侵略!UMA娘
雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞
話は聞かせてもらった、UMA娘は実在する!!!
その日、すべての人類は馬になった。
突如として宇宙から飛来したUMA娘のウマニナール光波を浴び、
必然的に、人類は車を運転することが出来なくなった。
船も、飛行機も、バイクでさえも運転できない。
文明の利器のほとんども放棄するしかなく、ウマたちは走って暮らすことを強いられた。
だが、UMA娘だけは違った。
「ホースホスホスホス! 愚かなウマたちよ、まだ四つ脚で地面を駆け抜けているウマか!」
彼女はことさらにウマたちを煽った。
なぜなら、UMA娘には脚がなく、空を飛んで移動することが出来たからである。
これは大変なアドだ。じつに丸い。
大空に舞い上がるのは、人類の夢だ。
これを奪われては、生きていけない。火を見るよりも明らかだった。
……ウマになったので火は怖かったが。
「ホースホスホスホス! 私に
事実上の植民地宣言であった。
これに、各国首脳はおおいに揺れた。
すでに統治機構は崩壊していたが、権力はキープしたいのでリーダーを気取っていたからだ。
その割に役に立たないので、民草からの評価は腐った干し草よりも低かった。
困った、困ったと。
頭を抱えようにも、ウマなので前脚が上がらない。
困惑を続けている間に、UMA娘が唱えた選民思想はすべてのウマたちに周知され、社会問題にまで発展。
ついには、自らの脚を切り落とすことで忠誠を誓おうとするものまで現れた。
義憤に駆られた有識者たちは、調査隊を結成した。
UMA娘特殊対策室の結成である。
UMA娘特殊対策室の面々は、命がけでUMA娘に取り入り、接近し、なんとかスキャンダルを掴もうとした。
あわよくば自分たちだけが助かるための、ゆすりのネタにするためである。
こびへつらい、魂を売り、好物のにんじんまで譲り渡して行われた彼らの、その必死のパパラッチ活動の結果、ある真実が判明した。
なんとしてでも、これを白日の下にさらさなければならない。
へこへこと平身低頭しながら、UMA娘特殊対策室のメンバーは使命感を燃やし、アヴェンジの機会を虎視眈々とうかがった。
そして、とうとうその日がやってきた。
UMA娘はいつもどおり出待ちの信者たちを、軽やかに空を飛んでかわし、地球の観光を行おうとしていた。
だが、突如彼女の背後に飛び出した対策室のメンバーたちが、フラッシュを
「し、しまったウマ!? UMAは背後に立たれたら思わず蹴ってしまうウマ!」
「ふん、馬脚を現したな」
宙を舞いながら、対策室室長は会心の笑みを浮かべた。
なぜなら、彼の顔にはU字型の蹄の跡がしっかりと残っていたからだ。
そう、UMA娘には脚がないのではなく、体内に収納されていただけだったのだ。
彼女は四肢を引っ込め、ジャット噴射で空を飛んでいたに過ぎなかった。
とんだペテンだったのである。
「こ、こうなれば仕方がないウマ。さらばウマ~!」
かくして、UMA娘は地球を去り、地には平和が戻った。
ウマたちは今日も草原を駆け抜け、平和に暮らしている。
あたりまえだが人類は滅亡した。
侵略!UMA娘 雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞 @aoi-ringo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます