めた。占い師のオフィスは普通の民家の一室だった。自宅の一室を使ってやっているらしい。インターホンを押すと、中から出て来たのは普通の年配の女性だった。通されたのは普通の家の、ちょっと広めのリビング。開放的な感じで、明るく、観葉植物が窓側にひとつ置いてあり、真ん中にソファとテーブルの応接セットがある。壁には大きな棚があったが、後は何もない。これといって、飾りもそっけもない。テーブルの上に筮竹と小さな木箱、本がそろえて置かれていた。
なんとなく私もモニターの女の子たちも、拍子抜けしていた。いかにも、という感じの占いの館を想像していたわけではないけれど、これではなんだか味も素っ気もない。室内の清潔な感じや簡素さには好感を抱いたけれど、もうちょっと神秘的なムードの演出をどこかで期待していたのだ。
「本来なら一度に一人しか通さないので、他に待合室はありません。ここで他の方にも聞かれてしまう中でもかまいませんか?」
占い師である普通の主婦のような女性は、沢渡さんにそう訊ねていた。
「取材なので彼女たちも了承済みです」
彼女はうなづいて、三人を自分の対面のソファに並んで座らせた。私と沢渡さんは彼女たちと側面の位置に置かれた、窓際にあるふたつの椅子に促され、腰掛けた。あらかじめFAXで送っていたそれぞれの相談者の質問シートに目を通しながら、彼女は
「どなたからにします?」
と、目の前の三人に訊いた。
三人は目を合わせて、真ん中に座っていた子が、「じゃあ、はい、私から」と右手を上げた。占い師の女性は名前を確認して、彼女に相談内容の確認をしてからすぐに占いに入った。筮竹を手に持ち、その中から一本取り出して、シートに番号を書く。それから本を開いて確認して、木箱からサイコロ状のものを机に出しそれを動かして、しばらく本を見ては何かを書き込む、ということを繰り返した。
そうして、顔を上げて「では今から拝見しますね」と言って、真ん中の彼女をじっと見つめた。相談者の女の子はちょっと所在なさそうにしていた。時間にして一分半くらい。彼女は「はい」と短く言ってから、彼女へ相談内容についての結果を話し出した。友人関係の悩みについての相談だった彼女は、目を丸くしたり、すごい、と
次は右隣の女の子だった。それまでスムーズだった占いが、ここから雲行きが怪しくなった。まず、質問シートの内容の確認から、なんとなくうまくいかなかった。彼女の答えは要領を得ず、説明が長いわりに微妙に話がずれていた。おまけに核心に迫ろうとすると話があちこちに飛ぶ。ここまでで既に十分以上経過していた。なんというか、見ていて、とても奇妙だった。かく乱するようにボールをあちこちあらぬ方向へ打ち返すようだった。占い師の女性は少し厳しい態度になって、彼女に質問への答えを彼女がはぐらかしていることを指摘した。要領を得ず、占い師側からの確認のための質問と受け答えが微妙に食い違う彼女と、コミュニケーションでの支障がまずあって、ここが難航した。なんとか占いに入ってからは、かみ合わない会話が何度かあって、時間はかかったものの、結果を聴いた彼女は、感じ入るようなところがあったのだろう。彼女も感嘆の息をついていた。結局ここでかかった時間は一時間近くだった。
占い師の女性には少し疲れが見えたが、すぐに三人目の相談者に移った。質問シートの確認のための質問を始める。すると、ここでは前よりも更に難航した。一向に話が進まなくなってしまったのだ。この相談者の彼女とのやりとりに支障があるのはその前の彼女と同様に早い段階でわかったが、相談者の彼女自身もそれを察知したのか、急に直前になって相談内容を変えますと言い出した。それで簡単な相談内容を伝えたのだが、本当にそれでよいのか占い師側から確認をするため質問すると、要領を得ない。説明が長いわりに不明瞭で、彼女自身にも迷いがあるため、こちらはぬかに釘のようだった。相談したいのかしたくないのか、こちら側から見ていてもよくわからなかった。核心に踏み込もうとすればするほど迷いのぬかるみにはまっていくようだった。黙ってみていた私と沢渡さんもさすがに困惑していた。
質問の確認だけで、既に四十分以上経過していたので、
「一旦休憩しませんか?」
と、見かねた沢渡さんがストップをかけた。
占い師の女性は
「お時間だいじょうぶですか?」
予定の時間を既に一時間以上オーバーしていたので、沢渡さんは彼女に訊いていた。女性は「あと一時間くらいなら大丈夫です」と言ってから、キッチンへ行きお茶を入れて私たちに持ってきてくれた。ハーブティで、リラックス効果のあるハーブが入っていた。
「私もこのハーブのお茶好きです。よく飲みます」
私がそう言うと、女性は少し微笑んだ。
三人のうち一番最初に相談した真ん中の女の子が言った。
「すごいですね。私しか知らないことわかっちゃうなんて。びっくりしました」
「私も」
右隣の二番目に相談した女の子が頷いた。
「ちょっと厳しい態度になってしまって、ごめんなさいね」
占い師の女性は、二番目の子にそう言ってあやまっていた。
「いえ。でもちょっとこわかったけど。相談してよかったです。すごい、本物だった!」
素直なのだろうけれどちょっと失礼な彼女に、女性は静かに微笑んでいた。
三番目の子は静かにお茶をすすっている。
「疲れた?」
女性は三番目の子にそう訊ねた。
「すみません、なんだかわけがわからなくなってきちゃって」
三番目の子は気弱そうな笑みで答えた。女性は彼女としばらくやりとりを交わしていた。日常会話での二人のやりとりはそう問題もなく、十分ほど休憩してから占いは再開した。質問の確認の段階からの再スタートで、さっきよりは会話はなめらかなものの、占いにはなかなか進めないのは同じだった。要領をなかなか得ない彼女の話を、今度は質問をあまり挟まずに女性は聴いていた。結局占いには入れないまま時間がきてしまった。時計を見て沢渡さんは、「時間だわ」と言った。
女性は少し息をついて女の子に言った。
「ごめんなさいね。時間がなくて」
女の子は「すみません」と申し訳なさそうに頭を下げていた。
本当は三人の相談の後インタビューをするはずだった沢渡さんは女性に訊ねた。
「すみません、後日またインタビューの時間を取っていただけませんか?」
「明後日の午後なら。こちらこそ申し訳ありませんでした」
「いいえ、では、社に戻ってからまたご連絡します。今日はお時間を頂いてしまって申し訳ありませんでした。本当にどうもありがとうございました」
沢渡さんと女性は互いに頭を下げて挨拶を交わした。
「あなた、大丈夫?」
女性は気遣うように三番目の相談者の彼女に声をかけた。
「はい、すみませんでした。お時間をとらせてしまって、ごめんなさい」
「いいえ、こちらこそ、ごめんなさいね。あなたの身近に、誰か信頼できる人はいる?」
女性は彼女にそう訊ねた。
「え? はい」
「じゃあ、今日はその人に何かなんでもいいから自分のことをひとつは話すこと。いい? 必ずそうしてね。そうして、それをなるべく続けるの。何でもいいから毎日ひとつは自分のことを話すようにしていってください。それが難しければ何かに書いてもいいわ。日記でもいいから」
女性はそう言った。
女の子は頷いていた。
「ひとの心を
帰りの車の中で、沢渡さんは結局相談できなかった女の子に気遣うように声をかけた。
「ごめんね、結局相談できなかったね」
「いえ、いいんです。こちらこそ、ごめんなさい」
「大丈夫? 相談したかったんでしょう?」
一番目に相談した子が心配そうに訊いた。
「そうだけど……でも、最後にアドバイスはもらったから」
「あれだけでいいの?」
二番目の子が訊くと、彼女はうん、と頷いていた。
後日改めてインタビューに伺ったときも、私は同行した。いろいろこちらから質問してそれに答える女性とのやりとりの中で、沢渡さんは一昨日の占いのことについても触れていた。相談を受けるって大変なんだなあ、というのが率直な私の感想だった。とても私には無理だ。特別な能力のあるなしにかかわらず、こういうことはとてもしんどそうだ。結局コミュニケーションの問題なのだな、ということがよくわかった。
質問→返答 という単純なやりとりなのに、意図のようなものを取り違えて、ズレが生じる。これは双方向のもので、自らの考えに固執していると、入っていかない、聴けない、となるのだそうだ。
何(What)を訊きたいのか? という、目的確認の質問に対して、何故(Why)訊きたいのか、の理由を長々と答えだす相談者。こんな小さなズレから、どんどん食い違いが起きてきたりもする。
占い師の女性は申し訳なさそうに私たちに語った。
「私は少し時間配分を考えて焦っていました。その私の余裕のなさが、相手を刺激してしまって、あとはどんどんずれていく感じでした。二番目の彼女の時、なかなか質問の焦点が定まらない彼女に私は、どこかで少し苛立ちを感じていました。それが敏感な彼女にも伝わったのでしょう。彼女は私の
女性の言葉に、私は「ああ…」と、思わず納得した。沢渡さんが「なに?」と私に訊いたので、私はちょっと気まずい思いで、自分を見つめる女性と沢渡さんの顔を見た。女性は私を見つめて、話を促すように頷いたので、私はちょっと考えながら言った。
「二番目の彼女はあなたの質問に対して、微妙に角度を変えたような、要領を得ないまわりくどい返答ばかりしていました。
「そうだと思います」
女性は静かにそう言って、恥じ入るように視線を伏せた。
「でも、傍から見ていた私も、彼女に正直苛立ちを感じていたから……仕方ないのじゃありません?」
沢渡さんが言うと、彼女は静かに、でもきっぱりと言った。
「その場の人々の思念は、口にしなくても微妙に空気を振動させて伝わっていきます。私たちはひとつの舟に乗っていたようなものです。船頭は私でした。なかなか航路が決まらず、彼女に感じた私の焦燥が、一緒に乗っていたみんなにも少なからず影響しました。なぜなら船頭は私だったからです」
私は納得しつつも、うわあ、これはたいへんだなあ、と思っていた。ものすごく疲れる。おまけにとても面倒だ。精神的な強さが要求される仕事だ、と舌を巻いた。
「三番目の彼女もそれに影響されたのでしょうか?」
沢渡さんは率直に彼女に訊ねた。
「はい。二番目の彼女以上に、彼女は敏感でした。自分の相談に入る前から、少し怖がっていました。私にもそれがわかっていたのですが、私自身も精神が少し乱れていました。なので、彼女はうまく私へ伝わらないと察知した途端、相談を無難なものへと変えようとしました。でも、確認をすると迷ってしまう。もともと彼女自身も問題を抱えすぎていたようなところもあったようでした。神経が
「なるほど」
沢渡さんはそう言った。
「たいへんなお仕事ですね」
私は少し同情的になってしまった。とても自分には務まりそうもない。聴いているだけで疲れてしまったからだ。
「私に与えられたお役目ですから」
短く彼女は答えた。
「お仕事をされる上で、一番ご苦労されることはどういったことですか?」
沢渡さんは質問した。
「自分を律することですよ」
そう言って、彼女は、はあ、と息をついた。
私も沢渡さんもちょっと笑ってしまった。
「みんなそうですよ。私は特に。だから失敗ばかりです」
沢渡さんが言って彼女と目を合わせて、お互いくすっと笑った。
「でも、あなたのお仕事のほうがずっと大変かもしれませんね」
沢渡さんがそう言うと、彼女は、いいえ、と笑って
「みんな同じです」
沢渡さんは彼女に訊いた。
「ご自身を律されることについて、もう少し、詳しく伺ってもいいですか?」
彼女は頷いた。
「律するということは、つまり、心を常に鏡のようにきれいに映し出せる状態にして、磨いておくこと。そこに映し出された姿をよく見極めていくということです。正邪優劣などの自分の判断をはさまずに、ありのままの姿をよくみつめることです」
「興味深いですねえ」
「相談者とそれを受ける私は互いに影響しあっています。その双方向の作用を、相談者が解決したい問題のために働かせるのも私の頂いた役目なので、光を反映させられるよう努めます。霊視で視るのは、その相手の持っている光と可能性・潜在力です。私が解決する力を与えられるわけではありません。相談者が問題を解決する力を相談者自身がもっていることに気づかせるための、鏡の役割を正しくできるように、私はただ努めるだけなんです」
「鏡ですか、なるほど」
「もしくはジョイントのようなものでしょうか」
「接続、ですか?」
彼女は頷いた。
「私の仕事は、伝えることです。でもそのためには、まず伝えられるものをきちんと受け取る必要があります。その上で、必要なものを伝えます。水の流れを想像してください。上から流れる清らかな源流に入って、下で待っている方の必要な部分の水を流す、パイプの役目を私はします。私は水を流すパイプであり、ジョイントの役割をします。その接続部分に、ズレ、ゆるみが生じると、流れるべきものがきちんと流れず、届くべき場所に届くべきものも届かなくなります。それだけではなく、よけいなものも一緒に流してしまうことも起きてきます。流れてくるものを流すパイプ自身をきれいにしておくこと、きちんと接続すること、が大切になります」
「なるほど。面白いですね。鏡のお話もパイプやジョイントのお話も、とても興味深いです。形は違いますが、私も伝えるのが仕事です。とても興味深いお話です」
沢渡さんは頷いて感心していた。
「私の仕事についてお話ししましたが、これは、基本的にコミュニケーションについてのことでもあるので、共通するかもしれないですね」
「そうですね。お話を伺うことができて、とてもよかったです」
沢渡さんが言ったので、私も隣から口を挟んだ。
「あ、私もです。お話が聴けてよかったです」
「そうですか? 少しでもお役にたてたなら嬉しいです。私も今回このお仕事ができてよかったです。とても学ぶことが多かったです。いろいろな意味で」
少し照れて彼女は微笑んだ。
「トラブル案件を持ち込んでしまって、なんだか申し訳なかったなあと思っていたんですけど………」
沢渡さんがそう言うと、彼女は笑って言った。
「いいえ! 申し訳ないのは私のほうです。でも、その分、私は学ぶことが多かったです。感謝しています」
「そうですか?」
「ええ。今回三人の占いを同時に受けさせていただいて、いつもと違う環境だったこともあって、いろんな要素が関わったのですけれど、おかげで一対一のときでは気づけなかったことが、たくさんありました。自分がまだまだ未熟で失敗が本当にたくさんあったのに、気づけました」
「差し支えなければ、それも伺っても?」
沢渡さんが遠慮がちに訊ねると、彼女はにっこりして言った。
「私の失敗でお役に立てるなら、いくらでも」
「すみません」
「今回私は、場を共有していることについて深く気づかされました。それは、互いに影響を与え合いながら、その中で働く力の動きも含めてみていくことの大切さ。自分もその中にあるひとつの要素であることに、謙虚になること、です」
「謙虚になる、ですか?」
彼女は頷いた。
「相談に焦点をあてていく過程のなかで、相手の混乱を引き起こしたのは私の対応でした。私は問題に焦点を当てて次に進むことにこだわりすぎたかもしれません。言葉の端や表現、当初の問題、事象にとらわれて、見失ったり、見誤ったりもしました。だから食い違いが起きたり、相手の混乱を招いたのだと思います。食い違いが起きると、清らかな流れも多少は流れますが、食い違った分だけ、汚いものがひっかかってくるのです。それを受けることになります。それは相手を苦しくさせてしまいます。相談者は問題を抱えてきているのに、さらに苦しい思いを受けることになります。それによって相手の光を求める気持ちさえも失わせてしまっては、
「なるほど……」
「相談も生き物です。内容がきちんと熟成できていないものは、一緒に熟成させるのを手伝うことがまず必要かもしれません。答えを出すことが全てではないからです。問題を問題として把握し、認識したところから、解決は始まります。互いに理解を深めることが大切なのかもしれません。聴いて、調整したり、相談内容自体が変容していくプロセスも含めての、チームワークです。相談者の問題解決のためのお手伝いをするのが『役目』という芯がぶれなければ、柔軟に調整していけるはずです。相談を相談として熟成させていくことも大切な仕事のうちだと、私は今さらながら気づかされました。一つ一つの段階に意味があるのです。当たり前ですけれど。次へ進むための足がかりなだけではなく、その段階自体にきちんと意味があります。ひとそれぞれの段階があり、そのひとつひとつが大切なもの、あるべきものとして存在しています。そして私もそれを相談者と共に共有しているのです。本当に謙虚さはとても大切です。
沢渡さんは
「とても、興味深いお話です。さらっと何かとても大切なことを、言われた気がします。今回本当に取材させていただけて、よかったです。おかげで伺ったお話を、何度も確認することができます……」
そう言って、テーブルの上に置いていたボイスレコーダーを見つめた。
占い師の女性は、はにかむように微笑んで言った。
「私も今回のお仕事をさせていただけて、よかったです。どうもありがとうございました」
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