キャッチコピーに帰結する物語

気の触れた世界を歩く青年のお話。
この小説をひとたび開けば、あちこちに死の気配が漂う見事な心象風景が広がっています。
気が狂いそうなほど苦しんでいるけれど正気を保っている主人公の心情は、あまり語られないにも関わらず、読んでいてこちらが辛くなるほどです。
青年は最後海を見ようと走り出します。
どうしようもないほど追い詰められた中で自分を唯一正常に保ってくれるもの。
果たしてわたしたちはこの現実世界で、この「海」と同じ意味を有するものがどれだけあるだろう、そう考えさせられた物語です。

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