第2話正直で・真面目で

(記2021/3/12)

それだけしか持ってなくてそれで故郷を飛び出してきたと聴いたら、それがあなたの家族・親友ならキッとひき止めるのだろうな。だけどそんな世間知らずの泡(あぶく)を引きとめようという気持ちなど父親にはなかった。当時を振り返ってみて、泡が父の立場なら‥そりゃあやっぱり引きとめない。断言するけど、子どもには幼いときから世間に慣れさせてあげたい。こんな気持ち、あなたにも分かるかなあ。泡は世間に慣れることを重視してるんだよ。だから計算できる児に育てようと思わない。


世間知らずで身の処し方を知らない泡はどう世渡りしたらいいだろうか?ありったけの能力を絞りだすしかないのでない?運動能力に秀でていたら得意なスポーツ分野の道を考えることは十分にある。音感が優れた人は音楽の道を探ることが可能だ。それなら泡(あぶく)でも出来ることは何だろう?歩く程度の仕事はデキルだろうし、伝えるぐらいの言葉は喋れる筈。ほかには正直に真面目に生きることしか知らないけれど、これはあれこれ考えなくて済む身に付いた癖のようなものだから楽ちんだ。


自分の身を振りかえりながら自伝を綴っていて「ナルホド」と思った。泡はそれで匠さまに惹かれたんだあ!匠さまを紹介する文言のフレーズ「一処一情」に目を奪われた。この言葉の深い意味は分らないけれど、行く先・行く先で一所懸命に尽すことだと泡は理解する。上手に出来ない・分りやすく伝えられない・仕事は鈍い。わたくし・泡にそなわる器量がソレだけなら、どうしたら良い?そんなこと、どうするも・こうするもありませんから。デキル事を懸命にやる。すなわち一処一情の法。


匠さまの作品の部分しか知らなかったけれど・その作品に頷いてばかりだったけれど、そのことに納得がいった瞬間でした。そうすると匠さまは泡の「後ろ盾」になってくださっているのでないかしら?工女・匠さまの作品には盾(たて)も入るのです。「盾」と言えば矛(ほこ)でしょう?匠さまは世界一の「盾と矛」をお作りなんです。どんな盾で受けても受けきれない世界一の矛・そしてどんな矛で突いても破られることのない盾の匠に違いありません。この矛盾こそが宝剣なんですよね!?


泡はこの矛盾を使いこなせるようになれるかしら?そうなれたとき、泡に宝剣一族の光が具わるでしょうか?とにかく研いで研いで研いでいくのみでしょう!?

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