直観

水谷一志

第1話 直観

 私は直観を信じる。

多くの人が左を走っているかもしれない。それなら私は右側を走る。

それが私の生き方。

そんな生き方を、私は貫きたい。


 昔からそうだった。

私は人と違っていた。

人が興味を持つものに全く興味を持たない。

人が向く方向と反対の方向をついつい向いてしまう。

人は人、私は私。

それで嫌な思いをしたことも多々あったが……、私は意に介さない。

私は私で、他の誰でもない。みんなと同じ人生なんてつまらないし意味がないとさえ思う。

だから自分自身を曲げないことが大事だと、嫌な気持ちになった時は自分に言い聞かせてきた。

そう、辛いことがあった時もそうやって頑張って耐えてきた。


 それでも嫌なことはたくさんある。

例えばいじめ。私は中学、高校時代、ひどいいじめに遭ってきた。

それはここでは言えないようなことまである。

とにかく思い出したくないこともある。

だから私は環境を変えたかった。

そして、大学に入る時地元を離れることに決めた。


 新しい環境下。それでも私は嫌な思いをする。

でも……、こんなの昔に比べたらどうってことない。

実際いじめはなくなっているし、まあ無視されることはあったが友達も徐々に増えてきた。

そう、ここは地元の田舎と違って大都会。

いろんな人がいるし、考えの違う人だって多い。

そんな環境が、田舎とは違って当たり前。

……そのことが、私にとってどれほど救いになったことか。

そう、私はこの新天地を心から愛している。


 そうだ。やっぱり私は直観を信じるタイプ。

空気は読めない、いや読みたくないし自分の意見ははっきり言いたい。

たとえそれが間違っていたとしても、言わなければ成長はない。間違っているかどうかも極端に言って分からない。

それでたとえ私がその場で負けても、次につながる、あと後悔しないのは直観を信じているから。

そして私の新天地では、そんなことが実行しやすい。


 ……でも私は考える。

「私は将来、何になりたいんだろう?」

「どんな仕事をして、どんな自分になりたいのかな?」

せっかくここまで来たんだ。将来はビッグな仕事につきたい、なんて思う。

お金だってできたらたくさん欲しい。やっぱり人間だから欲はある。

ここ、新天地での経験を活かす?

今学んでいることを活かす?

……多分活かせる場面は多々あるだろう。

ただ、もしかすると空気は読まないといけないかもしれない。

そうなったら嫌だな。

でもここに留まったらそんなことないのだろうか?

とにかく、自分なりに考えて、考えて……。そして思ったこと。私は自分らしくいられる仕事がしたい。それが私の現時点での結論。


 さて。

そう言えばここでは感覚が大きく違うことがある。

……でもとにかく私は直観を信じる。

今までみんな左側を走るのが普通だった……なら、私は右側を走る。

そう、それが私にとっての普通。

ってか今の普通。

さて、私の新しい家までもう少し。

ここではみんな【右側通行】。

私にとっての新天地、【アメリカ】ではそれが普通なのだ。 (終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

直観 水谷一志 @baker_km

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ