深夜の散歩

ペコロス

何度も読み直した漫画を本棚に戻す。

スマホを見る。

何の通知も来ない画面。

気が付けば日は変わっていた。



まだカーテンも無く光が射し真っ白に見えた

この部屋。

今はヤニで薄っら黄色くなってしまった。


重い腰を上げ冷蔵庫の中を覗き込む。

使いかけの調味料しか入っていない空間を

見て。

重いため息を吐く。


空き缶の飲み口に詰まった

煙草の吸い殻の1番長い物を掴み

100円ライターを持ち

何日も洗ってないスウェットの上に

ダウンだけ羽織り

穴の空いたサンダルを履き

外へ出た。


生命感を感じさせない暗く、静寂な街。

何も考えずに歩き出す。


歩く度に目の前に映る白い息。

雪でも降りそうな程冷たい空気が体を刺す。


ふと空を見上げる。

丸い月が白く見えるほど眩く照らす。


そのまま立ち尽くす。

そしてただ歩き出す。

誰も自分の事を知らないこの街を。


指に挟んだ吸い殻に火を点ける。

強く輝くも儚い炎が手元を照らす。


深く吸い込み

深く吐き出す。


凍てつく空気に

白い煙がモワァァーと広がる。


吸い殻を人差し指で挟み

中指で弾き

ピーンと飛ばす

数メートル先で赤く光る。


その光に向かって歩き

その光を踏み潰す。

また空を見上げる


「あれも踏み潰せたらなぁ。」

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深夜の散歩 ペコロス @pekopekopekoros

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