性犯罪を犯したことで、42歳にして少年刑務所へと収監されることとなった主人公。新人教育を経て雑居房へ送られた彼は、刑務所ならではの陰湿な慣習の洗礼を受ける中で開眼する。生きゆく術と、意外な自由に——!
少年たちの中に大人がひとり、しかも舞台が塀の向こうの刑務所となれば、それはもう異世界トリップですよ。一般社会とはまるで違う理(ことわり)があり、生きていくには高い適応能力と行動力が要求されるわけですから。
主人公はこの作品の中でクレバーに学び、一般社会とはまるで違う閉鎖空間で生きていくわけですが……丁寧な用語解説を盛り込みつつその生活の流れを追っていく構成によって、読者は塀の中の有り様をするっと理解できるのです。
そして主人公が出遭ういろいろな少年受刑者たちですよ。この多彩なキャラクターがまた刑務所ライフのいいスパイスになっていて、たまらなくおもしろいんです!
惹き込まれずにいられない、現代ドラマという名の異世界ファンタジー、はっきり言って最高です!
(「人、匂い立つ」4選/文=高橋 剛)