超超超運命の人見つけました!!

GK506

超超超運命の人見つけました!!

 それは、幾つもの偶然が重なった結果であった。


 気分が乗らなくて午後の授業をサボり、ゲーセンで時間を潰した後で、特にコレといった理由は無いけれど、何となくいつもと違う道を歩いていたら、僕は彼女に出会った。


 見た目は直球ど真ん中ストライク。


 そして何より僕の直観が言ったのだ。


 彼女こそは僕の運命の人であると。


 ナンパなんてした事は無かったけれど、ここで彼女に声を掛けなければ、きっと僕は一生後悔するだろうと思った。


 想いが体を動かして、気付けば僕は、彼女に声を掛けていた。


 『あっ、あのぉ~。そっ、そのカバンの人形ジミーだよね?』


 ジミーとは、アメリカ発のアニメ映画の登場人物で、世界的な人気を誇るずんぐりむっくりした気の良いおじさんキャラクターである。


 『ええっ、そうなのよ』


 彼女はいぶかしむ目を僕に向けながらも、クールに答える。


 『ほっ、ほら。見て、僕もジミー人形持ってるんだよ』


 僕は、カバンにつけたジミー人形に、鍵につけたジミーキーホルダー、そしてカバンに詰め込んだ大量のジミーグッズを彼女に披露する。


 本当は、今日も穿いているお気に入りのジミーパンツを見せたかったのだけれど、流石に街中で、それも初対面の女の子相手に、それはまずいだろうから、仕方なく断念した。


 『あっ!?これ、世界限定100個のゴールドジミー人形。私初めて生で見たのよ。凄いのよ。輝いているのよ』


 彼女は、僕のカバンの中で輝きを放っているゴールドジミー人形に、興奮を隠しきれない様である。


 あれっ?ちょっとまてよ。


 さっきから、気になっていたけれど、もしかして……。


 『あっもし良かったら1個あげようか?僕ゴールドジミー人形3つ持ってるから』


 『本当!?嬉しいのよ!!頂くのよ!!ありがとうなのよ!!』


 ゴールドジミー人形を渡してやると、彼女はまるで小さな女の子の様に飛び跳ねて喜んだ。


 やっぱりそうだ。


 語尾が【のよ】だ。


 まさか、見た目が直球ど真ん中ストライクな上に、僕の大好きなゴスロリファッションに身を包み、更に僕の好きな語尾ランキング堂々1位の【のよ】を自然い使いこなす女の子がこの世界に存在するなんて。


 しかもその女の子が、今、僕の目の前に立っているのだ。


 夢じゃないかしら?


 『ねぇ、ちょっと僕の事殴ってくれない?』


 『何でなのよ?』


 『いいから』


 ドスッ。


 彼女の拳が僕の鳩尾みぞおちにめり込んだ。


 気持ちい……、いやっ、痛い。


 やったぁ、夢じゃない。


 もうこれアレじゃん。完全に運命の恋始まってるじゃん。


 春って突然にやって来るんですね。


 おなかをさすりながらにやける僕を、彼女が怪訝けげんそうな表情で見つめる。


 『あの、僕、田多野ただのはじめ。君の名前は?』


 『私は花山院かさのいん愛璃朱ありすなのよ』


 うそぉ~ん!!


 僕が人知れず描いている漫画のヒロインと同姓同名じゃないですか!?


 もうこれ決まり、もう花山院愛璃朱ちゃんは僕の運命の人でございます。


 『あのぉ花山院さん』


 『何なのよ?』


 『よっ、よかったら、僕とお付き合いして頂けませんか?』


 やっ、ヤバい、言っちゃった。


 心臓が口から飛び出しそうだ。


 でも、大丈夫。


 僕の直観が言っている。


 彼女こそが僕の運命の人なのだと。


 『ごめんなのよ。私、子供の頃からの許嫁がいるのよ。また来世で出会えたらお付き合いしましょうなのよ』


 それじゃあと言うと、花山院さんはゴールドジミー人形をカバンにしまって、鼻歌混じりに去っていった。


 雲一つない空を見上げて僕は思う。


 直観って当てにならないもんだなぁ。



        おわり


 

 

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