【KAC20212】高速戦闘車両のリミッターの解除をしつつ俺のコアユニットに搭載されているマルチ接続アームを使用して戦闘ロボットの武装やパーツを剥奪しては使い捨てて応戦し、やがて現れた戦闘ヘリからの…
@dekai3
どういう事だよ、高橋?
昔から、マラソンみたいな『明確な終わり』がある物ごとをするのが好きだった。
走り続けていれば、いつか必ずゴールに辿り着けれるから。
芸術みたいに相手によって評価が変わる訳でもなく、学問みたいないつまでも終わりが見えない訳でもなく、ここまでやればおしまいというはっきりとした線引きがしてあるのが気持ち良かった。
だから『物を作る』という製造系の仕事に進んだし、入社した時から製作物の進捗には最初から最後まで関わってきた。その事が評価されたから俺は入社して数年で一部署を任せて貰える様になり、上司に手出しをされない環境を手に入れた俺は一層がむしゃらに働いた。
一部署と言っても俺と営業と事務の三人しかいない小さな物だったけど、俺としてはその少人数さのお陰で一つの仕事を集中して最後まで走り切れるから凄く嬉しかった。
だけど、仕事ってのは全部が全部一回の納品で終わる訳ではなく、分割で納品したり、納品した物を仕様変更したり色々とある。
それは全てクライアントと営業がどんな契約をしてくるかに寄る物で、俺は毎日の様に営業になんでそんな話で通したんだと文句を言ってはきっちりと製品を作り上げてきた。
営業に不満はあるけれど、『明確な終わり』が見える物を作るだけで給料が貰えれるのだから天職だと思い、我武者羅に依頼された物を作り続けてきた。
そう、俺はひたすら走り続けていたんだ。『明確な終わり』に向けてずっと。
で、その結果がこれだ。
ババババババババ ドヒュゥン ドヒュゥン ドヒュゥン ドォォォン!! バァァァン!! ズガァァァン!!!
「なあ、五十島。これもっと速度出ねえの?」
『うるせぇ! 助けに来た癖に結局は俺頼みかよ!!』
俺の部屋から脱出した後、目の前にあった無人エレカーを俺が乗っ取って走り出し、それを追いかける
「なんの事だ? 俺は迎えに行くってメールで送っただけで助けるとは言ってないぞ?」
『おまっ! そういう所だぞ高橋ぃ!!』
ドヒュゥン ドヒュゥン ニガサネェゼー オレヲミロー
確かにメールには迎えに行くとしか書かれておらず、俺が勝手に助けに来てくれたのかと勘違いした部分はあるかもしれない。
でも、状況的に高橋が普通に迎えに来たとしても俺が外に出るって事になったら大ごとになっていたんだろうから結果は余り変わらないんじゃないだろうか。いや、そういやこいつ提案はするけど実践は全くしない奴だったわ。きっと最初から迎えに来た後の事は全部俺任せにするつもりだったに違いないわ。新入社員時代の合コンでも「俺が感じやるから合コンしようぜ!」とは言う物の、結局人集めも店を決めるのも話を進行させるのも俺がやってたし。そうだわ、こいつはこういう奴だわ。
オトナシクツカマレー オマエサエヤッチマエバジンルイハジユウダー ヒャッハー! ドゴォォォン!!
メイン思考で装甲車の操作をして周りのバイクやバギーから投擲される爆発物の付いた槍を装甲の厚い部分で受け止めたり角度で弾きながら、並列思考で高橋の過去の悪行(主に俺への)を思い出す。
他にも社内の他の部署の女性社員複数名に手を出しては俺に「爆弾を回避する方法を教えてくれ」とか言ってきた事もあるし、こいつは早いうちに始末しておいた方が人類の為になるんじゃないだろうか。
と、砲撃により崩れ落ちた天井の一部をヘリのローターの回転でいなした所で気付く。そういや、あの時から500年経ってるんだよな?
『おい、高橋』
「なんだよ五十島。車内の冷房もっと強くしてくれよ」
『………今設定温度下げた』
「サンキュ」
『お前さぁ……いや、いいや。そういう所でやっぱりお前が高橋だと再認識したよ』
「そうだぜ? 俺は社内で変わり者だったお前が孤立しない様にお守りを社長から仰せつかわれた高橋様だぞ?」
なにそれ初耳。逆じゃねえの?
ヒュー!! ドンドォン!!! ウワー クズレルゾー
『それはいいとして、お前どう見ても義体じゃなくて生身だよな? どうやって500年も生きてきたんだ?』
今までの展開が急すぎて気付かなかったが、高橋はどう見ても500年前の高橋のままであり、俺みたいに脳を含めた全てを機械に置換しているわけでは無さそうだ。
クローン技術と記憶複製処理を使用したとしても500年前とぴったりの姿で現れるのはほぼ不可能だし、そもそもあの技術は同一人物同士による殺害の試合が発生するという謎の現象が起きたから封印された筈だ。折角頑張って理論を組み上げたんだけどな。
「昔言っただろ? 忘れちまったのか?」
『言ってたか?』
「ああ、【俺は魂が肉体という器を凌駕した超越者】だって、何度も言ったじゃないか」
『合コンの自己紹介の度に言っていたそれ、ガチだったのかよ…』
コレイジョウハアキラメロー!! マダダ! マダオワランヨッ!!
合コンの時の様に、握った右手の親指で自分を指さしながら無駄にカッコを付けて決めセリフを吐く高橋。
これ、何故かアラサーぐらいの女性には受けてたんだよな。女子大生とか若い子には今一だったけど。
「だから歳は取らないし怪我もすぐに治る。ほとんど不老不死みたいなもんだ。どうだ、すごいだろ?」
『へー、すごいすごい。500年前の時点で既にミュータントって発生していたんだな。すごいすごい』
「あ、おい、五十島。それマイノリティ差別だぞ!?」
ドガァァァァァン!!!!!!
並列思考で社内の高橋と会話をしている間にも高速のカーチェイスは続いており、先程から陸上戦艦の砲撃を受けて崩壊しかけていた超高速道路にとうとうトドメが入ったようで大きな揺れと共に天井だけではなく床にも亀裂が入る。
基本的に地上は全て建造物で埋まっているので逃げる為の速度を出す事は難しい。超高速道路から脱出する事は敵に追い付かれる事を意味するだろう。
『クソッ。おい、どうする高橋。どっか当てはあるのか?』
俺はこの500年経った世界の外の事をあまり知らないので、一応500年間外で生きていただろう高橋にダメ元で案を聞いてみる。
こいつは昔からここぞという時だけは頼りになったんだ。今回もなんとかしてくれよ、マジで。
「イトちゃんの所に行こう」
高橋から出てきたのは、もう一人の同僚で、事務をやっていた貝野イトさんの名前だった。
『イトさんも、まだ生きているのか?』
俺はその名前が出た事にびっくりする。
まさか高橋だけじゃなくてイトさんもだなんて。どういう事だよ、高橋?
【KAC20212】高速戦闘車両のリミッターの解除をしつつ俺のコアユニットに搭載されているマルチ接続アームを使用して戦闘ロボットの武装やパーツを剥奪しては使い捨てて応戦し、やがて現れた戦闘ヘリからの… @dekai3
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