にんすと! 忍者娘なストーカーに追われてます

ムネミツ

にんすと! 忍者娘のストーカーに追われてます

 僕は今日の最後の授業が終わるベルが鳴ると同時に教室を飛び出して走り出した!

 好きとか嫌いとか言い始めたのは誰なんだ!

 「殿~! 待って欲しいです!」

 黄色い忍者装束を着て僕を追いかけて来るのは、金髪ボブカット爆乳のアメリカン忍者メアリー。


 彼女はある日突然現れた。


 「アイオワから来ました、メアリーです宜しくお願いします♪」

 流暢な日本語で挨拶をした彼女、何故か僕の隣の席になった。

 「よ、よろしくお願いします」

 「こちらこそ末永く、宜しくお願いします♪」

 末永く? 何でそんな事を言うのかわからなかったが、皆は彼女が日本語を勘違い

したんだと思い大爆笑メアリーさんはクラスに打ち解けた。


 それが数日前、ここから段々と彼女はおかしくなっていった。

 「~さん、ランチを一緒にいたしましょう♪」

 「え? 僕、はい」

 隣の席と言う関係のはずなのに、何故か彼女は僕に近づいてくる。

 周りの皆も何も言わない、女子も男子もまるで僕とメアリーさんが一緒にいるのが当然で僕と彼女が夫婦であるかのように振舞っていた。

 彼女に連れられて何故か人気のない木陰で弁当を食べる。

 「え、大丈夫なの何か噂になったりしない?」

 僕は何かがおかしいと思いつつも何故か彼女から逃れられなかった。

 「~さん、大丈夫です♪ 皆さん、私達を認めてくれてます♪」

 僕の耳元でメアリーさんがささやく。


 彼女の優しい声と甘い香りに僕の警戒心は破壊された。


 だが、今日僕は突然正気を取り戻した。

 「おかしい、何で僕はメアリーさんに好かれているんだ?」

 小学生の頃、お祖父ちゃんの田舎で金髪の女の子と出会って遊んだ事はあるけれど

まさかメアリーさんがその時の女の子ってのはないだろう。

 いや、結婚の約束とかしたけれどそんなマンガみたいな事があるはずがない。

 一度メアリーさんと距離を取って見よう、そう思っていたら彼女が正体を現して本気を出してきた。

 「~さん、何故逃げるんですか!」

 「メアリーさんこそ、何で忍者なんだよ!」

 学校中、僕とメアリーさんお追いかけっこを誰も気にしていない。

 「貴方は私の殿です、英語で言うとフィアンセ、ハズバンド、ダーリンです♪」

 「な、何でさ~!」

 三歩下がったくらいの距離で僕を追うメアリーさん。

 何か間違った日本文化を学んだんだろう。


 走りながら僕は考えた、だが彼女の狙いが一切わからなかった。


 メアリーさんの身体能力はおそらく常人よりも高い。

 その高い能力を無駄に駆使して僕を追っている。

 意味が分からなかった。

 「致し方ないです」

 メアリーさんが立ち止まり僕との間に距離ができた。

 チャンスだ! 僕は心臓に無茶をさせながら逃げ切りを目指す。

 靴箱で上履きからスニーカーに履き替える。

 彼女はまだ追って来ない。

 「うおおお! 家まで持ってくれ、僕の心臓!」

 靴の履き替えと言うインターバルができたが逆に止まってしまった事で

疲労が一気に襲って来る。


 それでも僕は謎の忍者メアリーさんから逃れるべく必死に走った。

 捕まったら何をされるかわからなかった、家に帰れば何とかなるはずと

想っていた。

 通学路を、商店街を駆け抜けて住宅街にある我が家へたどり着く。

 玄関のドアの前で立ち止まりゴールテープに触れるようにドアノブを握る。

 「ただいま~」

 疲れ切った声でドアを開けて帰宅を告げる僕。

 「殿、お帰りなさいませ♪ お風呂ですか、お食事ですか、私ですか♪」

 玄関開けたら五分どころか即忍者!


 忍者装束の上に白い割烹着を付けたメアリーさんが正座して三つ指を突いて笑顔でお出迎えしてくれた。

 「も、もうどうにでもしてくれ!」

 「フルコースですね、承知いたしました♪」

 忍者からは逃げられない。

 こうして、僕にメリケン忍者のお嫁さんができたのだった。

 

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