第8話 

今日作るスイーツはMs.Donutsで大人気のオールドファッション。

作り方はシンプルだが材料で何を使うかによって仕上がりが大きく変わってくるのがドーナツというもの、今回は甘さ控えめで外がサクサク、中フワフワに仕上げていこう!


まずは無塩バター30gとグラニュー糖80gをボールに入れて軽く混ぜてゆく。この2つがある程度混ざり合ったところで、別のボールで卵1個と牛乳大さじ一杯も同時に混ぜてゆく。

味がしょっぱくならないようにするための無塩バターと純度の高い甘さを持つグラニュー糖を使うのはスイーツ作りでは欠かせない。


バターに卵をだまにならないように少しづつ加えてゆく、全体的にとろとろになって来たら、バニラエッセンスを適量入れる。

次に薄力粉200gとベーキングパウダー小さじ1を2回ふるいにかけていく。

今回使うのは【ムソー 国内産有機小麦粉 薄力粉】グルテンが8%前後でしっかりとした食感を持たせたいドーナツに最適だ。


ふるい終わった薄力粉をボールに入れ、切るように混ぜてゆく。

ひとまとまりになったらラップで包み1時間ほど寝かせよう。

ちょうどその時ゴリラが手洗いを済ませキッチンに入ってきた。

 「お願いしまーーす。」

僕の珈琲が不味いと言われていることを突然宣告してきた、この霊長類を許すつもりは一切ない。


 「今日はドーナツですねぇ。俺全然食べますよ。試食するときは呼んでください」

 「…」

ゴリラは満足そうにのしのしとホールを散策している。

 「今日から大悟さんがいないお店ですねー。どうなることやら」

 「本当だね、珈琲が不味い喫茶店だから直ぐに潰れてしまうかもね!」

僕の嫌味口調は止まることを知らない。

 「そんなことないです、たとえ珈琲が不味くても潰しませんよ。俺がいるから!」

なんなんだ、コイツはァァァァァァァァァァァ。


もう慣れた僕たちの会話だが、今日は特別にイラついた。

今日の夜にでもGooogleで ゴリラ 野生 帰し方 で検索しておこう。

とは言っても、もう開店30分前、最後のトイレの清掃や店前の掃除、衛生チェックは和人にやってもらおう。

 「和人、朝のスタンバイの残りよろしくね」

 「おいーっす。」

間の抜けた返事が聞こえる。


僕は一度深呼吸をして、気合を入れ直す。

大悟さんと同じにできなくてもいい、僕は自分ができる精一杯でお客様を対応しよう。不安はいっぱいある、でももう後ろには下がれない、下がりたくない。

今は一人じゃないから。

少し笑みを浮かべて意気込んでいたらしい。


 「何で笑ってるんですか?怖いですよ…」

ちょうど掃除を終えて、帰ってきた和人にバカにされる。

 「笑ってない。ことはないけど笑ってない」

頭に?マークが浮かんでいるような表情をみせる。

ふと時計を見ると9時55分、開店の5分前。

そんなに考え事してたんだと実感する。

 「和人そろそろお店開けるよー」

 「はいよー」


返事だけは教育し直そうと思いながら、お店のドアを開けてのぼりをつける。

と、そこには常連の老夫婦がいた。

 「い、い、いらっさやいませ」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新宿二丁目の喫茶店 ネオンテトラ @aoto13

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ