我が家の週末ルーティーン
蒼空苺
第1話 いつもの道のり
週末の今日もいい天気だ。
だがしかし、最近はコロナの影響で家族で出かける場所も限られている。
そして、今日も子どもたちが行きたい場所は決まっているのだ。
「どようびだね! おとうさんもおやすみ?」
娘が夫に乗りかかりながら、顔を擦り付けるような勢いで聞いている。
「お姉ちゃんと一緒でお休みだよ。」
重くなってきた我が子に耐えながらも、笑顔で返す夫。
「いいおてんきだね!」
そんな様子をみた息子が、しきりに二人へそう伝える。
「どこかへいきたい!」
娘は夫を見つめて、そう声を張り上げる。
「どこがいいの? どこにいきたい?」
夫はにこにこと二人に尋ねる。
「「ばあちゃんち!!」」
姉弟のハモリがきれいに響く。
元気よく、にこにこと発したその声に、たまらず笑ってしまった。
日課ではなく、週末課とでもいうように、ほぼ毎週末義理の両親宅を訪ねている。
そう。だから、土曜日の朝はいつも以上に忙しい。
平日と同じようなルーティーン。しかしながら、時間の猶予がない。
いつもはのんびりと夕方までにこなす家事を、午前中のうちに片づけてしまうというミッションを課せられる。
うん。何かの修行かと、いっそ無の境地で行う方が、イライラもしないのかもしれない。
しかしながら、そうは問屋が卸さない。
起きれば、家族の食事を準備する。
「きょうは、やきそばがたべたいのっ!」
朝からの無茶ぶりは、いっそすがすがしい。
「それはお昼にするからね。」
「だめ! それじゃないと食べないから!」
……いつでも、母は娘に弱い。
諦めながらも、気持ちが時間に追われているときは、いつもは少しは存在している余裕が、どこかへお出かけしてしまう。
叫び出したい衝動をなんとか抑えて、動き出す。
朝食が終われば、洗濯機を回しつつ食器を片付ける。
ここでお風呂の栓を抜いておくのも忘れてはならない。
食器が片付けば、お泊りの準備を開始する。
夫、自分、子どもたちの着替え、パジャマにお風呂で遊ぶぞうさんとあひるさん。
息子いわく、連れて行かないと拗ねちゃうらしい。
水筒、子ども用エプロン、お手拭き、キッチンバサミ。食事のセットもばっちりだ。
息子はまだオムツなのでそれも用意して。
もしものための保険証や母子手帳などの病院セット、お薬袋も中身をチェック。
寒さに備えて上着も準備。
覚え書きでもつくらなければ、忘れてしまうのではないかという量の荷物たち。
いっそ夜逃げでもできそうな勢いだ。
しかし毎週のようにこなせば、ほとんど忘れ物はしなくなる。
この間に終わった洗濯機から洗濯物を取り出していく。
さて、2回目スタート!
スイッチを押したら、洗濯物を干していく。
部屋を開けるため、部屋干しで除湿器を回す。
除湿器様様だと知ったのは、実はそんなに前ではない。
お風呂掃除を始めていく。
それが終われば、同時に洗濯機も終わりを告げてくる。
タイミングを合わせたように、次々と終えていく様はいっそ爽快感すら感じられる。
「お母さんは準備できたよ。」
駆け足で全ての準備を終わらせて、家族へ声を掛ける。
「おねえちゃんは、リュックにおもちゃいれたよ!」
「ぼくもかいじゅうさんもっていく!」
恐竜の人形を大事そうに抱えて、差し出してくる。
怪獣ではないのですが。
まぁ、君たちが組み合わされば、怪獣というのもあながち間違いではないのかもしれないな。
「じゃぁ、リュックに入れて、そろそろ行こうか!」
「「はーい!!」」
家族みんなで車に乗り込む。
「今日はどこにいくんだっけ?」
夫が子どもたちに問いかける。
「「ばあちゃんち!!」」
「えー? ちがうよ?」
急に夫がそう返す。
子どもたちは驚いて、不安げに問い返す。
「そうなの?」
「じゃぁどこいくの?」
「今日はね……じいちゃんちだよ!!」
笑いながら答える夫。
「「それって、いっしょでしょーっ!?」」
皆の笑い声が響き渡る。
「じゃぁ、出発!」
「「「ゴー、ゴー!!」」」
車に乗って走り出す。
今日もいつものあの場所へ。
我が家の週末ルーティーン 蒼空苺 @sorakaraichigo
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