3

 

 

「そこの娘、リアリアとか言ったか」

「は、はい!!」


 金髪碧眼の王太子は美形だが。


 赤髪に琥珀の瞳のアンドリューもまた美丈夫。リアリアは思わずポッと頬を赤らめた。が、王太子がその様を見て「リアリア!?」と慌てるのを見た瞬間、スンッと顔が無表情になるとことか流石だと思います。表情のコントロールうまいな。


 そんなリアリアを冷めた目で見ながら、アンドリューは言う。


「貴女もよく見ておいた方がいいですよ」

「な、何をでしょう?」

「王太子の本性ですよ」


 その言葉の直後。


 水晶が光を放ち、周囲を照らし出したかと思うと。

 不意に、空中に大きな映像が現れるのだった。


 それは王城内の映像だった。誰もが見覚えのある廊下が映し出され。


 そしてとある部屋の前で一度止まる。


 それは、その扉は──


「あれ、これって……」


 リアリアが気付く声がする。


「え、ちょっと待て、おいこれは一体……」


 焦る王太子の声がする。


 だが映像は待てと言われて待つわけ無く、移動し始めた。


 どうやら扉の向こうに入ったようだ。

 そして映像は部屋の住人が居る場所を──豪華な寝台を映し出した。


 次の瞬間──


『あ……王太子……ああ……』


 あられもない声、聞こえてきた~~~~!!


「うわああああああ!!」


 リアル王太子の声も聞こえてきた~~~!!


「止めろ!映像を止めろ!アンドリュー、貴様何を……!!」


 そう言って再び真っ赤な顔して王太子が飛び掛かって来たのだが。


 私はひょいと足を出して阻む。見事にそれに引っかかって王太子は転んだ。豪快な転びっぷりは流石ですね、王太子!


 女の嬌声が会場に響き渡る。誰も言葉を発しなかった。耳を塞いでる令嬢、ごめんなさいね。聞かせたくないんだけどさ、ちょっと我慢してね。


 と、ようやく事が終わったようで影が動いた。


『ふう……』


 ハイッ出たよ裸の王太子!そこのお嬢様がた、キャ~!じゃないですよ!きゃ~とか言って手で顔を覆いながら、指の隙間から見るとかしてないで堂々と見なさい!


 そんな真っ赤になった令嬢たちとは真逆に、リアリアの顔は青くなっている。彼女の覚えがない映像なのだろう。そりゃそうだ、相手は彼女じゃないのだから。


『良かったよ』


 とか言ってますよ王太子。あ~あ~、リアルタイムの王太子は頭抱えて蹲ってらあ。恥ずかしいよねえ、自分のこんな姿晒されて。


 でも映像の中の王太子は、言葉を止めることは無かった。


『きみほどに魅力ある女性は初めてだ。ああ、これが真実の愛と言うのだな……初めて知ったよ』


 はい出たー!真実の愛!一つ目ゲット!!


 そこで映像は消えた。プライバシーに考慮して女性の顔は出しておりません。アンドリュージェントルマン。


「名前と続けて言われると変な感じになるな」

「アンドリュー紳士」

「次からそう言ってくれ」


 妙な事にこだわるな、きみは。

 まあいいや。


「次は?」

「そうだな、面倒なので連続再生いくか」

「え!まだあるのか!?」


 有るのかじゃねえわ。あなた一体どれだけの女と関係もったと思ってるんだ。


 そうして出るわ出るわ。王太子の羞恥プレイがてんこ盛り!


 これ全部貴族令嬢なのかなあ?となるとこの会場にも何人か居るんじゃないの?ってくらいの数の女を抱きまくる王太子。


 そして最後には必ず。


『きみと出会えて俺は真実の愛を知ったよ』


 などとほざくのだ。アホか!お前アホだろ!そうかアホだね!


「アホか」


 思わず出ました心の声。


「アホだ」


 でも他からも上がる声。そうだよね、みんな思ってるよね!



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