番外編5 ロベリアとギルバーツ
「準備できたか?」
「できたよ」
「それなら行くか」
自宅にてロベリアとギルバーツは荷物をまとめていた。それは、家を出て行くための準備ではない。4日家を空けるための準備だ。
数日前、用事でギルバーツの兄であるナイン・エレニーがアフェリア王国に来た時に言ったのだ。次の休みの日にエレニー王国の城に遊びに来てほしいと。
だから、仕事が終わり返って来たギルバーツを見てロベリアが最終確認をしていたのだ。今から出れば、夕方にはつけるだろうという考えではあったが、2人は翌日の午前中に出るつもりだった。
しかし、少しでも長く一緒にいたいという言葉に早めに出ることにしたのだ。今まで一緒にいることができなかったのだから、長く一緒にいたいと思うのは仕方がないことだろう。
その気持ちがわからないでもなかったため、ギルバーツは断ることをしなかったのだ。4日分の着替えだけを入れて、荷物を持って2人は玄関へと向かう。
これから馬車を捕まえなくてはいけないのだ。帰宅時間と重なっているため、客を乗せていない馬車を見つけることは難しいかもしれない。
扉に手をかけて開こうとしたその時、扉をノックされる。客人が来る予定もなかったため、驚きはした。だが、ギルバーツが返事をして扉を開いた先にいたのはエレニー王国国王専用馬車の馭者だった。
以前会ったことがあったため、ギルバーツは彼を知っていた。彼がいることにギルバーツは驚いていたが、彼は気にしてはいない。
「お迎えに上がりました」
そう言って頭を下げる。彼は言われたから迎えに来たのだ。ギルバーツとロベリアが聞いていなくても関係ないのだ。彼は任務を果たすだけ。
ギルバーツの後ろからロベリアと目が合った彼は頭を下げる。それにロベリアも頭を下げて挨拶をする。
「せっかくだから、乗りましょう?」
「そうだな」
ロベリアに言われずとも、ギルバーツは馬車に乗るつもりではあっただろう。荷物を手に外へと出るロベリアに続いてギルバーツも外に出る。そして、忘れずに家の鍵を閉めた。
馭者が馬車の扉を開き、ロベリアとギルバーツが乗り込んだことを確認すると扉を閉めた。そして、出発することを告げると馬車を走らせた。
「まったく、迎えを寄越すとは」
「早く会いたかったのよ。でも、気持ちはわからないでもないかな」
それはギルバーツも同じだ。一度会いたいと思うと、早く会いたいと思うようになるのだ。ギルバーツ自身も思ったことがある気持ちなので、本人達には文句を言うつもりはない。
ただ、馬車を寄越すのなら国王専用ではないほうがよかった。何故ならとても目立っているからだ。目立つことは慣れているが、ギルバーツは小さく息を吐いた。
エレニー王国に4日滞在する間に何が起こるのか。何事もなければいいのだが、ギルバーツは必ず何かが起こる気がしていた。
何も起こらずとも、会ったばかりでもある本当の両親達が何か起こすような気がギルバーツはしていたのだった。
好きですがなにか?~悪役令嬢でごめんなさい~ さおり(緑楊彰浩) @ryokuyouakihiro
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