第4話 DIVA降臨―――降り立つ武闘女神

紆余曲折うよきょくせつあり―――“彼”と“彼女”は結婚しました。

とは言え、未だ『警察』と『泥棒』の関係は、保たれたまま……なので、大っぴらに『式』を挙げる事も出来ず……。


けれども、一緒に生活をする―――と言う事で、カインの自宅に引っ越してきたマリアなのでしたが……


「えええ~~~っ?? あ―――あなた……って、『カイン』??」

「そうだけど?」


「(『そうだけど?』……って)き……聞いてないわよ??」

「まあ聞かれもしてないし、だから言わなかったんだけどもなあ~?w」


「(……てより―――)そ、それじゃなんで……泥棒こんな事してるワケ?」

「ん~~言ってみりゃ、“趣味”かなあ?」


「(趣味……って―――)」


そう……言わばカインは、成り上がりとは言えセレブの一人―――と言う事は、その自宅もちょっとした豪邸なことに驚きを禁じ得ないマリア。

ですがしかし、それ以上に驚くべき事実が、カインが泥棒をしているという理由も、彼の“趣味”で―――と言う事に、これが中々、生真面目なマリアからすれば頭の痛かったところのようだったのです。


「あの~~カイン? 一応私の仕事って―――……」

わ~かってるよ。  だから今度からは、警察のご厄介にならない仕事をするつもりさ。」


「(あはは……)でも、盗みは続けるのよ―――ねえ?」

「まあねw ホレ―――」


「(……?)なに、USBコレ―――」

「聞かねえ方がイイと思うぜえ~~?w なにせ今度からは、ちょい“ヤバめのモノ”を狙うようにしたからなあw」


「(……)その時点でUSBコレが何なのか―――怖いんだけど……」


しかも、まだ頭の痛くなる事実コトに―――w

どうやらカインは、マリアとの結婚を機に、「基本的」には警察にはご厄介にならない―――つまりは、金品や古美術品―――等と言った様なものではなく、少しばかりその取扱いに注意を要する“モノ”―――つまり何が言いたいのかと言うと、いわゆる表沙汰に『』―――そう言った類の“黒い噂情報ネタ”を中心に、標的マトを絞って行く……と言う事だったのです。

{*ちなみに……ではあるが、マリアに手渡そうとしたUSBヤバイブツは、現職大統領の過去の“黒い噂”だったのだとか。}


        * * * * * * * * * * *


それはそれとして、話題を転換させる為に、を話してみると―――


「あ―――あの……さ、カイン。  あなた、今流行りの“オンライン・ゲーム”の事……」

「ああ、あれならオイラもやってるぜ?」


「ホント―――!?」

「ホント―――ホント―――それに、そのUSBネタ……どっから手に入れたモンだと?w」


「―――へっ?」

「ほい―――じゃ、ま、結婚初のログインと洒落込むかw」


「所詮はゲーム」……と言う事で、少々はばかられもしたようですが、何と蓋を開けてみると、この度夫に成った者も自分と同様そのゲームのプレイヤーだった……しかも、このUSBヤバイブツ出元元ネタが、そこからのモノだったとは。


そして、ログインしてみると―――……


「あっ……『クリューチ』―――」

「おっ……新婚カップルさん一組、ご案内あんなぁ~い~~w」


「んっ、もう―――揶揄からかわないでッ!」


「よッ―――す、この度はドーモw」

「ドーモw “アレ”お役に立ちましたァ?w」

「えっ? へっ??」


残念ざぁ~ンねん―――w 断られちまったww つーーーわけで、あのデータ消去けしとくわw」

「まいど~~www」


「あっ―――あっ―――あなた達ィ? 付き合って……」

「なぁ~に言っちゃってんスかw 人妻つき狙うほど、ヒマしてねぇ~ンすよww  そーーいやドゥルさん、そこの旦那からプレゼントされたUSBヤバイブツあったっしょ?」


「え、ええ―――それがどうかしたの?」

「“アレ”―――アタシからの『ご祝儀』。」(ニヤニヤw)


新婚ホヤホヤの“彼ら”を待ち受けていた者とは。

マリアのプレイヤー・キャラクターである『ドゥルガー』が所属するクラン……DIVAの一員である『クリューチ』なのでしたが。

どうも自分の夫と成った者と、自分のクラン・メンバーの間で交わされたやり取りが、結婚早々に夫婦の関係に破綻を訪れさせるかのようなモノだったので、『ドゥルガー』はそのことで『クリューチ』を問い詰めてみると、例のUSBの出所が判ってしまった……。


そう、『ドゥルガー』は、このクラン・メンバー『クリューチ』が、自分の仲間だったから、その危険性が希薄になりつつあったのでしたが……実は“彼女”―――「ジゼル」こそは、世界屈指の『ハッカー』でもあったのです。

その“足跡”を遺した処だけでも―――FBI本部・CIA本部ラングレー国防総省ペンタゴン・ホワイトハウス……だけに留まらず、“北”の核開発疑惑の半島の国・アジア最大の国家・ロシア大統領府クレムリン……と、まあ挙げればキリのないほど―――。

そんな“彼女”が、どうしてDIVAに―――? いや、そも……“彼女”の現実リアルは今どうしているのか……?


とまあ、そのくだりは「また別の話し」となるのですが―――そこから三々五々、クランメンバーは集まり……


「ほお~~こいつがあんたの“相棒パートナー”か。  ヨロシク……私は『クルセイダー』、リアルでは「賞金稼ぎバウンティ・ハンター」をしている。」

「んで、このオレが、こいつ『クルセイダー』の相棒―――『バンディッド』、リアルじゃ「運び屋」をしている。」


「その節は色々―――『ワスプ』だ。  リアルでは『警察特殊部隊SWAT』に所属している。」


「そしてこのボクが、このクランのサブ・マスター『バジリスク』だ。  リアルは……まあ、『陸軍大佐』とでもしておいてくれ。」


「そしてこの私が、このクラン『DIVA』のマスターである、『バーディ』だ。  リアルでは『州警察本部長』だ。」


今度はカリギュラが、そのクラン……『DIVA』の個性的すぎる面々を見て、驚きを禁じ得なかった―――



業界裏サイトで見た事のある、この「賞金稼ぎバウンティ・ハンター」って……基本金銭に糸目がなく、交渉次第じゃ敵にも味方にもなるヤバイヤツ……。

それに、「運び屋」にしても、取扱ってるモンも基本“ヤバめ”の上、金遣いが荒いって言うし……。

今回取り引きした『クリューチ』てのも噂に聞いた処じゃ、周りに敵ばっか作ったから今じゃ仮想内こっちでほとぼりが冷めるまで大人しくしてるんだとか……?

そんな犯罪者あがりの連中と、軍警察の関係者皆さんが、仲良くお仲間~~~って、どゆ事???

はは……なあ~~んかオイラ、ヤッベエ~~処に足踏み込んじゃってね?w



今までが今までだけに、現実内のバルディアやマリアしか知らなかったカインではありましたが。

仮想内では彼女達の方が、自分よりもヤヴァイ領域に、ドップリと漬かり込んでいた……。


まあ、マリア不遇の経歴を知ってからと言うモノは、いつかどこかで“ガス抜き”は必要であり、このオンラインゲームがいい機会となっていたと言うのは、ある意味幸いと言えたことでしょう。


それよりも……まだ更に驚かされた事実コトとは―――


「はあああ~~?今からコイツレイドボス(中級)倒すぅ~? たった……こんだけ8人で??」

「そうだけど―――なんか問題でも?」


「いや、大アリだろうよ??  大体レイドボス―――って、16人いなけりゃ……」

「あ~~~ちなみに言っときますけど~うちらヒーラーいないんでw てめーの傷は、てめーで回復しろなw」


「お……オイオイ―――もうこれ、既にレイド戦やる前から破綻してねェ?w」

「大丈夫よ、カイン♪ ダメージ受ける前に[ブッコロしちゃえば『ブッコロ』しちゃえば♪」


「(……)なぁ~に言ってらっさるんすか―――このお嬢サン……」

「まあ、信じられん話だろうが、あいつが受けてきたこれまでの不遇の経歴が、あいつをあんな風に変えたのさ。」


「“あんな風”……?」


(ヒュ~♪)「ほほお~~―――こいつはまた派手にブッパなしやがったなw」


「(……)ナニ?アレ―――」

「カイン?一つ忠告しといてあげよう……。  決して浮気なんかしたら、ッ-☆」


自分の“常識”としている概念が根底から揺らぎ……そして瓦解して逝く音がする―――

その日珍しくクランメンバーが全員揃った……と言う事で、記念に中級のレイドボス討伐をする事にしたようですが、ご存知のようにレイド戦とは、“総勢”16人でレイドボスを討伐すると言うコンテンツ。


それが? 半分の8人で??


しかも聞けば、このクランにはサポート役はいても、タンク役やヒーラー役が一人としていない。

これは既に、レイド戦を始める前から破綻をしているのではないか……と、疑問に思うのですが。

まだ更に信じれない事が、自分の目の前で起こってしまった―――

それが、自分の可愛い新妻の口から出たセリフに―――行動。

まあ確かに、“理論的”には間違った事は言っていない……がしかし、それは所詮理論上での話し―――実際の話しともなれば戦闘になれば傷つかない訳がない―――で、あるはずなのに……


可愛い新妻の掌中から放たれた衝撃波は、一瞬でレイドボスの体力の9割を持って行ってしまった―――そしてクランマスターからの「一言」……


いや……そんなニコやかな表情かおで言われても??


とは言え、愛しき夫の前で自分の活躍ぶりを見てもらい、顔を紅潮あからめつつも身体をくねらせ、褒めてもらいたいとでも言う様に擦り寄って来る、可愛い仕草をする『ドゥルガー』。


その“存在”こそは、とある宗教上の最強を誇る、武闘の女神の名―――それが由来なのでした。



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K&DRO はじかみ @nirvana_2020

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