卒業
宵闇(ヨイヤミ)
第1話『卒業式』
今日は私の卒業式だ。
高校生というブランドに幕を閉じ、4月からは大学生という新しい肩書きを4年間身に付ける。
『卒業生、入場』
そのアナウンスと同時に、クラス別で体育館へ入って行く。一人一人の足取りは、どこか躊躇いのあるように思える。まぁ、3年間通った学校と、今日で別れるのだから、それもそうか。
『開会の言葉』
先生が卒業式の開会を宣言する。
卒業証書の授与や、皆勤賞など受賞を行う。
式が進むにつれて、生徒は涙ぐむ。
溢れそうになるそれを必死に堪えているのがよく分かる。
『閉会の言葉』
あっという間だった。
始まったと思った卒業式は、幕を閉じた。
すると、学年主任の先生がマイクを握った。
学年の先生も何処かへ行ってしまう。
『卒業式が、只今終わりましたので、次は学年の方へ時間をください』
そう学年主任が言った。
こんなことは、予行練習には無かった。
今から一体何が起こるのか、卒業生全員が首を傾げた。
『皆さん、ご卒業おめでとうございます。3年間、長いようであっという間でしたね。今年は特に、文化祭も無く、体育祭も例年とは違う形での実施となりました。在校生から皆さんに向けて、出し物を本当なら先日やる予定だったんですが、それも中止になりました。皆さんにはあまり残せるものがありませんでした。なので、皆さんの3年間を振り返ろうと思います』
そう言って先生の背後にあった舞台上を見ると、そこにはスクリーンがあった。プロジェクタもセットされている。
「今からどんな映像が流れるのだろう」
きっと卒業生全員が同じことを思っただろう。
スクリーンに映し出されたのは、私たちの入学式だった。
真新しい制服に身を包み、期待と不安を抱きながら、入学式に出席している私たちに姿はとても幼かった。
体育祭、文化祭、その他学校行事の映像が、学年別で流れてくる。その懐かしい映像に涙ぐむ生徒や、楽しかったあの日を思い出して笑う生徒、そしてそれをみる先生方。
退場の合図が出るまで、会場内は涙と笑いに包まれていた。
(※これはノンフィクションです。)
卒業 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121
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