セピア

七五三木

セピア-1

 行き着く先が見えない程に長く続く真っ直ぐな畦道あぜみちを、何の為に、どこに向かっているのかも分からず歩いていく。気付けば私は車椅子を押していた。人は疎か、鳥や虫等のあらゆる生物の気配すら感じられない風景。


 視線を下げると、車椅子に座る女性の頭が見えた。淡く透き通るような黒髪、その後頭部には拳大より一回り大きな穴がぽっかりと空いている。


 女性は何か話すことも無ければこちらを振り返ろうとする様子もなく、真っ直ぐ前を向いたまま静かに座っている。こちら側からは女性がどんな表情をしているのか見ることは出来ないが、私はこの女性を知っている。


 セピアに染まった景色では今が朝か夜かも窺い知ることは出来ない。ここには時間の流れすら無いということも私は理解していた。


無限にも思える懐かしく暖かい美妙な逍遥しょうようをただ続けていたいと思った。

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セピア 七五三木 @shimeginovelize

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