第十話:冬「消えた中学生とコンビニポテト」
新宿のとある雑居ビルに、探偵事務所があった。
名前は『
だが、お客は滅多にこない。三ヶ月に一度しかこない。
そして、この冬は、最低でも三ヶ月に一度は来るお客がまだ来ていない。
たしかについ先日の1月末頃にイレギューラーなお客は訪れはしたが、彼は厳密に言えば「お客」に当てはまらない。
つい先日訪れた人物は、その該当者ではなかった。
その証拠に、今、
プルルルル、プルルルル、プルルルル
エグゼクティブデスクには、女が座っていた。
女は、大きなエグゼクティブデスクに
プルルルル、プルルルル、プルルルル
電話が鳴り響く中、
グレーのストライプのスーツに身を包み、腰まであろうかと言う黒い長髪をひっつめにして、銀の細フレームのメガネをかけてボーッとしていた。
プルルルル、プルルルル、プルルルル
ボーッとしているのには理由がある。
「所長は絶対に受話器をとらないでください!」
と、
ガチャリ
所長室の扉が開いて、メイド姿の
「お待たせいたしました。
電話越しに男の声が聞こえてくる。
(コトリちゃん?
「あ、
「ハッサク!?」
電話越しに男の声が聞こえてくる。
(また、頼めないかな?)
「はい、もちろんですよ。そのための事務所ですし」
「ひい!」
電話越しに男の声が聞こえてくる。
(すまないね。今からお母さんに、そっち行ってもらうから、よろしく)
「
ガチャリ
「大丈夫です? 先生」
よほど、
「怖い! 怖い! ハッサクはミカン! ミカンは怖い! 酸っぱい! 怖い!」
「大丈夫ですよ先生。その為にわたしが
「任せる! 酸っぱいはコトリ! 絶対コトリ!」
「任せてください!」
・
・
・
ガチャリ
ドアをあけると、そこには、長い長い廊下が現れた。
長い長い廊下の左右には、等間隔でカラフルなドアが並んでいた。
そして、全てのドアに〝額縁〟が備え付けられていた。
一番手前の左のドアは、額縁の中に数字の〝1〟が書かれれいた。はっきりした色合いの緑と青のツートンカラーのドアだった。
反対側の右のドアは、額縁の中に数字の〝60〟が書かれれいた。一面、淡い色をした青いドアだった。
コツ……コツ……コツ……
ついさっき、
コツ……コツ……コツ……
消えた少年は、十四歳の中学二年生。失踪、つまり消えたのは今から二週間ほど前のこと。冬休みが終わってしばらくのこと。いつも自宅でスマホを見入って、夜更かしをしていた息子が突然いなくなったらしい。
「 あ っ た 」
そして、額縁の中に〝24〟と書かれたドアと、〝25〟と書かれたドア〝間〟に立ち止まった。
淡い色をした、赤と青のツートンカラーのドアと、はっきりとした色合いの、黄色と青のツートンカラーのドアに挟まれた、何も無い、真っ暗な壁の前で立ち止まった。
トン、トン、トン、トン………………ギィィィィィ
真っ暗な壁は、
「ヒィイいいいい! 怖い! 怖い! ミカン怖い!」
壁の向こう側に、西洋風の街道が現れた。平凡な街道だった。
「じゃ、行きましょう! 先生。場所を教えてください」
すると、
「あっちがミカン! 怖い! 怖い! あっち!」
ふたりは、平凡な西洋な街道をスタスタと歩いた。
数百メートルほど歩いただろうか、ふたりは、尋ね人に遭遇した。
そして
モノリスには、とても不思議で平凡な単語と数字の羅列が刻まれてあり、一番最後の項目に、スキル名が書かれてあった。スキルの名前は、
この、とてもかっこよく、可愛く、ユニークで、チートで、平凡な異世界は、時間が止まっていた。
「怖い! 怖い! ミカン! 怖い!」
「ブッ!」
と、
とたんに、可愛い平凡な魔法使いも、可愛い平凡な弓使いのエルフも、
そして
真っ暗な空間には、学生服の
「あれ? ここは……?」
「お母さんが、めっちゃ心配しとる。帰りましょ」
そして、つづけざまに地面に
「先生、帰りますよ〜」
「怖かった。ミカン。怖かった。ミカンは怖い」
・
・
・
「それじゃ、おおきに」
「所長と、
「わかりました。あ、でもタクミさんには直接あいさつしてください。
「だって、ソフトクリームでしょ? オレ、酒飲みだぜ? 辛党だぜ? ポトフや、じゃがいもスライダーは、最高の酒のアテになる! そりゃ常連になるってもんさ! 毎日でも食べたくなるさ!
まあ、百歩譲ってポテトチップスもアリだ。だが、今置いてるのはソフトクリームでしょ? しかも真冬だよ? そんなんじゃ、さすがに酒のアテにならないよ」
「そんなこと言われてもしょうがないじゃないですか。仕入れが運次第なの、
「そうなんだよな〜。でも、ポテトチップスの後がじゃがいもソフトだよ? でもって今回は収穫なしでしょ? そりゃあ、ますます足が遠のくってもんよ」
「もう、二月三日の節分で店じまいですよ。あと二日なんやから、顔くらい出して下さいよ」
「うーん、でもなあ……悪いけど、また去年にするよ」
「ホンマ、薄情な常連さんや! もうええです! 次の去年は出禁です!
ワンコさんが常連になってくれましたから、次の去年からは、経営は安定すると思います! ほなさいなら!!」
「おいおい、出禁だけは勘弁してくれよ! わかった、行く、行く!
今日はもう上がりだから、そのままコトリちゃんについて行く!!」
「さっすが、
・
・
・
公園を抜けると、信号の下に一件のコンビニが見えてきた。
そこの角を曲がると、
「そうや、先生にお土産買って行こう! ちょっとまっとって下さい」
そう言うなり、
「先生へのおみやげに、フライドポテトを買いました。塩味と、フレンチサラダ味、あと、なんや期間限定のスパイシー? らしいです。『知らない味』です」
「スパイシー? 所長って、辛いもの苦手じゃなかったっけ?」
「先生はじゃがいもだったら、少しくらい辛かったり苦かったりしても平気です。でも酸っぱいのはガチでだめです。リアルガチでだめです。せやから、フレンチサラダ味はわたしのオヤツです」
「へー」
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幕間劇
こんにちは。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。めっちゃうれしいです。
なんや訳わからん話ですみません。
あ、ちなみに、わたしがさっきが
なんや、わたしがまだちぃちゃい頃にテレビ番組で見た「スゴ技」です。
これでわたしは、よくおじいちゃんを押してあげてました。坂道とか階段を登るんには、めっちゃ便利です。是非使ってみて下さい!
でもって、毎度毎度ですけど、お約束を
【この小説はフィクションです】
*実在の人物や団体、並びに実在のweb小説とは関係ありません。
毎回毎回、ギリギリやったり、ギリギリアウトやったりしとるけど、今回は絶対に完全に、いっさいがっさい何も関係ありません。
そこんとこ、キッパリはっきり
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