直観
きょんきょん
アラーム
わたしはこれまでの人生で悩んだとき、自らの直観を信じて選択肢を選んできた。
ただの山勘ではなく、確実に成功へと導いてくれる啓示ともいえる直感。
その力には幼い頃から気づいていた。
その力を理解した上で利用し、それなりに成功してきたつもりだ。
理屈はさっぱりわからないが、わたしがある選択肢で悩んでいると、頭の中でアラームのようなものが鳴るのだ。
時に静かに、時に激しく。人生に影響を及ぼすほどの選択肢になればなるほど、選択することによって得られるリターンが大きいほど、アラームも比例して大きくなるということは経験則で理解していた。
受験だって就職活動だって仕事でたって、いつも自分の
その結果一等地のタワーマンションに住むまでには地位を確立したけども、どうしてだか
それは――恋愛についてだ。
子供の頃から良いなと思った男子を見ても
その頃はまだ本当に大事な人は現れていないんだと、白馬の王子様を待つ気分でいられた。
それが高校、大学と、
選り好みしなければ男なんていくらでも寄ってくると思うのだが、それもプライドが許さなかった。
これまで
数年ぶりに参加した小学校の同窓会で、一人遅れて合流した男性に目が止まり、すぐに当時憧れていた奏汰君だと気づいた。
胸の高鳴りは感じたものの、それでおしまいと思いきや、これまでどれだけ男を見ても反応しなかった
――もしかして、彼が運命の人?
あまりに熱い視線を送っていたせいか、隣のテーブルに腰を下ろしかけていた彼がこちらに気づき、なんと空いていた隣の席にやってきたのだ。
「夏希さんだよね。人目でわかったよ」
「奏汰君こそ、イケメンだからすぐわかったよ」
当時憧れだった男子と再会し、しかも
二次会も参加してお互いの連絡先を交換し、その日は別れた。
それからも度々会う約束をとりつけ、三回目のデートで告白された。もちろん答えはOKに決まっている。
その一連の話を親友に伝えると、もちろん
「その人、私の友達と結婚していた人だよ」
「え?そんなことある?」
親友曰く、奏汰君の日常的な暴力に耐えられず逃げ出すように離婚したとか。
すぐには受け入れられない話だった。これまでそのような素振りはみせていなかったし、バツイチだった話も聞いたことがない。
親友に何度確認をとってもやはり奏汰君本人だという。
それでも信じられなかった。
だって、
彼を信じていたわたしは、本人を呼んで直接真意を訊ねてみることにした。
きっと親友の勘違いだ。そうに違いない。キッチンでコーヒーを淹れている奏汰の背中は暴力をふるうようには見えなかった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
うちにある適当な道具で淹れてくれたコーヒーは、いつもこ優しい味だった。
心が落ち着き、平静を取り戻す。
――彼を信じよう。
「あのね、聞きたいことがあるんだけど」
「うん?なんだい?」
「実は――――」
一連の内容をすべて伝えると、彼の表情が一瞬にして無になった。
「なんだ、知られちゃってたのか」
「え?」
すると、突然急激な睡魔に襲われ、私の意識は闇へと落ちていった――
目を覚ますと、手足が拘束された状態でわたしは寝転がされていた。芋虫のように。わたしを見下ろすように奏汰君が立っている。金属バットを手にして。
「なんでこんなことするの?」
「夏希のことを愛してるからだよ」
「え?なにいって」
いい終わる前にバットの風切り音が聴こえた。続いて何処かの骨が砕ける音が。
それは終わることなく夜が明けるまで続いた――
まだ、意識があるときに後悔した。
彼と会ったときの、あの
直観 きょんきょん @kyosuke11920212
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