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皆に呆れた顔を向けられた王太子は、立ち上がって鬼の形相で私に掴みかかってきた。
「よくも私に恥を……ミシェラ!なぜこんな映像を……!!」
が、私にその手がかかる前に、アンドリューがその手を掴んだ。
私の前に立つアンドリューの背中越しに見える王太子の顔。それに向けて、私は冷たい視線を思いっきり送るのだった。
「何のまねも何も……私も貴方と婚約解消したかったので、王にご納得いただけるよう証拠集めしてただけですよ」
その際に魔法が得意なアンドリューに協力頼んだだけです。彼と出来てるとか、凄い妄想だよね。
「ふざけるな!これは捏造だ、悪意ある捏造だ!許さんぞミシェラ、アンドリュー!貴様らは追放だ!国外追放だあぁ!!!!」
血管千切れるんじゃないかしら?ってくらい真っ赤になって王太子は叫び。
ハアハアと肩で息をする。
と、そこへリアリアが前に進み出た。
「王子様……あれは本当に捏造なのですか?」
王子様って呼んでるの?なんなのその関係。おままごとか!
ちょっと笑いそうになってしまったが、真剣な顔のリアリアに免じてこらえた。私大人。出来る大人。自分で言うなってか。
「リアリア!あれは嘘だ、大嘘だ!私にはリアリアしかいない!真実の愛はキミに──!!」
その時だった。
「酷いですわ王太子!私に言ったことは嘘だったのですか!?」
声が響き。
バーンッ!!と勢いよく会場の扉が開いた。
そして幾人もの女性がなだれ込んで来たのだ!!
皆が皆、王太子の元へと駆け寄る。王太子の顔色は、いよいよ真っ青だ。赤に青に忙しいな。
あ、顔は分からなかったけど、毛色とかで何となく映像に出てきた女性だって分かる。
これはアンドリューの仕込みかな?と彼を見れば、ニヤリと笑われた。用意がいいなあ。
「結婚は出来ないけど真に愛するきみを愛人に、とかおっしゃってたのは嘘だったのですか!?」
「真に愛するきみをいつか必ず迎えに行くと言ってたのに!!」
「私に言ってた真の愛は──!」
「真の愛は私だけって言ってたじゃ──!」
真の愛、真の愛、うっさいなあ。
もう収拾つかないなこれ。
そう思ってた時だった。
それまで俯いて黙っていたリアリアが動いた。
ツカツカと王太子の前まで行って。
おもむろにその可愛らしい右手を振り上げ。
パーーーーーン!!
振り下ろした──!!
パパパパパーン!!
往復入ったー!!
「ふざけんなこん畜生!折角王太子と結婚してウハウハ玉の輿だと思ってたのに!私の人生設計返せ!!」
「り、リアリア!?」
「お前みたいな下衆と結婚なんてやってられっか!あたしにだって女のプライドがあるんだよ!!」
「リアリアー!!」
言いたいこと言って、リアリアは外へと飛び出して行った。
それを血相変えて追いかける王太子。一応リアリアには本気だったってことなんかいな。
そんな王太子を「待ってよ!」と追いかける令嬢達。
そして嵐の去った会場に残されたのは……
「何だったのだ、一体……」
ずり落ちた眼鏡を直し、呆けたように呟くレオルド。そしてポカンとした顔のパーティ参加者たちだった。
その後、私とアンドリューでパーティを荒らした事を詫び、後日またパーティを開くことを約束してその場はお開きになった。
王太子はリアリアに振られて意気消沈。王様からこっぴどく叱られて、王位継承権も剥奪となったらしい。
そして王太子の座は彼に──
「なんでアンドリューなの?」
「そりゃ俺が王家の血を引いてるから」
「公爵家の息子でしょ?」
「俺は養子。王と侍女との間に出来たんだけど、俺を生んですぐ母上は亡くなって……公爵家に預けられたんだ」
「ご都合主義甚だしいね!」
呆れて言えば。
「まあいいじゃないか。終わりよければすべて良し、だろ?」
そう言ってアンドリューは私の手を取るのだった。
「何この手」
「何って。ミシェラは俺の恋人だろ?」
「そんな話初耳だわ」
「どうせもうすぐ真実になるよ」
ニヤリと笑うアンドリュー。
そんな風に自信満々に言われてしまっては、もう逃げ場がないではないか。
私はときめいてしまってる事を何だか悔しく思いながら。
きっともうすぐ訪れる、甘い恋の季節に胸を高鳴らせるのだった。
~fin.~
婚約破棄だと言われたので、王太子の浮気を暴露したいと思います リオール @rio-ru
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