異能者チェイス!

荒音 ジャック

チェイス

 季節は7月上旬……紅音市・公立紅音高校の校門の前に4人の男女がサブバックを肩にかけて横に並んでいた。

 4人は夏用の学生服に身を包んでおり、時刻は12時でこの日は夏休み前日の終業式ということもあり、一番右端にいる黒髪ショートヘアで左側に三つ編みの房がある。男子がコードの先にカセットテープのウォークマンがつながったヘッドホンを取り出しながらこう言った。

「ゴールはうどん屋の前でビリが上位3人にサイドメニュー1品奢りな?」

すると、亜麻色ショートヘアヘアピン2本で前髪を右に寄せている女子生徒が「麻祇斗、トレーサーは使用禁止で行かない?」と黒髪ショートヘアの男子に尋ねると麻祇斗は「ああ、いいぞ」と答える。

 すると、赤髪ロングヘアの女子生徒が「デザートにあんみつ食べたいわ」と髪をポニーテールに結いながら言うと、麻祇斗が「零紗はあそこの甘味好きだもんな」と言うと白髪ショートヘアの男子生徒が「悪いがドベは回避させてもらうぞ?」と自信ありげに言いながら口元を藍色バンダナ出覆う。

「日埜は足速いから10秒遅れてスタートにしない?」

 亜麻色ショートヘアの女子生徒がバンダナの位置を調節している日埜にそう言うと麻祇斗が「亜里沙、足が遅いからってそう言うことしない」と言った。

亜里沙はむぅっと頬を膨らませてから「それじゃ位置について!」と言うと4人は構える。

「よーい……ドン!」

 亜里沙の掛け声とともに勢い良く校門を飛び出した。だが……麻祇斗は一度立ち止まって「あれ? ウォークマンの調子が……」と言いながらズボンの左ポケットに入れていたウォークマンのスイッチを数回カチカチと弄ってからようやく正常に動作して「よし! 行くか!」と言って走り出した。

 零紗は赤髪ポニーテールを揺らしながら日埜と一緒に走っていると零紗はチラッと自身の左を並走している日埜をチラッと見て「エクスカリバー!」と叫んだ。

すると、零紗の履いているスニーカーに朱色のアーマーが纏わりついてロングブーツのようになる。

 零紗は「おっさきぃー!」と言いながら地面を蹴ると蹴った地面が爆発し、その衝撃で零紗は跳ぶように宙を舞って住宅街へ飛び込んだ。

 日埜はそれを見て両手で素早く3回印を結んで「口寄せ! 餓狼!」と叫ぶと自身の影から紅い眼光を放つ黒狼が現れ、日埜はその黒狼の背に跨り、歩道を駆け抜ける。

 一方、2人より少し遅れた亜里沙は住宅街に差し掛かったところで袋小路にぶち当たった。

 だが、亜里沙は焦ることなく「デュラララランス!」と叫ぶと背後に右腕に槍の穂先が付いた頭の無い銀鎧の騎士の鎧が煙のように現れ、亜里沙より前に出てブロック塀の前で踏み台の構えを取る。

 亜里沙は鎧を踏み台にしてブロック塀の上に「おっととととと!」と両手を広げてバランスを取りながら平均台の上を歩くように急ぎ足で目的地に向かった。

 一方、麻祇斗は住宅街に向かった3人とは別のルートを通っていた。

「オフィス街から行った方が近道なんだけどな。信号が多いからあれだけど・・・・・・」

麻祇斗はそう言いながら車の通りが少ない信号機の前で赤信号で足止めを受けていたが中々信号が変わらないため「ヨルムンガンド!」と呟くと赤だった信号が青に変わり、駆け足で次の信号まで向かうと赤だった信号が急に青に変わった。

 零紗は跳ぶように住宅街をかけていると、進行方向の十字路の左から出てきた小学生に驚き「やっば!」と慌てて急ブレーキをかけるがバランスと崩して起動が大きく右にズレてしまい、歩道を飛び出して「へぶぅ!」と短い悲鳴をあげながら道路標識の看板にビターンと大の字で正面衝突した。

 日埜は商店街にあるうどん屋「月見」の前で舌ベラを出して呼吸を荒げる黒狼から降りると少し遅れた亜里沙が肩で息をしながら現れた。

「日埜速すぎ! 餓狼君使うとか卑怯でしょ」

 亜里沙はそう言いながら「ハッハッハッ」と呼吸を整えている餓狼の顔を両手でわしゃわしゃした。

「あれ? 零紗はまだ来てねえの?」

後ろから声をかけられた2人が振り返るとそこには麻祇斗がおり、その後ろから額に罰点印の白テープを張り付けた零紗が「いーるーよー」と力なく答えながら現れた。

「じゃあ、零紗がビリだな!」

日埜はそう言いながら麻祇斗と一緒に笑いながら店の扉を開けると「超悔しい!」と零紗は地団太を踏む。

この後、4人は「月見」でざるうどんとサイドメニューを楽しんだのであった。

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