番外編4 姉





 今私の目の前にいるのは2人の姉。突然家にやって来た姉様だけれど、私はこの家を教えた記憶が無い。ソファーに座りコーヒーを飲んでいたギルも教えていないようで、目を見開いていた。

 今日はギルが久しぶりに休みだったため、2人でゆっくりしていようとテレビを見ていたというのに。この間の結婚式であまり話をしなかったから嬉しくないとは言えなかったけれど。

 でも、突然玄関の扉を盛大にノックされたらびっくりするというもの。ギルも驚いてコーヒーカップを手に固まっていた。けれど、扉の外から聞こえた声に姉様だとわかった私は扉を開いて招き入れた。

 何しに来たのかと思い、ソファーに座る2人を見る。私はソファーの端に座り、ギルは私の横に立っている。

「ねえ。ロベリア聞いてくれる!?」

「あの人ったらね!?」

 長女のトルメラ姉様はレイナ―公爵家に嫁いだ。次女のティーア姉様はシェルナンド公爵家に嫁いだ。嫁いでから会う機会もあまりなかったけれど、変わらず元気そうで取り敢えず一安心。

 ここへはきっと母様に聞いて来たのだろう。同棲し始めた次の日に母様には家へ案内したのだから。もしかすると、知っていたのかもしれないけれど。

 どうやら、姉様達は自分の旦那の文句を言いに来たようだった。

 最近忙しくて、同居しているのに会うことがない。

 話をしたくても、疲れているからと会話にもならない。

 それだけならまだいいだろう。最近旦那の両親から言われていることがあると2人は声をそろえて言った。それは、子供はまだかということ。

 2人共結婚はしているけれど、子供がいなかった。旦那の両親は孫の顔が見たいのだろう。私達の両親からは孫の顔が見たいとは聞いたことはないけれど、思いは同じなのかもしれない。

「貴方達はどうなの?」

「子供はいつ生まれる予定!?」

「なにを言っているの?」

 もう子供が生まれる前提で話す姉様達に私は驚いた。まだ同棲であり結婚もしていないのに子供なんて作らないと言うと、姉様達は驚いた顔をした。

 そして首を傾げて私とギルを見た。結婚していないことは知っているはず。それなのに、どうして驚くのだろうか。

「2人とも同じ部屋じゃないの?」

「いいえ、違いますよ」

「私はギルの部屋の隣にある部屋を使ってるの」

 そこは以前私が泊めてもらった時に使った、ギルの育ての親である両親が使っていた部屋だ。最近は、もう戻ってこないことがわかっているので着ない服などは処分している。だから、今はクローゼットには私の服しか入っていない。

 結婚しておらず、同棲しているから部屋は別々にしている。そのことに姉様達は驚いていた。当たり前だと思っていたけれど、おかしいことなのだろうか。

「それでいいの?」

 トルメラ姉様がギルに視線を向けて問いかける。ギルはその問いかけに大きく頷いた。私とギルはお互いが納得して別室にしている。

 だから、トルメラ姉様に問いかけられなくても納得していることだからいいのだ。

「なんか、私達よりもパートナーを理解し合っている気がするわね」

 溜息を吐きながら言うティーア姉様に、私とギルはお互いを見た。私達はお互いを理解し合っているのだろうか。

 私達からしたらわからないけれど、姉様からすれば理解し合っているように見えているようだ。

「なら、もっとお互いを理解し合えるようにならないとね」

 ギルに微笑んで言うと、頷いてくれた。まだ私達はお互いを理解し合っているとは思えない。だからそう言ったのだけれど、ギルも同じだったようだ。

 同棲しているけれど、私達は会って間もないのだ。だから、それは仕方がないと言えた。

 姉様達はどうやら愚痴を言いたかっただけのようで、それ以上は何も言うことなくコーヒーのおかわりをギルに頼んでいた。










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